ロンドンのアップルストアでのイベントで4月7日、トム・フォードがファッションや映画監督の仕事、息子について語った。そして、27年間共に歩んだパートナーのリチャード・バックリーと結婚したことを発表した。インタビュアーは、スタイルジャーナリストのキンヴァラ・バルフォール。対談をダイジェストでレポートする。
キンヴァラ・バルフォール(以下、キンヴァラ):ついにご結婚されましたね。
トム・フォード(以下、トム):とても嬉しいよ。アメリカで結婚したけれど、最近イギリスでも同性婚が合法化されたのは素晴らしいことだ。
キンヴァラ:若い息子(アレクサンダー・ジョン)がいらっしゃいますよね。
トム:ああ、息子の様子をいつでもチェックするため携帯電話を持ち歩くようになった。ベビーシッターを雇ってから、家の中を全裸で歩き回らないように気を付けているよ。子どもを持つ前は、帰宅した瞬間、服を脱ぎ捨てたのに。
キンヴァラ:今後の予定は?
トム:もっと映画を製作したい。時間さえあればいくつか撮れるけど。「シングルマン」(2009年公開の監督作)は私の中で最もアーティスティックな仕事だった。デザイナーとしての私は、アレキサンダー・マックイーンのような「アーティスト」ではない。デザイナーであると同時に、ビジネスマンだ。私にとってデザインの仕事とは、幸せを追求すること。人を幸せにできなければ、満足できない。
キンヴァラ:数々の成功を収めたことについて、どう思っている?
トム:今は、自分がするすべての意義や意図について意識的にきちんと感じようとしている。「グッチ」での仕事が評価されて、成功への階段を駆け上がっていた頃は、全く実感が湧かなかったものだ。当時、そんな心境をカール・ラガーフェルドに相談したら、「実感とは後で振り返った時に湧くものだ」と言われた。今は本当にその通りだと思う。
キンヴァラ:そういえば、JAY-Zが「トム・フォード」という楽曲を発表しましたね。
トム:彼のコンサートで6万人のファンが自分の名前を叫んでいるところを想像すると恐ろしいよ。僕は本当にシャイなんだ。ブランドビジネスに携わる身としては、一番ありがたいことなんだろうけどね。
キンヴァラ:今後の「トム フォード」は?
トム:ブランドの拠点をミラノからロンドンに移すことにした。今のメンズ・ファッションは、英国スタイルを受け継いでいる。特定のフィットに、特定のスタイルがあるからね。決して派手ではない、僕のメンズにピッタリの街だ。
キンヴァラ:ファッション業界に入ってくる若者に期待することは?
トム:「学校を出たら、すぐにスターになれる」と考えている若者が多いのは問題だ。皆インターンを経験するべきだ。床掃除やゴミ拾いなど、雑用を通していろんなことを学んでほしい。
キンヴァラ:今日の来場者へのファッションアドバイスをお願いします。
トム:自分にとって着心地のよくない服は、絶対に着てはいけない。身体的ではなくて、精神的な着心地。たとえ思い込みでも、その気持ちは外見に表れるからね。