ファッション

元祖お守りジュエリー「イレアナ・マクリ」デザイナーの華麗なる人生

 ギリシャ人ジュエリーデザイナーのイレアナ・マクリ(Ileana Makri)が東京・ギンザ シックス内のブティック改装を機に来日した。「イレアナ・マクリ」は最近トレンドのお守りジュエリーの代表格である目やヘビのモチーフのジュエリーの元祖ともいえるブランド。繊細で遊び心のあるデザインは日本でも人気が高い。来日したマクリにインタビューするために、ギンザ シックスのブティックを訪ねた。約束の時間を少し過ぎて姿を現したマクリは、「ランチが終わらず遅れてごめんなさい。でも、本当にラッキーだったのよ」と話し始めた。親日家で美食家でもある彼女は、その日ミシュラン2つ星のフレンチレストラン「ナリサワ(NARISAWA)」でランチをしていたそうだ。マクリは「ランチは予約を取らないっていうから、オープン時間ちょうどに行ったのだけど満席だった。仕方ないから姉妹店『ビーズ バー バイ ナリサワ(BEES BAR BY NARISAWA)』でいきさつを話したら成澤(由浩)シェフの息子さんがすぐレストランに連絡してくれたの」と続ける。幸運なことにキャンセルが出てマクリは「ナリサワ」でランチすることになった。「彼の料理はまるで芸術のよう。10コース以上もあって、どれも素晴らしかったわ。約束の時間があるからデザートはあきらめたけれど」という。そんな彼女がジュエリーデザイナーになったのは偶然のこと。彼女自身が運を引き付ける人なのだ。

スタジオ54でウォーホルとも交流

 マクリはギリシャで結婚後、夫の仕事の都合で8年間ニューヨークに滞在する。2人の娘もニューヨークで生まれた。「私の親友の友人がクラブに行こうと連れてってくれたのがスタジオ54だった」。親友の友人とは、スタジオ54の共同オーナーのスティーブ・ルベル(Steve Rubell)だったのだ。「スティーブや彼の共同オーナーのイアン・シュレーガー(Ian Schlager)とスタジオ54にはよく行ったものよ。常連だったアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)と友だちにもなったわ」とマクリ。彼女は当時のニューヨークのクラブシーンにおけるセレブリティーだったのかと聞くと、「アンディはセレブだったけど、私は全然。ただの一般人よ」。彼女がジュエリーデザイナーとしてキャリアをスタートさせる以前の話だ。

友人に作ったリングがきっかけで1000万円のオーダーが舞い込む

 マクリは子どもの頃から石が大好きで、大きな箱に入ったコスチュームジュエリーで遊んでいたそうだ。彼女が最初にジュエリーを作ったのは13歳の時だった。ブランドのアイコンの一つである“スレッドバンド”で、細い糸のようなリングだ。「1週間そのリングをつけていたら壊れたから、壊れないようにどうしたらいいかいろいろ試した。今でもそのリングの半分を持っているわ」とマクリ。その“スレッドバンド”が彼女に幸運を呼び込んだ。1999年、マクリは友人に頼まれて“スレッドバンド”4~5本を携えてアメリカ・ニューヨークを訪れた。当時、彼女は親しい人だけにジュエリーを制作していた。マクリがニューヨークに滞在中に、そのリングをつけた友人をバーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEWYORK以下、バーニーズ)の当時の社長だったジュディ・コリンソン(Judy Collinson)が目撃し、リングをどこで手に入れたかと尋ねた。友人はマクリがデザインしたと告げ、彼女は滞在中にコリンソンにリングを見せに行ったのだという。コリンソンは「私が探し続けていた人はあなただ」と言ったそうだ。数日後、マクリがホテルに帰るとフロントで鍵とバーニーズからのファクスを渡された。そのファクスはオーダーシートで、金額は13万5000ドル(約1431万円)。「それがバーニーズの最初のオーダーだった。ただし納期は2カ月。すぐにアテネのアトリエに電話して納期を守れるか確認したわ」とマクリ。今でもバーニーズは最初のコレクションをオーダーし続けているという。こうして、マクリのジュエリーデザイナーとしてのキャリアがスタートした。

人に見せるためではなく
自分のためにつけるジュエリー

 マクリのインスピレーション源は、海や山などの自然から古代の遺跡までさまざまだ。彼女のジュエリーは繊細でさりげないが、どこか強さを感じさせるものがある。マクリは、「私のジュエリーは一日中つけるためのもの。人に見せるものではなく、自分のためにつけるジュエリーよ。私自身の一部のようなもの。ジュエリーには価値があるだけでなく、それ以上の意味がある。シンボル的なものであり個人的な意味を持つもの」と話す。彼女のジュエリーを購入する女性は20~70代と幅広い。「仕事を持つ独立した女性で、インターナショナルな感覚を持った女性が多いわ」とマクリ。「ジュエリーは永遠の友になりうるものよ。リフォームすれば新しい命を吹き込むことができる。だから、デザインが古いと思ったらどんどんリフォームするべきね。私も友人に頼まれてデザインすることがあるわ」。

趣味はパトモスにある
別荘のデコレーション

 スタイリストのソニア・パーク(Sonya Park)が手掛ける「アーツ アンド サイエンス(ARTS & SCIENCE)」の洋服がお気に入りというマクリ。親日家で京都が大好きという彼女らしい選択だ。そんな彼女の趣味は、パトモス島にある別荘のデコレーションだという。「テラスからエーゲ海が見える素晴らしい場所。『デザイナーズ・ギルド(DESIGNERS GUILD)』のテキスタイルなどを使ってデコレーションしたの。とても気に入っているわ。友人や家族の皆が別荘で過ごすのが大好きよ」。そんな彼女だが最近、長年住み続けたアテネの生家を売り、ダウンタウンに引っ越した。長年住み続けた家を手放す決心をするのは簡単ではない。なぜそのような決断をしたのかと聞くと、「もちろん愛着もあるし、手放す決断するのは大変だった。両親はいないし、子どもたちも巣立っていった。私一人で大きな家に住んでも仕方ないと思ったから。ちょうどアクロポリスの丘が見える素敵な家が見つかったの。アトリエにも近いからとても便利よ」と話す。マクリは別荘や自宅に友人を招くのが好きだという。「アメリカ人の友人がギリシャに来るとき、私はまるでトラベルエージェントのようよ。どこで何をしたらいいかを教えて、滞在を楽しんでもらえるのがうれしいの」。

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