イタリア・コモのテキスタイルメーカーのオルメテックス(OLMETEX)のトレーサビリティー<トレース(追跡)とアビリティー(可能)の2つの言葉を合わせたもの。製品の原料から生産工程までの追跡が可能なこと>の取り組みがユニークだ。1年前に始動したという「コ・ブランディング」プロジェクトは、商品ラベルに付けたQRコードを読み取ると製造工程を紹介する映像を見ることができるというもの。
「糸から製品になるまでの工程を動画で見ることができる。アプローチすべき新世代はデジタル世代。テキスタイルメーカーとして工程を可視化すべきだと考え、この仕組みを思いついた」とルカ・ブレスキ(Luca Breschi)=エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントは語る。映像の最後には、映画のエンドロールのようにすべての情報が掲載される。
同社と初めてこのプロジェクトに取り組んだのは「シュプリーム(SUPREME)」だ。コットン製のジャケットを作り、「インスタグラムなどでも映像をシェアした」という。今後、「シュプリーム」との取り組みではコットン・ナイロン製のジャケットも発表予定で、その他「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」とも取り組んでいるという。
オルメテックスは、トレーサビリティー追求だけではなくサステイナブルな生地やユニークな生地作りにも積極的だ。リサイクルヤーンを用いたもの、生分解性のもの、バイオベースのナイロン、炭素繊維などがあるが、紫外線を浴びると光る生地やカメラのフラッシュで光る生地などもある。6年前からPFC(フッ素化合物)フリーにも取り組む。工場で用いる電力は、たまたま掘り当てたという天然ガスを用いた自家発電で賄う。
同社はシルク、ウール・シルク、コットン、コットン・ナイロン、ポリエステル、ナイロンなど扱う素材はさまざまだが特にコート地を得意とし、老舗英国ブランドや、フランスやイタリアのラグジュアリーブランドを顧客に持つ。生地の価格は1mが6.5~50ユーロ(約786~6050円)と幅広い。同社の2018年の売上高は2500万ユーロ(約30億2500万円)だった。