デサントは、2022年3月期を最終年度にした新しい中期経営計画を発表した。急成長した韓国に依存した収益構造を改め、日本、中国、韓国の三本柱でバランス良く稼ぐかたちに変える。最も重要と位置付ける中国では大幅に成長スピードを上げる。中国では合弁企業を通じて現在120店舗を運営するが、将来的には「間違いなく1000店舗に達する」(小関秀一社長)と強気の姿勢だ。
29日に大阪で会見した小関社長が明らかにした。売上高や利益などの数値目標の発表は控えた。だが、通常の決算では主に卸ベースで計上される売上高を現地小売りベースに換算した目標では、中国の大幅な拡大によって、日本、中国、韓国がそれぞれ1000億円前後で3000億円近い規模(19年3月期は約2300億円)とした。
中国では「デサント(DESCENTE)」ブランドの展開での合弁パートナーで、中国の大手スポーツメーカーであるアンタ(ANTA)との連携を深める。伊藤忠商事出身で中国事業に精通する小関社長は「中国は3倍速で進める」とまで語った。「今の売り上げ規模は韓国、日本、中国の順番だが、本来の市場規模から考えれば、全く逆にならなければいけない」。
一方、日本と韓国は手堅くいく。日本は売上高の拡大よりも利益率向上とコスト削減を優先的に進める。拡大路線だった韓国は出店ペースを緩めて、シューズ事業の育成やブランディングによる安定を志向する。
デサントは韓国で929店舗を運営し、売上高は722億円(19年3月期)と全体の半分強を占める。今回の日韓関係悪化による不買運動について「影響は出ている」と話したが、現地での具体的な反響や減収についての言及は避けた。
小関社長は6月に就任。今年前半の伊藤忠の敵対的TOB(株式公開買い付け)によるデサントの経営権争いでは、伊藤忠側の代表として陣頭指揮を執っていた。TOBが成立したため、創業家の石本雅敏社長が退き、小関氏が新社長に就任した。小関氏は以前からデサントの韓国事業に依存する収益構造を問題視し、中国事業の迅速な拡大を主張してきた。
伊藤忠のTOBに対してはデサント社員の9割が反対の意思表示をしていたため、社内融和が第一の課題だった。小関社長は「当初は緊張したが、今では社員とフランクに話せるようになった。融和は十分にできていると思う」と話した。