例えば、ホテルの部屋で、ベッド周りで、車の中で、ベランダで、あるいは飛行機の中で。この夏を共に過ごした香りがあれば、深く心に刻まれる。大脳に直接働く香りは記憶と結びつきやすいからだ。バケーションシーズン真っ只中の今、バッグに忍ばせて出かけたいのは、トラベルサイズの香り。すでに休暇を終えた人は、いつもの場所で楽しむのも一興。そんな3つの香りのアイテムを紹介する。
テキスタイルにマッチする「フェギア1833」
パッケージを新たにした「フェギア1833(FUEGUIA1833)」のテキスタイル シリーズは、布や衣服などのワードローブに吹きかけて楽しむ香り。抗菌と抗ウィルスにも配慮し、それらに効果的に働く原料で構成されている。ラインアップされる5種の中でも、特に夏に選びたいのが「リノ(Lino)」。ナツメグやオレガノ、タイム、ペッパーなどのスパイスを基調とした香りにのぞかせるのは、ラベンダーとムスク。乾いた空気に降り注がれるかのような、その太陽のような香りを洗い立てのリネンのシーツやシャツに包みたい。
フランスの総合美容専門店「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」
熱や蒸気を使わずに香りを瞬時に蒸発させる、「アラバストル」という提案。使い方は極めてシンプルで、白磁器=アラバストル ポースランに、微細な気泡構造のストーン=アラバストルピエールをセット。ここに、香りのエッセンス=アラバストルパルファン・コンサントレをストーンの上に数滴落とすだけ。部屋の広さを選ばず、その空間を香りで包み込んでくれるアイテムだ。全8種ある香りの中から、この夏は最新作のアンニバルを。クミンなどのスパイシーな香りにヒマラヤスギやパピルス、ジャスミンが溶け出し、柔らかでありながらセンシュアルな香り。 ラストはパチュリやレザーなどが混じり合い、温かみの中にも力強さをも感じさせてくれる。いつもの部屋で、書斎で楽しめば、香りには旅する力をもあることを教えくれるだろう。
旅をテーマに創作する、「アスティエ・ド・ヴィラット」
世界の都市や場所の名を冠し、「香りの世界旅行」をテーマに作られる「アスティエ・ド・ヴィラット(ASTIER DE VILLATTE)」のインセンス。洗練のボックス(W152×D63×H19mm)に美しく収まったインセンスは、1本でおよそ15分から20分ほど持続。調香師、アレクサンドラ・モネ( Alexandra Monet)と協働でクリエイトした香りだ。このインセンスは、香りの生地を長時間かけて圧縮して加工。その中に香りを浸透させて作られる、一連の工程は日本の技術が支えている。最新作の「ポルト·デ·リラ」は、薄紫色のリラの花を主題に、薔薇とジャスミンが咲き乱れ、大胆で華やかなハーモニーを奏でる。その、静かに立ち上る香りと煙に包まれる夜があってもいい。
渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している