ヨーロッパ最大級のファッションコンテスト「ITS(INTERNATIONAL TALENT SUPPORT CONTEST以下、ITS)」が2019年度の受賞者を発表した。グランプリは、中国出身のダオユアン・ディン(Daoyuan Ding)が獲得した。
7月12日にイタリア・トリエステで開かれた授賞式にはファッション、アクセサリー、ジュエリー部門のファイナリスト22人が集まった。その中からグランプリに選ばれたディンのコレクションは、ルネ・マグリット(Rene Magritte)などのシュールレアリスムのアーティストやデヴィッド・リンチ(David Lynch)からインスパイアされたもので、ディンはシルエットが特徴的なテーラードアイテムにチェックや千鳥格子柄など伝統的なメンズウエアの柄をブレンドしたカモフラージュを散りばめた。ランウエイを歩くモデルたちの顔はカモフラージュ柄のファブリックで覆われ、反体制的な印象を与えつつも、市場性も意識したプレゼンテーションを披露した。
グランプリに選ばれたディンには賞金1万5000ユーロ(約180万円)と、副賞としてピッティ・イマージネ(PITTI IMMAGINE)による1年間のメンターシップ、そして来年1月にフィレンツェで開催されるメンズ最大の国際見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」でコレクションを発表する機会が贈られた。
ITSはサステイナブルな取り組みが重要視される時代の潮流に乗り、今年新たにITSサステイナビリティー賞を設立。同賞はディストピアの世界の生物や化石をイメージしたジュエリーコレクションを発表したアメリカ出身のコリーナ・グートス(Corrina Goutos)が受賞した。
「ディーゼル(DIESEL)」創始者で、ITSのスポンサーであるOTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)会長のOTB賞は、オーストラリア出身のアナリーズ・グリフィス・ジョーンズ(Annaliese Griffith-Jones)が受賞。賞金1万ユーロ(約120万円)に加え、「ディーゼル」や「マルニ(MARNI)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」などOTBのグループブランドでの1年間のインターンシップに参加する資格が贈られた。グリフィス・ジョーンズはプレゼンテーションでタイルや花柄の艶のある特殊な素材を使用し、50年代にインスパイアされたエプロンドレスのコレクションを披露した。
イタリアファッション協会によるCNMI賞はムーン・フセイン(Moon Hussain)が受賞。伝統的な男性の衣服を女性の身体に合うように再解釈を加えた、ジェンダーを融合させたコレクションが評価された。
独創的なデニムウエアのデザイナーに授与されるディーゼル・アワード(Diesel Award)には29歳のスイス出身デザイナー、ラファエル・クート(Rafael Kouto)が選ばれ、イタリアのスポーツウエアブランドでアパレルもしくはシューズのカプセルコレクションを発表する機会を獲得した。
ITSでは、ファッションを学ぶ学生たちに教育と訓練の場を提供し、加えて過去の受賞者の作品を集めたアーカイブコレクションを展示する「ITSアカデミー」を併設する2100平方メートルの本部オフィスが2021年に竣工する。