資生堂は8月29日、4月に開業したばかりの資生堂グローバルイノベーションセンター(以下、GIC)で、オープンイノベーションプログラム「フィボナ(FIBONA)」の本格始動を発表した。同プログラムを通してスタートアップ企業や顧客などと協業し、今後ビューティ領域における新しいビジネスを開拓する。
「フィボナ」は4つの活動プランから構成される。1、スタートアップ企業とのコラボレーションによるイノベーティブな共同研究やビジネスの開発。2、GIC内にあるミュージアムやスタジオを活用した生活者との直接的なコミュニケーションによる生活者視点を取り入れた製品開発。3、研究によって生まれた技術のベータ版のクラウドファンディング活用による市場への一早い投入。4、資生堂社員と異業種の人の交流による美に関する多様な知識の融合とイノベーションの創出。
荒木秀文・資生堂R&D戦略部長は「『フィボナ』を立ち上げたのは、企業が製品やトレンド、情報を一方的に消費者に届ける“メーカー視点”から脱却したかったから。今の時代、お客さまの方がスピーディーに情報を入手し、トレンドを発信しており、情報の非対称性がなくなっている。今後はお客さまと一緒に価値をつくらないとイノベーションが生まれない。また、私たちだけの知見ではイノベーション開発に限度があるとも考えている。そのため、積極的に異業種や外部の企業とタッグを組み、双方のノウハウを生かしながら新たな価値を生み出していきたい。化粧品という枠を超えてトータルビューティを提案していく」とコメントした。
今回、1つ目のプランであるスタートアップ企業との協業を始動させた。7月に参加企業を募集して約50社の中から3社を選出。3Dプリンティングやスキャニングなどデジタル技術を用いてプロトタイプを作るデジタル職人の集団であるデジタルアルティザンと、履くだけでランニングやウオーキングのデータを解析するスマートフットウエアを手掛けるノー ニュー フォーク スタジオ、尿検査により栄養バランスを分析し食事のアドバイスを行うサブスクリプションサービスを展開するユカシカド。
荒木部長は選定理由について、「ご提案いただいた全ての企業のアイデアが素晴らしかったが、今回注目したのは、技術やノウハウがきちんとあること、そして私たちのアセットと掛け合わせたときに全く新しい製品やサービスが生まれるだろうということがしっかりイメージできること」と説明した。
今後の製品化やサービス化の具体的なスケジュールは決まっていないものの、できるだけ早い段階で市場にプロトタイプを投入したいという。「次のステップは企画。3カ月ほどかけて企画やプランを立てていく。CESなどへの出展も検討している」という。
なお、「フィボナ」は調和的で美しい比例関係を示す黄金分割比の計算にも用いられるフィボナッチ数列から引用しており、資生堂が目指す普遍的な美と掛け合わせている。