カナダ発の「ハーシェル サプライ カンパニー(HERSCHEL SUPPLY CO.以下、ハーシェル)」が「ステューシー(STUSSY)」や「ハフ(HUF)」などを展開するジャックと日本における輸入代理店契約を結び1年半が経つ。それまで日本では、“バッグブランド”としてのイメージが強かったが、本来のコンセプトである“トラベル”を打ち出し奏功。ラゲージやアクセサリー、アパレルなどのラインアップを拡充し、中価格帯のラゲージとして競合と差別化を図っている。米LAで開催するストリートカルチャーの祭典「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」への出店や、静岡県富士宮市で開催中の「カウズ:ホリデイ(KAWS:HOLIDAY)」にメインスポンサーとして協賛するなど、ストリートカルチャーのイベントにも積極的に参加する。「カウズ:ホリデイ」の為、来日中だった「ハーシェル」共同創設者、リンドン・コーマック(Lyndon Cormack)にビジネスの展望を聞いた。
WWD:今回「カウズ:ホリデイ」のメインスポンサーになった理由は?
リンドン・コーマック共同創設者(以下、リンドン):「カウズ:ホリデイ」を手掛けている香港のクリエイティブスタジオ、オール ライツ リザーブド(All Rights Reserved)の存在は元々知っていたんだけど、彼らから「(過去の「カウズ:ホリデイ」は)都心での開催が続いていたけど、次は富士山の麓で開催する。興味はないか?」というアプローチがあった。「ハーシェル」はトラベルやアドベンチャーを背景にしているブランドだし、アートや建築、ストリートカルチャーともつながりが深いから、街から自然の美しい場所に移動してイベントを開催することにとても共感したんだ。
WWD:実際の会場に行ってどうだった?
リンドン:レセプションイベントの日は土砂降りで天候は悪かったけど、晴れ間には辺り一面、霧がかかってとてもミステリアスで美しかった。
WWD:「ハーシェル」はポップアートとも相性がよく感じるが、それはなぜだと思う?
リンドン:アーティストには僕らのブランドの商品を大きなキャンバスとして見て欲しいし、そう思ってもらっているからだと思う。
WWD:カウズの他にブランドとして注目しているポップアーティストは?
リンドン:ブライアン(カウズの本名)とは今後も一緒に何かやっていければいいねと話している。注目しているアーティストはたくさんいるけど、直近だともうすぐバスキア(Basquiat)とのコラボアイテムをリリースするんだ。本物のバスキアを手に入れようとするとすごく高価なものだけど、ブランドを通してバスキアを体感してもらえればうれしいよ。
WWD:日本人で気になるアーティストは?
リンドン:村上隆と隈研吾だね。村上さんとは、過去に「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」でコラボした。隈さんの建築はアートだし、日本ならではのスタイルだよね。
WWD:ファッションとアートの共通点は何だと思う?
リンドン:デザインとストーリーテリング。両方不可欠なものだから。
WWD:ジャックと輸入代理店契約を交わし1年半が経つが、現在のビジネスの状況は?
リンドン:日本での新たな展開として最も重要視していたのが、日本市場での経験豊富なエキスパートとパートナーシップを組むことだった。ブランドのストーリーや求めるモノを同じイメージで伝えてくれるパートナーを探していたんだ。ジャックと組むことによって、消費者からの意見をプロダクトに生かせるし、日本市場に求められるラインアップを追求できている。今はまだ日本のビジネスをもっと成長させるために試行錯誤しながら、今後の展開を模索中だよ。チャンスはたくさんあると思う。
WWD:「コンプレックスコン」や「カウズ:ホリデイ」など、今後もイベントに積極的に投資していく?
リンドン:続けていきたいと思っている。僕らは、イベントに協賛しているという気持ちではなく、コミュニティーに還元して、カルチャーを同じ立場で発信していくという思いを持っているから。
WWD:今後のビジネスの展望は?
リンドン:今、特にトラベルカテゴリーの市場では、16~30歳の顧客が気軽に持てるスーツケースブランドがない。お金を持っていれば「リモワ(RIMOWA)」を買うだろうけど、中価格帯で思い浮かぶブランドはないだろう?僕自身、すごくトラベルが好きなのにトラベルバッグの市場はすごくつまらない。だから僕たちは“モダントラベル”という新しいカテゴリーを作りたいんだ。トラベルバッグのブランドはどこも旅先に行くまでの過程のことしか考えていないから。要するにスーツケースはトラベルの入り口でしかないんだよ。だから僕らは旅先からのもっと先の、現地で持ち運べる小型バッグの展開であったりアメニティーであったり、変圧器まで、旅行中の経験をもっと楽しくできるような手助けしていきたいと思っている。スタイリッシュなデザインのトラベルグッズのラインアップをもっと拡充させていくよ。