ジーンズが売れない――そんな中で一社気を吐くのが「リーバイス(LEVI’S)」だ。米リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)の売上高は3年連続増収で、2018年11月期の売上高は前期比13.6%増の55億7500万ドル(約6076億円)だった。3月に再上場を果たして初値が公開価格を大幅に上回ったほか、18年12月~19年5月期も前年同期比6.1%増と好調が続いている。ジーンズが冬の時代に、なぜ独り勝ちできるのか?同ブランドのアーカイブを収集・検証・体系化するヒストリアンのトレイシー・パネク(Tracey Panek)の「アーカイブには全ての答えがある」とのコメントにヒントの一片があるのだが……、詳しくは「WWDジャパン」8月5&12日合併号をご覧いただきたい。ここでは印象的なこぼれ話を紹介する。
サンフランシスコにあるリーバイ・ストラウス本社の1階には、2万点ものビンテージ「リーバイス」を収蔵するアーカイブルームがある。これらを管理するのがヒストリアンの仕事だ。1879年製の同社が持つ最古の「リーバイス」ジーンズも興味深いが、ここでは本紙で紹介しきれなかった2本に光を当てたい。
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まず1本目は、同社所蔵の最古の女性用「リーバイス」ジーンズだ。「現在販売するウィメンズジーンズ“701”の前身となる“401”というモデルで、1930年代前半に発売した。ハイウエストでフェミニンなフィットが特徴だ」とパネク=ヒストリアン。もとのオーナーは当時大学生だったバイオラ・ロングエーカー(Viola Longacre)で、「当時、女性がジーンズをはくのは型破りで進歩的なことだった。彼女はのちに英語の教師となるが、まさに自立した女性の先駆けといえる。そんな彼女が選んだのが『リーバイス』だった」。ロングエーカーは101歳で大往生し、遺品をリーバイ・ストラウスが買い取る形でアーカイブルームに収蔵された。
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もう1本は60年代のジーンズだ。「60年代は“カスタマイズの時代”。サンフランシスコはヒッピームーブメントの中心地であり、たくさんの若者がこの地に集まっ た」。ニューヨーク在住のメロディー・サバタッソ(Melody Sabatasso)もその一人で、FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)に学んだが、ドロップアウトしてサンフランシスコにやって来た。「ある日友人の結婚式に招かれた彼女だが着て行く服がなく、『リーバイス』のジーンズをカスタマイズしてドレスを作った。これを見た友人や知人から『私の服も作ってほしい』と声が高まり、『ラブメロディー(LOVE, MELODY)』という名前でブランド化した」という。2019年の話を聞いているようだが、これは60年も前の出来事だ。「彼女はとても『リーバイス』ラブな人で、リメイクの際のステッチカラーもオリジナルと同色にするなどディテールにもこだわった」とパネク=ヒストリアンは解説してくれた。
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実は当時、リーバイ・ストラウスはサバタッソ=デザイナーの動きを規制したという。パネク=ヒストリアンは、「時間をかけて『リーバイス』は変わった。ブランドをより身近に感じてもらうために、それはとても大事なことだった。結果としてカスタマイズを受け付ける“テーラーショップ”や、世界に1本だけのジーンズをフルオーダーできる“ロット・ナンバーワン”、セルフリメイクラインである“リーバイス オーソライズド ビンテージ(LEVI'S AUTHORIZED VINTAGE)”につながった」と教えてくれた。