財政難に陥っていたロベルト・カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)の買い手が決定した。ドバイの投資会社ビジョン・インベストメント(VISION INVESTMENT)が、ロベルト・カヴァリの親会社である伊投資会社クレシドラ(CLESSIDRA)から全株式を取得することに合意した。
ロベルト・カヴァリは2017年12月期決算のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)で710万ユーロ(約8億6620万円)の損失を計上するなど、赤字経営が続いていた。債権者との和議を継続する間の経営を可能にするため、ミラノの裁判所に再建計画を提出することを3月に発表しているが、今回の取引はその和議や再建計画の内容に沿ったものとなっている。取引の詳細は明らかにされていないものの、情報筋によれば買収額は1億6000万ユーロ(約195億円)程度で、6500万ユーロ(約79億円)の増資や全ての債権者への支払いなども含まれているという。
ビジョン・インベストメントは、ドバイの不動産開発会社ダマック・プロパティーズ・グループ(DAMAC PROPERTIES GROUP以下、ダマック)のフセイン・サジワニ(Hussain Sajwani)創業者兼会長が保有している。同氏は米「フォーブス(FORBES)」誌による“世界の富豪ランキング”2018年版で、アラブ諸国第4位にランクインしている。
買収が決定したとはいえ、今後の道のりも平坦ではない。ビジョン・インベストメントが買収に当たって提示した事業再建策がミラノの裁判所によって承認される必要があるほか、ロベルト・カヴァリも債権者との合意書を裁判所に提出する必要がある。また、ロベルト・カヴァリの労働組合への説明も必要だろう。労働組合の代表者は、「経営陣は沈黙しているし、買収取引の責任者は労働組合とのミーティングを欠席した。このため7月24日にミラノの裁判所との臨時ミーティングを開催し、責任者が再建策についてわれわれに説明することを要求する」と話した。
ロベルト・カヴァリの買い手候補としては、「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」などを擁するOTBや、米ブランドマネジメント会社のブルースター アライアンス(BLUESTAR ALLIANCE)などの名前も挙がっていた。OTBの子会社であるスタッフ・インターナショナル(STAFF INTERNATIONAL)は「ロベルト カヴァリ」のコンテンポラリーラインである「ジャスト カヴァリ(JUST CAVALLI)」とライセンス契約を結んでいる。一方で、ダマック傘下の投資会社がドバイに建設しているホテルの内装などを「ロベルト カヴァリ」が手掛ける予定であるほか、「ジャスト カヴァリ」がドバイで展開しているラグジュアリーヴィラ事業の建設をダマックが請け負っている。
ロベルト・カヴァリは米国内に7つの直営店と4つのアウトレットなどがあるが、それらを運営している米子会社のアートファッション(ART FASHION)も会社清算の手続きを取るべく米連邦破産法7条を申請している。ポール・サリッジ(Paul Surridge)「ロベルト カヴァリ」クリエイティブ・ディレクターは3月に退任しており、後任は決まっていない。なお、ロベルトカヴァリジャパンは解散している。