紳士服専門店の業績にビジネスウエアの変化が影を落としている。9日までに決算が出そろった大手4社のうち、19年4〜6月期の青山商事、AOKIホールディングス、はるやまホールディングスの純損益が赤字だった。18年10月〜19年6月期のコナカは赤字こそ回避したものの、純利益は半減した。ホワイトカラーの男性のカジュアル化に拍車がかかり、従来のスーツやワイシャツの売れ行きが鈍っていることが原因だ。
最大手の青山商事は売上高が前年同期比4.6%減の558億円、営業利益が同59.8%減の12億円、純損益は41億円の赤字(前年同期は17億円の黒字)だった。最終赤字に陥った最大の理由は「アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)」からの撤退に伴う特別損失56億円を計上したため。だが、主力である「洋服の青山」「ザ・スーツカンパニー(THE SUIT COMPANY)」のビジネスウエア事業も売上高が同6.6%減の389億円、営業利益が66.5%減の8億5900万円に失速したことも痛手となった。スーツの販売量は同9.3%減の約39万9000着で終わった。
AOKIホールディングスは売上高が同3.9%減の433億円、営業利益が同66.1%減の2億2800万円、純損益が2億8800万円の赤字(前年同期は2億9600万円の赤字)だった。「アオキ(AOKI)」「オリヒカ(ORIHICA)」などファッション事業は、売上高が同6.5%減の241億円、営業損益が3億9500万円の赤字(同2億400万円の赤字)。この間「アオキ」では低収益や不採算の39店舗を閉鎖した。スーツだけでなく、例年ならこの時季に売れるはずのドレスシャツも不調だった。
はるやまホールディングスは売上高が同6.6%減の117億円、営業損益が2億6800万円の赤字(前年同期は1億3300万円の赤字)、純損益が2億3600万円の赤字(同3億2200万円の赤字)に終わった。コナカは売上高が前年同期比6.5%減の495億円、営業利益が同27.4%減の17億円、純利益が同54.8%減の6億8300万円だった。
新規参入組にシェアを奪われる
メンズスーツ市場の縮小は今に始まったことでなく、国内市場規模は1992年の約8000億円から2017年には2000億円台に縮小した。十数年にわたって百貨店や量販店が売り場を縮小する中、生き残った紳士服専門店が残存者利益を分け合う構図だった。製造工程が複雑なメンズスーツは、大手でなければ価格競争力で紳士服専門店に対抗できないため、参入障壁が高い業界だと言われてきた。
だが、この数年で状況はかなり変わった。「カジュアル化・カスタマイズ化などで業界の参入障壁が低くなり、他業界からの参入が増えている」(青山商事)。カジュアルなビジネススタイルを求める若い男性は、セレクトショップなどに向かうようになった。オーダースーツの分野にはFABRIC TOKYOに代表されるスタートアップ企業の参入が相次ぎ、オンワードホールディングスのような老舗企業も巻き返しを図っている。守勢を余儀なくされている紳士服専門店は巻き返すことができるのか、正念場を迎えている。