多くのブランドが手掛けるようになっているプレ・フォール・コレクション。秋冬シーズンのメイン商品に先立って、6月頃からお店に並ぶ商品群のことを指します。プレ・コレクションでは新しいトレンドのエッセンスを“先食い”できるので、おしゃれ好きの間でファンが広がっています。真夏はまだまだこれからですが、秋の新作ムードを早めに取り入れたい人には、夏物ともミックスできて使い勝手がいいプレ・フォール商品がおすすめです。
今年のプレ・フォールで目立つのは、“不ぞろい”が持ち味のアシンメトリー服。しばらく前から日本でも人気のデザインですが、やり過ぎない“ほどほど目立ち”のアレンジが加わっている点が今年のアシンメトリーの特徴です。2019-20年秋冬はエレガント志向が強まるので、大人感や上品さを感じさせるアシンメトリーのこなしが重要になります。
「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の2019年プレ・フォール・コレクションではチュニックワンピースの襟と裾がアシンメトリー。全体が斜めに傾いたような、ウィットに富んだ見え具合です。1枚でワンピースとして着たり、写真のようにパンツに重ねたりして、落ち感のきれいなレイヤードにも仕上げられます。
◆モノトーンにも動きをプラス ジェンダーレスなゆったりルック
国内ブランドのプレ・フォール・コレクションでも、1枚着るだけで様になるアシンメトリー服の提案が相次いでいました。進化形の不ぞろいルックを見ていきましょう。
服の動きを印象付けやすいアシンメトリーデザインは、モノトーンの装いにも表情を加えてくれます。黒の表現に定評のある「ワイズ(Y’S)」は、2019年プレ・フォール・コレクションで、左右の見え方が大きく異なるシャツワンピースを企画しました。布をトリッキーに入り組ませた点がポイント。さらに前後の色も変えて、見る角度によって別の服にも映るようなマルチフェイスの装いに仕上げました。1枚のワンピースなのに、まるで何枚も重ね着しているかのようにも見えます。
ジェンダーレスなストリートモード風の着こなしも、アシンメトリーデザインが効いています。黒のロングスカートは片側の裾だけにギャザーを寄せて立体感をプラス。ビッグラッフルのような布の起伏が黒の表情に深みを添えます。オーバーサイズのトップスと組み合わせて、“ロング&ロング”のコーデにまとめ、縦長イメージを強調。不ぞろいなスカートの裾も落ち感の演出に一役買っています。
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◆定番とトリッキーをミックス ミニマルでも細部に遊び
ボトムスの丈を前後や左右でずらすというのが従来からよくあるアシンメトリーの提案ですが、それに加えて、いたずらっぽい仕掛けも登場しています。切り替えやモチーフのポジションを左右で変えて、目を楽しませるという趣向です。「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」の2019年プレ・フォール・コレクションでは、半袖トップスに別色の切り替えを施しました。あえてモチーフの配置をずらして、アートのような印象を引き出しています。ベーシックなトップスに忍び込ませた、これぐらいの遊びであれば、幅広い場面で楽しめそうです。
水平や垂直といった、オーソドックスな直線的シルエットは時に堅苦しい印象を与えがち。しかし、少し斜めにアレンジするだけでも、こなれた雰囲気に仕上がります。ボーダートップスに合わせたラップ風スカートは打ち合わせが斜め。少しの“ずらし”ですが、気負わないムードを醸し出してくれます。よく見ると、フラップ付きのビッグポケットまで斜めに縫い付けられています。トップスのボーダー柄が横一直線なので、ボトムスの斜め演出が際立ちます。
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◆レディーライクをアシメントリーで揺さぶる 静かなドラマを演出
貴婦人や淑女を思わせるレディーライクな着こなしは、19-20年秋冬のビッグトレンドと期待されています。古風で正統派の装いですが、そこにアシンメトリーを盛り込めば古臭さを遠ざけることが可能です。「アキラナカ(AKIRANAKA)」は2019年プレ・フォール・コレクションで、エレガントな装いに非対称の美を宿しました。ロング丈のボトムスでは、左右でプリーツの長さを変えることで脚を長く演出。ベルトも水平に巻かず、わざと斜めに垂らして落ち感を引き出しました。
モチーフと切り替えを組み合わせると、ダイナミックな動きを演出できます。チェック柄のロングスカートは、直線的なはずの格子柄を、パッチワーク風に切り替えて、視線をさまよわせるかのような感覚に。不規則なチェック柄が交錯するおかげで、流れ落ちるようなシルエットが強調されています。トップスに縦の直線モチーフを配して、アシンメトリーを際立たせているのも巧みなスタイリングです。
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次のトレンドを一足早く取り入れられるのがプレ・フォール・コレクションの魅力。進化形アシンメトリーをはじめとするネクストトレンドを感じ取るうえでも、プレ・フォールは早めの秋冬支度に欠かせません。“レディーライク×アシンメトリー”のコーデは、ヒットを予感させる着こなしになっています。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い