東京・銀座のセレクトショップ、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)の新たな書籍スペース、ビブリオテカ(BIBLIOTHECA)をのぞいてきました。7階のカフェ、ローズベーカリー(Rose Bakery)の正面にあったアート本のスペースを刷新。老舗のラグジュアリーブランドから若手デザイナーズブランド、ストリートブランドが一緒に並ぶDSMGらしく、有名アーティストによる写真集から、個人が衝動的に制作したZINEが一緒に並ぶミックス感のある書籍スペースになっています。
1000円台のZINEや数万円の希少なアート本も一緒に置いてありますが、基本的には立ち読みもOK。29日に行われたレセプションでは、人気書店のような光景になっていました。
キュレーターは人気のイベント「東京アートブックフェア(TOKYO ART BOOK FAIR)」の仕掛け人で、洋書のアートブックを中心に取り扱う書店ポスト(POST)の代表の中島佑介さんと、同じくアートブックのディストリビューションを手掛けるトゥエルブブックス(twelvebooks)の代表を務める濱中敦史さんの2人です。オープン直後は60以上の出版社から200種類近いアート本や写真集、「東京アートブックフェア」の出展ものから選ばれたZINEが並んでいます。
中島さんはもともとDSMGの3階にあった書籍スペースの選定も担当しており、今回の移転リニューアルに伴って、書籍をテーマで選ぶのではなくたくさんのジャンルを置くことで「本の多様性を表現しようと考えました」と言います。「写真集でも、デザイン本とインテリア本でもあるような、ジャンルを超えているものが増えていて、また自費出版であるZINEの表現力が豊かになっています。あえてカテゴライズせずにアート本とZINEを並列に配置しながら、隣り合う本の関係性を見出し、お互いに共鳴し合って見えるようなディスプレーを心掛けています」と話します。
濱中さんは本の選定について「中島さんに内容を伝えずに、バラバラに選んでいますが、あえて王道のファッションの写真集などは置かないように決めていました。DSMGはファッションが好きな人だけでなく、カルチャー全般が好きな人、アーティストまで世界中から多くの人が集まる場所です。特定の人気デザイナーの本は持っている人も多い。それならば、お客さまが見たことないもの、インスピレーションを得られるようなかっこいいビジュアルや、驚いたり、おもしろいと思ってもらえるような本を提案したい。今後も商品ラインアップは変わっていくため、来るたびに異なる作品を見つけられるようなスペースになっていきます」と語っていました。
濱中さんが教えてくれたオススメの本は、ラフ・シモンズ(Raf Simons)との協働でも知られる現代美術家のスターリング・ルビー(Sterling Ruby)による作品集。表紙にブリーチした生地が貼られていて一つ一つ表情が異なるものから、1ページずつ異なる絵がシルクスクリーンで手刷りされているものまで、本自体が作品となっています。
空間デザインは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の川久保玲デザイナーが手掛けています。クリアケースを積み上げた本棚は、大きさも形も個性もバラバラな本を境界線なく陳列でき、まるでDSMGの小宇宙。本が浮いているようにも見えます。
また、ビブリオテカの側の下りエスカレーター正面には新たなビジュアル展示スペースが登場しました。初回の展示は1階のエレファントスペースにもいる象徴的なゾウの写真にロゴを載せているもの。撮影したら、中にゾウがいるように見えてビックリしましたが、これはポスターです。DSMG担当者いわく、「広告のようにビジュアルが変わっていく」ということなので、このビジュアルの変化も、同店を訪れたときの楽しみにしたいと思います。