2020年春夏シーズンのコペンハーゲン・ファッション・ウイーク(以下、CFW)が8月6〜9日に開催された。今季はストックホルム・ファッション・ウイークとオスロ・ランウエイが開催中止とあって、多くの北欧ブランドがCFWに参加する流れとなった。5月に来日した「セシル バンセン(CECILIE BAHNSEN)」やインフルエンサーからの支持が高い「ガンニ(GANNI)」など、デンマークを代表するブランドは世界的にも注目度が高まっている。彼らに続くアップカミングな北欧ブランドを発掘すべく51ブランドのショーやプレゼンテーションをチェックし、スウェーデン発の「ロデビエ(RODEBJER)」と「リトル リフナー(LITTLE LIFFNER)」に目が留まった。
RODEBJER 安心と共感を与える心地よさ
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CFWに参加して4シーズン目となるウィメンズブランド「ロデビエ」は、インフルエンサーから特に高い評価を受けた。創始者のカリン・ロデビエ(Carin Rodebjer)はスウェーデンで生まれ育ち、ニューヨーク州立ファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)を卒業して1999年にアメリカで同ブランドを始動した。スウェーデンで数々のファッションアワードを獲得し、現在はストックホルムとオスロに1店舗ずつ旗艦店を構えるほか、北欧の主要な百貨店など約20アカウントで販売する。
「ロデビエ」は既存の社会的規範にとらわれず自由に生きていきたいと願う女性に向けて、リラックスしたラグジュアリーウエアを提案する。モダンとクラシックを融合した洗練されたデザインで、日常の気分を高めてくれるような服をそろえる。今季は特に、体を締め付けないゆとりのあるサイズ感と、肌触りのいい素材にこだわったという。モロッコ・マラケシュの都市から着想を得て、ザクロやジャスミン、イチジクの葉など、アラビアの庭園に咲くボタニカル柄をプリントした。風に舞うドレーピングと地面にまでつく長いフリンジがなめらかに揺れて、リラックスムードを漂わせていた。価格帯はトップス250ユーロ(約3万円)〜、アウター700ユーロ(約8万4000円)〜。ショーを見たインフルエンサーのステファニー・ブルーク(Stephanie Broek)は、「ポップな色彩に満ちたブランドが多いCFWにおいて、タイムレスで落ち着いた『ロデビエ』のコレクションは親しみが感じられた。価格帯も含め、実用性にも長けている」とコメントする。
LITTLE LIFFNER 働く女性のニーズに応える有望株
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今シーズンがCFW初参加の「リトル リフナー」は、次なる“IT”バッグを生み出しそうな有望株だ。CFWに参加した業界関係者のほか、街中でも同ブランドのバッグを持つ女性を頻繁に見かけた。すでに日本でも高島屋やトゥモローランド(TOMORROWLAND)、ラカグ(LA KAGU)など8アカウントで取り扱われている。
ブランドを立ち上げたのは、雑誌編集者としてキャリアを積んだスウェーデン出身のポリーヌ・リフナー (Pauline Liffner)。北欧のシンプリシティーとイタリアの職人技を組み合わせ、機能性を重視したバッグを作ることに専念したという。ブランドのシグネチャーは、曲線美を生かしたミニマルなデザインだ。2012年にデビューして間もなく、ユークス ネッタポルテ(YOOX NET-A-PORTER)をはじめとするECサイトを中心に世界中にアカウントを増やしていった。CFWでのプレゼンテーションを見たプランタン百貨店のレオ・バード(Leo Bird)=ウィメンズバイヤーは「南フランス時代のアンリ・マティス(Henri Matisse)から着想を得たというコレクションは『ジャックムス(JACQUEMUS)』のようなフレッシュなカラーで、高品質なレザー製品がそろっていた。1シーズンしか見ていないけれど、デザイナーはいいストーリーテラーだと思う」とコメントした。スタイリストでインフルエンサーのデボラ・ローザ(Debora Rosa)は、自身で購入したという同ブランドのバッグを持ってプレゼンテーション会場に現れた。「リフナー自身にキャリアウーマンとしての経験があるからか、現代の働く女性が必要とするバッグのサイズ感や重さ、デザインなどを理解してくれている。『そうそう、こういうバッグが欲しかったの!』と、思わず声を上げたくなるようなバッグが多い。デザインがよく高機能なので出番が多く、私の周りではリピーター率も高い」とブランドに心酔している様子だった。
ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける