J.フロント リテイリング(JFR)は22日、職場のアイデアを競う「JFR発明アワード2019」を大阪・心斎橋で開催した。約7000件のエントリーの中から各グループ会社で行われた予選を通過し、最終選考を勝ち抜いた11組が山本良一社長らJFR首脳の前でプレゼンテーションを行った。会場には各チームの応援団も駆け付け、熱戦が繰り広げられた。
同大会は「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」というグループビジョンの実現に向けた取り組みの一環として昨年スタート。グループ全社員を対象に「業務改善」「営業施策」「新規事業」の3領域で“発明(アイデア)”を募った。発明事例を競うだけでなく、グループ全体で盛り上げ、共有することで、発明を企業文化として根付かせることを目的としている。
昨年のエントリー数は約1700件だったが、今年は大幅に拡大。開会宣言で審査員を務めた山本社長は「グループビジョンが浸透してきているのを実感している。みんなが行動を起こそうとしているのはいい流れ。このアワードの合言葉である、発明、変革を楽しむ空気が生まれてきているのを感じる。アワードが大きなウエーブとなり、そこから画期的な事業が生まれ、会社がさらに発展していくことを願っている」と語った。
会場に来られない従業員も参加できるように、今回はユーチューブでもライブ配信した。2分間の応援映像の後にプレゼンターによる6分間のプレゼンが行われ、最後にグーグルプラスのコミュニティーに投稿された各プレゼンターへの応援メッセージや感想が紹介された。
グランプリに輝いたのは、松坂屋静岡店販売企画・催事運営マネージャーの中山孝之氏と同営業部食品担当バイヤーの武田一男氏が提案した「しずまつバス」。バスをイメージした循環型物流システムによる物流コストの削減と、商品の受け渡し場所としてのバス停のコミュニティー化を図る取り組みで、地元の新鮮な農産物を静岡の街の人に、過疎地にはデパ地下のグルメを届けたいという思いから生まれたという。受賞の喜びを語った後、プレゼンターの中山氏は「継続的にできることを本気で考えた結果、ここに行き着いた。静岡のみんなを物流でつなげ、ひいては静岡を元気にするサステイナブルな取り組みであると確信している。ハードルはたくさんあるが、実現できるように取り組んでいきたい」と語った。山本社長は「社の戦略である、地域と共生して街と店が成長するアーバンドミナント戦略に合致した地元密着の提案が評価された」とコメントした。
準グランプリは、人気のライトノベル「京都寺町三条のホームズ」(望月麻衣著、双葉社)に、大丸京都店のブランディング事業「KKP(古都ごとく京都プロジェクト)」を取り上げてもらうことに成功した同店の谷京子氏が受賞した。地元に愛される百貨店を目指す取り組みが作品中に登場し、ファンが喜ぶ仕掛けをしたことで、大丸京都店は同作品ファンにとっての聖地になっているという。
表彰式で大丸松坂屋百貨店の好本達也社長は「小さなことにもビジネスチャンスを見出している点が素晴らしい。発明体質は昨年にも増して広がっている。途切れることなく続けていってほしい」と語り、同アワードによって社内意識が変わりつつあることに期待を寄せた。