ヘアサロン業界に関わっていると、周りを見渡せばみんなショートヘアなんていうことが多々ある。しかし、一般的な女性のショートヘアの割合は約20%(テスティー調べ)にとどまっている。ベリーショートに限定すれば全体の3.2%という少なさ。それでも東日本大震災以降、洗髪やスタイリングの簡単さからショートヘア人口は増え、最近では“おしゃれ”のためにショートヘアにする女性も増えている。これから夏本番に向けて、 “ショートヘア”デビューをしようと考えている人も多いだろう。インスタグラムでヘアスタイルやメイク方法を積極的に発信しているベリーショートがトレードマークの東京・原宿のヘアサロン「ザ レミー(THE REMMY)」の倉田聡子スタイリストのもとには、ショートヘアにしたいという女性や美容専門学校生が多く来店する。そこで倉田スタイリストにショートヘアの魅力を聞いた。
WWD:倉田さんの顧客はどんな方が多いですか。
倉田聡子(以下、倉田):インスタグラムを見て来店してくださるお客さまは多いです。最近は紹介も増え、家族や彼氏、彼女と一緒にということもあります。
WWD:若い女性や美容学生の方が多い印象がありました。
倉田:勉強のためにいろいろなサロンで施術を受ける学生さんも多く、カットはほかのサロンでやって、カラーは私がやるということも多いんです。そんな中でもここ1年は圧倒的にショートヘアにするお客さまが増えたと肌で感じています。
WWD:倉田さんのベリーショートも印象的ですね。
倉田:「レミー」で働き始めてからベリーショートにしました。今日は、私よりもちょっと長いぐらいのアーティスト系の仕事をされているお客さまがいらっしゃったんですけど、インスタグラムでベリーショートで検索をしたら私のアカウントが出てきたと言っていました。だいたい“ベリーショート”っていうと少年のようなイメージもあるので、やりたいと思っても実際にやってみるまで決断するのが難しいみたいです。
WWD:お客さまが切ろうと決めるきっかけは何でしょうか?
倉田:ベリーショートは一般的なイメージとして服も限られてくるし、今日いらっしゃった方は「なんだか今持っている洋服がフィットしなくなりそう」と言っていたぐらい。私は4年間ベリーショートで過ごしてきて、坊主にしていた時期もあります。ワンピースやスカートといった女性らしいスタイルもインスタグラムにアップしているのですが、意外とこういうのもありだなと思ってくれるみたいです。正解は分からないけど、自分なりのポイントがあるのでそれを伝えています。
WWD:それはどういうポイントですか。
倉田:まず、来店した時の服装を必ず見て、普段何を着るのか、また職業を伺っていきます。服装はもちろん、ショートヘアにも襟足を刈り上げたほうが似合う場合もあれば残したほうがよかったり、前髪は短すぎないほうがいいとか。髪形を探ります。その上で、ショートヘアと服装のバランスを考えるとフェミニンすぎると難しくなります。例えばレース系の洋服であれば色は黒にするなど、工夫は必要になります。
WWD:だからご自身がいろいろな髪形や服装を見せているんですね。
倉田:私は昔から服装でも特定のジャンルが好きっていうのがないんです。仕事上動きやすさは重視しますが、いろいろなことを感じて提案したいので、メイクもヘアも、髪色も服装もいろいろ見せます。髪の毛の色に対してメイクはどんな色味が合うかなど、私たちはプロなので言えないとだめですよね。それを表現しているんです。
WWD:ほかにショートヘアにしたいと思ったときに心掛けるべきことはありますか。
倉田:スタイリング剤をつけることは前提になってきますね。肩ぐらいの人がショートヘアにしたいというときは意外とスタイリング剤をつける習慣がないことも多いので、つけないとよく見せられないことを伝えて、オイルからでもつける練習をすることを勧めています。
WWD:スタイリングすることで、ファッションとの組み合わせを楽しめるんですね。
倉田:不思議ですよね。ショートヘアありきのファッションというか、ファッションが好きでショートにする人も多いです。髪形こそファッションの一部になるので、私が切ったことでその人の意識や価値観を変えてしまうことも往々にしてあるので、責任を感じています。だからメイクやファッションも含めて、伝えるようにしています。