三陽商会は8月31日、同社のCSR活動の一環として、障害者のために制作した洋服の発表会を同社で開いた。障害者の居場所づくりに取り組む任意団体コオフク(東京都港区、西村佳子代表)と組み、6月から障害者との話し合いの場を設け、準備を進めてきた。制作には同社のパタンナー6人が参加。障害者から日常生活やファッションに関する悩みを聞き取り、同社の既製商品を元にリデザインした作品をショー形式で発表した。
当日は障害者の家族や三陽商会の社員が見守る中、障害者9人が作品を着用して堂々と披露した。車椅子の車輪の巻き込み防止のためスナップボタンで丈の長さが簡単に調節できるロングワンピースや、手が不自由でも着脱しやすいよう可動部分にジャージ素材を充てたジャケットなど、障害者の日常生活に配慮した工夫が随所に見られた。リデザインした服の一部は、同社のブランド「エス エッセンシャルズ(S.ESSENTIALS)」の商材を使用した。
ショーを主導した西村コオフク代表は、大手アパレル会社勤務を経て福祉の道に進んだ。「(アパレル会社勤務時代に)車椅子の方が『おしゃれをしたいのにできない』と言っていたのを聞いたことがあり、ずっと心に残っていた。業界もその状況を変えようとしないのがもどかしかった」と話す。「今後もこのような場を設け、障害者がおしゃれを楽しめる環境を地道に作っていきたい」と力を込める。
発表会を見守った岩田功社長は、「ショーを通じ、おしゃれはあらゆる人の個性を引き立てるものであるべきだと、改めて感じた。今回作った服を買いたいという声が聞かれたことはうれしいし、今後実現できたらいい」と話した。