ファッション

業界人受けする本ではなく“究極に一般受けする本”を目指す 橋本太郎/「メンズジョーカー」編集長

 「メンズジョーカー」は今春、創刊10周年のアニバーサリーを迎えた。この間、ずっと陣頭指揮を執ってきたのは、橋本太郎・編集長。10年間ブレることのない橋本編集長の方針は、早い段階で20代中盤のターゲット世代に認められ、以降、「メンズジョーカー」は時代を問わず、この層に支持され続けている。毎年、新たな読者を獲得しながら、常に安定飛行を続ける秘密は何なのか?スタートしたばかりの新プロジェクトにも迫った。

WWDジャパン(以下、WWD):創刊10周年を迎えた、今の心境は?「メンズジョーカー」が10年間続いた理由については、どう思っている?

橋本太郎KKベストセラーズ取締役兼雑誌編集第二部長兼「メンズジョーカー」編集長(以下、橋本):何かを大きく変えることなく、気づいたら「あっと言う間」に10年を迎えていました。「メンズジョーカー」の基本は、リアルでベーシック。そこに、トレンドを少しだけプラスしたスタイル。これをブレることなく続けてきたからこそ、コンサバティブな男性ファッション誌として、創刊2年目くらいの比較的早い段階で軌道に乗りました。

WWD:現在の読者層や部数は?

橋本:これも創刊当時からほとんど変わらず、20代中盤が一番のボリュームゾーンです。当初から「社会人3年目くらいの男性に向けて」と思って誌面を作ってきたので、理想が現実のものとなって現在に至っています。発売月によって若干上下しますが、現在の発行部数は15万部程度です。

WWD:創刊からしばらく経った雑誌の中には、読者が入れ替わらず、“ 高齢化”していく媒体も多い。「メンズジョーカー」が健全な“新陳代謝”を繰り返している理由については、どう考えている?

橋本:ジーンズを核とする「参考にしやすいリアルクローズのスタイル」が、若い読者に支持されているのが一番の勝因だと思います。この10年で、市場には「安くてもいいモノ」がたくさん登場しました。そんな商品も積極的に取り入れているので、「ちょっと頑張れば、マネできるかも」という安心感を提供できているのではないか、と思います。10年も経つと、編集部員はスタイルもブランドもセレクトがマニアックになりがちです。そんな傾向を「毎日ファッションに触れているからわかるコトではなく、そうじゃない読者が読んでもわかるモノを」と話しながら、ブレーキをかけるのが僕の役目です。スタイリストも20代中盤~後半の方を積極的に起用し、リアルなスタイルにつなげています。

WWD:10周年を迎えた今年の計画は?

橋本:3月売りの4月号から、さまざまなブランドとのコラボレーションアイテムを読者プレゼントしています。広告部はスペシャルなタイアップを企画したかったと思うのですが(笑)、僕は10年間支えてくれた読者に還元したかった。4月号では5つのデニムブランドとジーンズを計100本、セレクトショップを含む10のブランドとTシャツを計1000着作り、読者へのプレゼントとしました。すっかり忘れていた送料にビックリしたくらいの大盤振る舞いには(笑)、2万通を超える応募が殺到しました。年内は毎月、「Gショック」の時計や「プエルタ・デル・ソル」のバングルなど、ウエアからアクセサリーに至るまで、多彩なプレゼント企画を継続する予定です。

WWD:5月21日に発売し、来年の月刊化を目指す「メンズジョーカーリラグジー」(以下、「リラグジー」)も10周年を機にスタートしたプロジェクトなのか?

橋本:特に10周年を意識したワケではなく、数年前から「やりたい」と思っていました。「リラグジー」のターゲットに想定する30代後半~40代のマーケットは、今、最も調子がいいところ。ボリュームゾーンが常に20代中盤~30代の「メンズジョーカー」は、ある意味、毎年多くの卒業生を輩出していて、「送り出す一方ではもったいないな」と思っていました。

WWD:確かに30代後半~40代は購買意欲や可処分所得も高いが、だからこそ、メンズファッション誌の中で最も競争の激しいマーケットでもある。他誌とどうやって差別化するのか?

橋本:“ファッション偏差値”の高い男性に向けた競合誌とは一線を画し、「メンズジョーカー」同様、最も実用的な媒体を目指します。僕が一番大事だと思う「清潔感」を重視し、そこにユルい雰囲気もプラスしていく。「メンズジョーカー」との差別化も意識し、より“遊び”の入ったスタイリングを心掛けますが、引き続き、その核はジーンズを中心とするカジュアルアイテムです。「リラグジー」を含めた「メンズジョーカー」が目指すのは、セグメントされたマーケットではなく、全方位を狙う“究極に一般読者受けするファッション誌”です。メンズファッション誌の切り口にはテイスト別、国・スタイル別などいろいろあるでしょう。けれど、それにこだわるあまり可能性を捨ててしまうのは、雑誌の都合で読者の興味や関心に満足に応えなくなることにつながります。テイストやブランド、価格帯を問わず、「良いモノは良い」というシンプルなスタンスを大切にしたいです。

WWD:「リラグジー」という名前の由来は?出稿クライアントや掲載ブランドの反応は?

橋本:「リラグジー」は、「リラックス」と「ラグジュアリー」を掛け合わせた造語。ターゲット世代はストリートファッションも経験しており、一通りを知っている。「リラックス」だけでも、「ラグジュアリー」だけでもなく、両方を知り、自分なりのオシャレを楽しみたいと思っている人たちに向けた媒体です。「メンズジョーカー」でお付き合いしてきたブランドの反応は、おおむね好評です。特にセレクトショップは、ターゲットを少しずつ引き上げ、今は「リラグジー」が狙う層に支持されています。手応えを感じました。

WWD:「リラグジー」の今後の予定は?

橋本:21日に発売した号は、128ページ仕立て。来春までにあと1、2回の増刊号を発売し、読者のニーズを絞り込みます。「メンズジョーカー」と「リラグジー」の双方で、今、少しずつファッションに戻ってきた印象の男性に買い物の楽しさや高揚感をもっと知ってもらいたいですね。地方にも強い雑誌として、日本のメンズファッションの底上げに貢献できたらうれしいです。

我が編集部の自慢は?
「MJ」編集部に行けば、綾波レイに会える!?

「メンズジョーカー」編集部には、女性コスプレイヤーがいます。彼女が得意なコスプレは、「エヴァンゲリヲン」の綾波レイです。このほか、ハンバーガーを36個食べたことがあるクセに、胃弱の広告部員もいるんです。

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2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

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