アマゾン(AMAZON)がプライム会員向けの新サービス、「パーソナルショッパー バイ プライムワードローブ(Personal Shopper by Prime Wardrobe以下、パーソナルショッパー)」を開始した。
これはアマゾンのアルゴリズムとスタイリストチームが、ユーザーの好みや体形、予算などに合わせて毎月セレクトする最大8アイテムの中から好きなものを選んで自宅で試着し、欲しいものだけを購入するという仕組み。「通勤用」「旅先用の服」「赤色は避けてほしい」などのリクエストも可能だ。サービス利用料は月額4.99ドル(約540円)。購入期限は7日間で、不用なアイテムは無料で返品できる。なお、同社は購入前に自宅で試着できるサービス「プライムワードローブ」をすでに提供しており、「パーソナルショッパー」はその追加サービスという位置付けになる。
トニー・バコス(Tony Bacos)=アマゾン ファッション最高技術責任者(CTO)は、「このサービスの特徴は、人間のスタイリストとコンピューターの能力が組み合わされているところだ。ECプラットフォームは使いにくいものも多く、欲しいものがうまく探せないユーザーもいる。『パーソナルショッパー』は、検索しきれないようなリクエストにも応えられる」と語った。同氏はまた、「既存のサービスである『プライムワードローブ』をベースにしているので、利用するハードルが低いと思う。ユーザーのデータが蓄積されていくため、使い続けることによって精度が高まり、さらに好みに合った商品がお薦めされるようになる」と利点を説明した。
類似の“オンラインスタイリング”サービスを提供している会社としては、エムエム・ラフルール(M.M.LAFLEUR)やトランク・クラブ(TRUNK CLUB)などがあるが、上場企業となるとスティッチ フィックス(STITCH FIX)しかない。同社の直近12カ月間での売上高はおよそ15億ドル(約1635億円)で、時価総額は27億7000万ドル(約3019億円)だ。この分野でかなり成功を収めているといえるが、アマゾンの参入によって競争が激しくなるだろう。スティッチ フィックスは月額利用料がない代わりに1回のスタイリングごとに20ドル(約2180円)かかり、これは届けられた商品を全て返品した場合でも変わらない。アマゾンのようなサブスクリプションサービスとどちらがいいかは好みによるが、料金の差が気になるユーザーもいるだろう。
こうしたサービスでは、料金に加えて豊富なアイテムがそろっていることも重要だ。最新のファッションアイテムを購入する場所としてアマゾンを思い浮かべる人は少ないかもしれないが、実は「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」「リーバイス(LEVI'S)」「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「レベッカ テイラー(REBECCA TAYLOR)」「セブン フォー オール マンカインド(SEVEN FOR ALL MANKIND)」や、アマゾンのプライベートブランドである「デイリー・リチュアル(DAILY RITUAL)」など、何千ものブランドを取り扱っている。「パーソナルショッパー」では、その50万点以上に及ぶ商品の中から選ばれたアイテムが届けられる。
バコス=アマゾン ファッションCTOは、「『パーソナルショッパー』は時間を節約したいユーザーにぴったりだ。好みやサイズ、予算を把握して買い物をしてくれるアシスタントのようなものだからだ。また時間の節約以外にも、自分では選ばないブランドやスタイルと出合う素晴らしい機会になると思う。新しいトレンドやブランドを意識しつつ似合いそうなものを選んでくれるという、いわゆる“パーソナルスタイリング”に興味があるユーザーにも喜んでもらえるだろう」と述べた。現在はウィメンズのみが対象だが、いずれはメンズにも対応する予定だという。
ほかにも、アマゾンは各国の人気ファッションインフルエンサーがデザインした限定アイテムを販売するプロジェクト「ザ・ドロップ(THE DROP)」を発表するなど、最近はアパレル事業に力を入れている。