イタリアのユーロジャージー(EURO JERSEY)は7月上旬に開催されたファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」で、繊維業界で初めて環境負荷を製品に明示したテキスタイルを発表した。これは2020-21年秋冬向け製品からで、環境フットプリント(PEF:Product Environmental Footprint)認証を取得して、生地1mあたりの水の使用量、二酸化炭素排出量、エネルギー使用量を明記した。PEF認証は、1次エネルギー消費、気候変動、オゾン層破壊、酸性雨、人体への発がん作用、土地利用、水資源の枯渇、生体毒性などの16項目について、特に負荷が大きい3つを記載するもので、パスタやワインを製造する一部の食品メーカーが先駆けて取り組んでいる。
ユーロジャージーは07年からサステイナビリティー追求に取り組むが、アンドレア・クレスピ(Andrea Crespi)=マネジング・ディレクターは「今日、サステイナビリティー追求は残念ながらマーケティングの話になっている。オーガニック素材だから、リサイクル素材だからサステイナブルとなっているがそうではない。そういうことを言っている企業はどのように作っているかを話さないし、話せない。サステイナビリティーとは透明性を示すことだ」と語る。
今回の「ミラノ・ウニカ」で、有力アウトドアブランドや大手スポーツブランド、有力アパレルブランドなどが同社の生地購入を決め、その約90%が衣料品にテキスタイルの環境負荷を明示するという。
同社は原料調達から紡績、撚糸、染色、編み、加工まで、5年をかけて全工程のトレーサビリティー(トレース/追跡とアビリティー/可能の2つの言葉を合わせたもので、製品の原料から生産工程までの追跡が可能なこと)を確立した。「よりよくするには、環境への負荷を計測して透明性を追求することだと考えた」とクレスピ=マネジング・ディレクター。
2019年春夏には、「ヘルノ(HERNO)」と“ファーストアクト・コレクション(FIRST ACT COLLECTION)を発表。ラディチグループ(RADICI GROUP)のナイロン糸を用いたユーロジャージーの特許取得素材“センシティブ(SENSITIVE)”製ジャケットの全製造工程における環境負荷をジャケットに明記した。
「ヘルノ」によれば同ブランドのジャケットを製造する場合、平均で二酸化炭素排出量が16.9kg、水消費量が0.42立方メートルだという。ちなみに桃1kgを出荷する二酸化炭素排出量は0.5kgであるのに対して季節外れのチェリー1kgの出荷には17kgかかり、同様に、水道水1リットル当たりの二酸化炭素排出量は0.002kgに対してペットボトル1リットルの水を詰める場合の排出量は0.2kgだそうだ。
ユーロジャージーは日々、水やエネルギー、薬品の使用量の削減にも取り組む。同社は1959年設立でスポーツウエア向けの素材を得意としており、2018年の売上高は過去最高の7400万ユーロ(約88億8000万円)だった。