モデルのサラ・ジフ(Sara Ziff)が立ち上げたモデルの人権を守る団体ザ・モデル・アライアンス(THE MODEL ALLIANCE)は、米ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」のジョン・ミハス(John Mehas)最高経営責任者(CEO)宛に性的違法行為からモデルを守るよう求める公開書簡を発表した。
ザ・モデル・アライアンスは、ブランドと契約しているモデルらに対して複数の性的違法行為が行われていると指摘。「『ヴィクトリアズ・シークレット』はその影響力を駆使して業界の悪しき慣習を直ちに改革する責務を負う。ファッションブランドや出版社、エージェンシーは日々ファッション業界の常識・非常識を決めている。『ヴィクトリアズ・シークレット』がこの問題に真摯に取り組み、私たちの活動に賛同してくれたなら、業界がいい方向に変わる大きなきっかけとなるだろう」と続けている。
女性モデルに対して性的に不適切な行いをしたとして、同ブランドを運営するLブランズ(L BRANDS)のレスリー・ウェクスナー(Leslie Wexner)最高執行責任者(COO)と親交があり、児童買春の容疑がかけられていたが8月10日にニューヨークの独房で自殺した米国の富豪ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)のほか、同ブランドと仕事をしていたフォトグラファーのティムール・エメック(Timur Emek)、デイヴィッド・ベルメアー(David Bellemere)、グレッグ・ケーデル(Greg Kadel)らの名前が挙げられている。
エメックの代理人からのコメントは得られなかったが、情報筋によるとエメックは正式に「ヴィクトリアズ・シークレット」と契約していたわけではないが、フリーランス・フォトグラファーとしてブランドのショーを撮影していたという。また、ベルメアーとケーデルは不適切な行為について否定したが、ブランドは独自の調査の結果、両者に仕事を依頼することを中止している。
これに対してベルメアーは、仕事を依頼されなくなった理由についてブランド側からの説明はなかったという。また、経営陣に対して面談の機会を求めたが一切応じてもらえなかったと主張する。ブランドのスポークスパーソンは、「われわれは常にモデルの福祉に配慮している。モデル・アライアンスとは対話を続け、業界にとって意味のある前進をしていきたい」とコメントした。
公開書簡には100人以上のモデルが署名をしており、その中にはクリスティー・ターリントン(Christy Turlington)、エディー・キャンベル(Edie Campbell)、ジェマ・ワード(Gemma Ward)らも名を連ねる。
YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中