年中無休、24時間営業の完全予約制という業態で注目を集めている東京・赤坂の美容室「ピンチ(PINCH)」が、美容業界初の“ペイレス”システムを導入した南青山店を7月初旬にオープンした。ペイレスシステムは、クラウドコンサルテーションと構築・運用サービスを行うフィクサー(FIXER)と同サロンが共同で開発したもの。施術に関するカウンセリング後メニューが確定した段階で、あらかじめ同サロンのライン公式アカウントから登録した支払方法で決済を行う。いまだ現金派が多数を占めるヘアサロンの支払いシステムの中で、現金のやり取りが一切発生しないこのシステムは受け入れられているのか、ヨシダアキヒロ「ピンチ」代表に聞いた。
WWD:混同されることがあると思うのですが、ペイレスシステムとキャッシュレスの違いを教えてください。
ヨシダアキヒロ代表(以下、ヨシダ):キャッシュレスはクレジットカードや電子マネー、口座振替を利用して、紙幣・硬貨といった現金を使わずに支払いを行う決済方法ですが、カードやスマートフォンなどが必要になります。ペイレスシステムは事前に決済用のクレジットカード情報を登録しておくことで、支払いの際にそういったものが手元になくても決済が行えます。
WWD:支払いはどのような流れで行われるのですか。
ヨシダ:カウンセリング後、施術メニューが決まったら金額を確認します。その際にスタイリストがタブレットを操作して決済の確定を行うと、お客さまにラインでレシートが送信されます。
WWD:ではお客さまは一切操作をしないんですね。
ヨシダ:お客さまは何も触らず、決済画面も見ないので、「お金を払った感じがしない」と言われます。今までの固定観念では施術後にお金を払いますが、支払いという行為をすることでせっかくきれいになったのに現実に戻ってしまう。施術前に支払いが済んでいることで、施術前のワクワク感や仕上がりの喜びを損なわずに帰れるんです。
WWD:ペイレスシステムを導入するメリットは?
ヨシダ:支払いがなくなることによる施術体験の満足感向上はもちろん、お店にとっては現金のやり取りがないので、レジ締めの負担がなくなります。全てデータで管理されるので、間違いが起きたときに従業員を疑うことや追及することがなくなるので経営者としても楽ですね。
WWD:反対にデメリットは?
ヨシダ:現金派の人やカードを使いたくない人は当然対応できません。最初はスタッフも既存のお客さまで現金派の方がいると失客につながってしまうので、現金も取り入れたいという意見はありました。しかし、ペイレスシステムはこだわりでありコンセプトの一つなので、ブレずに現金には対応しないことにしています。お客さまに合わせるのもいいと思いますが、最先端のテクノロジーなのでお客さまを“教育”していく感覚もあります。僕が長年作りたかったシステムなので、魅力をしっかり伝えてすばらしさを体験してもらえるように促します。一度カードを登録して便利さを味わえば、次からはずっと使ってくれます。だから初めて利用するお客さまには予約時や来店前日に支払い方法について丁寧に説明をしますし、店内にはポップも用意しています。
WWD:サロンは朝6時オープン、週休2日制も規格外です。
ヨシダ:早朝に来店されるお客さまは赤坂店の顧客が多いですが、今後は新規のお客さまにもアピールしていきます。南青山店の周囲のショップは12時オープンなど開店時間が遅いところが多いので、そういったショップのスタッフには出勤前に気軽に立ち寄ってもらえると思います。テラスで朝食のサービスも行っていますので、朝活サロンとしての認知も進めていきたいですね。
WWD:オープンが早い分、閉店が19時というのも近隣サロンとの違いですね。
ヨシダ:スタッフの働き方も変化します。朝早く開店する分19時に閉店することで、仕事が終わってからご飯に行ったり遊びに行ったりすることができます。21時前はご飯を食べに行っても美容師がほとんどいないので、異業種の人とのつながりを持つきっかけになるはずです。モデルハントを街頭で行うときも、美容師があまり外にいない時間帯なのでいいモデルをつかまえやすいです。また、強制はしませんが19時に営業が終わってから3時間練習しても22時なので、練習もしやすいです。ペイレスシステムも朝6時オープンも、意外とスタッフの働き方の変化にもつながりました。