クリエイティブ集団NEWPEACEが展開するプロダクトブランド「オンファッド(ONFADD)」は8月16日~21日、パリや東京で活動する写真家イリグチケンタとONFAdd Galleryで写真展を開催中だ。同展のテーマは“WALL(壁)”。イリグチが魅了された世界の建築物の“壁”にフォーカスした作品やコラージュアーティストのヤビク エンリケ ユウジ(Yabiku Henrique Yudi)が手掛けたインスタレーションも展示する。また、「オンファッド」とイリグチが共同制作したTシャツやバンダナなどのアイテムを販売する。
「オンファッド(ONFADD)」は、“Unleashed habit(解き放たれた習慣)“の価値観のもとに、クリエイターのためのプロダクトをさまざまな分野のクリエイターと共同制作している。これまでに雨や雪などの悪天候からスニーカーを守る靴用雨具「レインソックス(RAIN SOCKS)」や、寝袋にもなるバックパックなど、“移動”に重点を置いたプロダクトを展開している。19年6月、世界各地を移動するクリエイターであるフォトグラファーに特化し、展示を行うONFAdd Galleryを設けた
WWD:これまでファッションシューティングを中心に活動してきて、何故今回の写真展は“壁”をテーマに選んだんでしょう?
イリグチケンタ(以下、イリグチ):海外で活動していた時に壁に無数に貼られたポスターや企業広告に引かれたのが理由です。そこから壁”を主題とした建築写真の撮影をスタートしました。
WWD:今回の写真展に使用した壁や建築物を撮影する基準は?
イリグチ:一般的に壁は綺麗な平面をイメージしますが、建築物によって作り方はさまざまで、異なる素材を使用している点に着目しました。色味や劣化具合、建物物に差す光など全体のバランスを考えて撮影しています。
WWD:ヤビクさんが制作したインスタレーションのコンセプトは?
ヤビク エンリケ ユウジ:街中にある壁を自分なりに再現しています。作品の展示を順番に見ていった先にコンセプトの“壁”を再現したら面白いかなとイリグチさんと話し合って決めました。それで、見たことのないような特殊な壁ではなく日常生活になじみの深い壁を製作しました。
イリグチ:インスタレーションの壁も特殊な素材を使用して壁を表現しています。僕が引かれた広告のたくさん貼られた壁もヤビク君と一緒に製作しています。また、作品を展示するレイアウトも一貫したストーリーを持たせていて、空間演出もヤビク君がディレクションをしてくれました。床にも立体的な作品や写真を展示する予定です。
WWD:今回、「オンファッド」 のギャラリーを会場として提供した理由を教えてください。
川谷太一・「オンファッド」アートディレクター(以下、川谷):ウチのクルーと元々面識があったのと、先々月にこのギャラリーで開催した写真家の飯野匠紀(ENO)君の写真展にイリグチさんがいらっしゃっていて、そこでこちらからオファーさせていただきました。
早川和彦・同ブランドディレクター(以下、早川):ブランド名の「ONFAdd」はOf No Fixed Address(住所不定)を意味します。私たちは、移動が新しいクリエーションを生み出すと考え、その移動を後押しするようなプロダクトを作っているんですが、実際に各地を飛び回って作品を生み出し続けているのは誰だろうとイメージした時にフォトグラファーが思い浮んで依頼しました。
イリグチ:「ヌーヴェルトマガジン」(イリグチが運営に携わる、さまざまな若手クリエイターなどを取り上げるECサイトと連携したウェブマガジン)の立場で初めて「オンファッド」の方々に会いました。クルーの一人が、僕と地元が同じだったりそういったご縁もあって仲良くさせてもらってます。
WWD:今回発売するアパレルのデザインはどういったコンセプトなんですか?
川谷:イリグチ君の写真をそのままプリントして取り入れるのではなく、彼の普段のファッションのスタイルを聞いたりして私たち側からもいろいろな提案をして決めました。ただのコラボというわけではなく作品の1つとして捉えています。
早川:写真のアウトプットの方法も、必ずしも写真のプリントを展示するだけではないんじゃないかとイリグチ君から提案がありました。我々のギャラリーは展示発表するだけではなく共作する場でもあるのでテーマの“壁”を表現できるアイテムを製作しました。”
イリグチ:“Wearing Wall(着用できる壁)”をイメージしました。前回、写真集を製作した時も作品と一緒に、写真をプリントしたTシャツを同梱しましたが、写真をより身近に感じて欲しいという気持ちを込めて製作しています。
WWD:「オンファッド」でも使用する素材を使っていますか?
川谷: 今回の写真展の為に作ったエクスクルーシブなものになります。
WWD:東京に上京してきて1年が経ちましたが、活動拠点を変えて環境に変化はありましたか?
イリグチ:福岡にいた時は海外のクライアントしかいなかったんですが、東京に来て初めて日本の企業と仕事をしました。仕事も出会った人達が僕を繋いでくれて、運や人の力でここまでやってこられたという感じです。
WWD:2020年に向けてやりたいことは?
イリグチ;これまでファッションや人物を中心に撮ってきましたが、最近は、建築物に引かれています。僕はストリートスナップからキャリアをスタートしていますが、ある意味建築物もストリートにあるものなので、2020年に向けて日本の建築物をもっと世界に発信していきたいです。
ファッションスナップがバッグボーンにあるので、建築物も同じように格好良く撮れるフォトグラファーになりたいですね。