2019-20年秋冬ウィメンズ・コレクションの取材時にSNS用に撮影した15秒動画の中から、“いいね”をたくさんもらったものと、個人的に“これは見てほしい”ものを集めました。前編はミラノとロンドンからお届けします。
「グッチ」の中にはあなたの分身がきっと見つかる
雑誌「ムー」的なタイトルになりましたが、これは本当です(笑)。「グッチ(GUCCI)」のフィナーレには、100人近いメンズとウィメンズのモデルが登場し、じっくり見ると“やだ、これ私だ”と思うルックが見つかります。現在の「グッチ」は派手なイメージがありますが、それはひとつの面にすぎないのです。メガネで表情を隠してうつむき加減に歩くモデル、生真面目な女学生みたいなモデルなど多種多様なプライドを持った人格が見つかります。手の届かない憧れの世界ではなく、自分を投影できる大きな器をつくっているのが今の「グッチ」なんですよね。あなたの分身、見つかりますか?
「フェンディ」で聴いたカールの声は優しかった
「フェンディ(FENDI)」のエンディングで流れたのは、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の優しい声でした。ショーが開かれたのは、カールの訃報から2日後のことです。2015年に「フェンディ」とカールのコラボレーション50年を祝して撮影されたものだそうです。1965年に初めて「フェンディ」に出社した日の自分の姿をデッサンで解説しています。後に“大帝”と呼ばれる人が30代前半で異国の地で仕事を始めた日のことです。自分は転職後の初日にどんな服をどんな理由で選んだのだっけ?カールの死から半年が過ぎた今、あらためてこの映像を見て考えました。ファッションは人生と密接ですね。そんなことも思い出させてくれたカール、ありがとう。
伊版キラキラ女子が集まる「MSGM」の最前列から
パワーをもらう
「MSGM」のショーが始まる直前の様子です。ミラノコレの中で一番、“キラキラした”おしゃれな女子が集まるのがこのショーです。カラフルな服と髪の色!皆、自信に満ちていて、対面の客席までエネルギーが飛んできます。彼女たちのショーへの期待度が伝わってきますね。
じっくりと「プラダ」の一着を観察
短い動画なので瞬きせずにご覧ください。「プラダ(PRADA)」のミラノの展示会で撮影しました。360°どの角度から見てもきれいなパターンやディテールだな、と思ったからです。有名ブランドを有名たらしめるのはショーや広告やSNSといったプロモーションの力だけではなく、こういったモノ作りにあるのですよね。と真面目に考え、顔を知らないパタンナーさんに心の中で敬服しました。
タイプライターの音だけが響き渡る奇妙な記者会見
ニューヨークのメトロポリタン美術館が、現在開催中の展覧会「キャンプ:ファッションについてのノート(Camp: Notes on Fashion)」の記者会見をミラノのジェロラモ劇場で開きました。その冒頭の様子がこちらです。スクリーンに映し出されたのは、米国の批評家スーザン・ソンタグ(Susan Sontag)が1964年に発表したエッセイ「キャンプについてのノート」の一説。タイプの音が長時間鳴り響き、記者たちはスクリーンの文字をひたすら目で追うというシュールな時間でした。ある意味展覧会のテーマにぴったりな演出ですが、途中で “まさか、この無言の時間共有で会見は終わり!?”と不安に。もちろん続きはあり、同美術館の理事でもあるアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長、「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクター、同美術館のアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)衣装研究所キュレーターの3人が登場して話をしたのでした。
「モンクレール ジーニアス」の
プレゼンでローマに浸る
ミラノの初日に大型のプレゼンテーションを行うのが定番となっている「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」。その中からこちらは「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli )が手掛ける“1 モンクレール ピエールパオロ・ピッチョーリ”。この音楽とともに見ていただきたくピックアップしました。ローマへトリップ!
ミーハーはファッションの基本と「モスキーノ」が教えてくれる
日本の若いデザイナーはポップなものやメジャーなものを“ダサい”と遠ざけがちですが、その真逆のスタンスと言えるのが「モスキーノ(MOSCHINO)」です。多くの国に共通する要素(過去には洗車場など)を演出に入れてわかりやすく、ポップ&ミーハーなノリで、笑いをとりにくるサービス精神つきです。今回は通販番組をパロディー化した演出で、モデルは大きなターンテーブルの上で健康器具を使って運動を続けておりました。振り切っていて好きです。
おまけ
ロンドンの“バンクシートンネル”で
頭が少し痺れる
ロンドン・コレクションの最終日にフリータイムを1時間半得たのでグーグルマップに何とはなしに“バンクシー(Banksy)”と入れたらびっくり!バンクシーのグラフィティーが残る地点がいくつもヒットしました。結果、バスと徒歩で巡り4つ見ることができました。その中のひとつがこちらリーク・ストリートの通称“バンクシー・トンネル”です。ここにバンクシーの作品は今はもうないそうですが、そもそもはバンクシーがここに作品を描いたことがきっかけでこうなったそうです。圧巻できれい。常に誰かがスプレーで絵を描いているから少し頭がしびれた気がします。