「モテるオヤジ」を標榜する新しいミドルアッパー向け男性誌として2001年9月に創刊した「レオン(LEON)」。特集ごとにばらつきはあるが、最近は毎月9万部余りを印刷し、実売は5万7000部程度となっている。30~50代の高所得者のためのクオリティ・ライフスタイル誌として、ブランドファッション、機械式腕時計、そして最近では車など、ライフシーンを描きながらファッションを提供し、モノが動く雑誌としての存在感を発揮している。
WWDジャパン(以下、WWD):創刊から13年。「レオン」のキーワードとコンセプトはどう変わった?
前田陽一郎・編集長(以下、前田):「必要なのはお金じゃなくてセンスです」をキーワードに、人生をよりアクティブに楽しみたい30代後半~40代後半をコアターゲットにしたメンズライフスタイル誌、というコンセプトは変わっていません。ただ、初期には「大人のラグジュアリーライフスタイル実用誌」というコピーが入っていました。ファッションのためのファッションという側面が強くなった時期もありましたが、今、改めて、ライフスタイルのためファッションがあるという原点回帰をします。この服があることでその瞬間や人生が楽しくなる。そんな組立ての中で、食、車、時計、ジュエリー、メガネなどと一緒に服・ファッションを打ち出していきます。
WWD:雑誌の方向性を示す中で、象徴的な特集は?
前田:3年前から始めたホテル特集や、年2回行う車特集ですね。服を売るためのフィールドを用意するため、車やバイクなどのギアを紹介しつつ、それを楽しむ装いを提案しています。特に2013年1月24日発売号の車特集「モテるオヤジはクルマで愛を語る」は、僕が「レオン」に携わった過去8年でトップ10に入るほど好評でほぼ完売しました。この特集の反響から勝ちパターン・売れパターンに乗っているだけでは次の時代や読者ニーズを見落としてしまうことを学びました。小さくジャブのように特集を打ち、チャンスを探っていくつもりです。創刊から06年の9月発売までの5年間は、いわゆる“ちょい不良(ワル)”ブームだったと捉えています。実売部数のピークを迎えたのもこの頃です。この当時の「レオン」は、良い意味でも悪い意味でもあまりに個性が強すぎて、このままだと一過性のブームで終わってしまう危険を孕んでいたのは事実ですね。なので08年3月発売号以降は、部数のゆるやかな上昇傾向を作る施策に終始しました。結果、08年下半期以降、半期ごとに平均実売数の対前年比はクリアできたのですが、13年以降は旧来のパターンではない展開が必要だと思っていたんですね。そんな折での車特集のブレイクは、以降の戦略に大きく影響しています。
WWD:若者を中心に車離れが叫ばれているが。
前田:時代の空気感がネガティブ過ぎたんです。でも実は高級車は売れていたし、車好きな人は車をとても大切にするし、車ライフを楽しんでいます。だから「車社会、車文化をレオンが支えます!」という気概で特集を打ったんです。もちろん、広告予算が家電と並び国内トップクラスだという点にも注目しましたが。
WWD:安定成長戦略から舵を切ったというが。
前田:昨秋頃から、次の5年、10年を見越して「他誌でやらないけれども、マーケットに存在する言葉やネタに着目して、存在感を示そう、次の釣り堀を探そう」と、失敗してもいいから挑戦的な特集を作るように方針を変えました。将来に向けた検証が必要だからです。ホテル特集の好評も契機の一つです。11年3月の東日本大震災後、危機的状況に落ち込んだ都内の高級ホテルなどはレストラン事業をきっかけに半年で前年レベルまで回復したと聞いたんです。「宿泊の場」だけでなく、「遊びの場」としてのホテルのポテンシャルに魅力を感じました。広告宣伝費は潤沢な業界ではないけれど、場としての存在感に目を付けたわけです。ポテンシャルを信じることも重要です。08年6月発売号以来、第一特集から外していた腕時計にも再び注目し、仮に実売が取れなくても第一特集としてやるべきだと考え、今年の6月24日売り号でリベンジします。ファッションのイノベーションが何年も起こっていない中で、時計、ジュエリー、車などへの消費期待度は高まっています。7月24日売り号でも車とバイクを第一特集に持ってきます。攻めながらマーケットの有無を探り、検証し、あるならばそこを取っていく。極めてシンプルに考えます。
WWD:派生媒体の戦略は?
前田:実験の場と捉えています。「スナップレオン」は08年7月発売号でスナップを第一特集にしたところあまりにも売れて(笑)。09年12月発売号でも同じ現象が起きたので、単独のスナップ誌としました。究極にシンプルにして、後続が出てきた時に「スナップレオン」が本家本元だと思われるような作りにしました。何事も「我々が仕掛けた」と思われることが、「売れてるよね」「時代を創っているよね」と言われるのと同じくらい大切。それが信頼につながると思っています。
WWD:6月2日に発行する「カラダレオン」に対する待望論が弊紙編集部でも湧き上がっているが(笑)。
前田:雑誌は唯一残されたペイメディアです。新聞もケーブルテレビもほぼ自動的に届けられるから、読んだら捨てられるし、つけっぱなし・流しっぱなしにもできます。でも、雑誌はわざわざ書店に行って手に取り、お金を払って手に入れるものなので、隅から隅まで読まれるし、結果も求められる。対価を取り返すための行為として、新たな消費を生む貴重な存在だと思っています。「カラダレオン」でも、病院、クリニック、ジム、メディカル情報など、信頼のできる情報を提供していきたいと思っています。反応を見て、定期刊行を目指していきます。
WWD:デジタル化や通販、イベントの事業化は?
前田:ポップアップストアなのか、ウェブなのか、新たな業態を探ります。「レオンの世界が買える店」が表参道や神宮前あたりでできたら。インターネットメディアは重きを置かずに来ました。ガジェットは変化のスピードが速すぎるし、投資回収のビジネスモデルが見えませんでした。そこに手を付けるよりも、レオンの可能性を広げるために、ジャブを打ち続けます。
我が編集部の自慢は?
服、車、時計、アート……日本一購買する編集部!
昨年の雑誌特集で「一番オシャレな編集部」と評価していただきましたが、たくさん買い物もしており、ファッション、アート、車など多岐にわたります。毎号、編集部員やモデルのジローラモが購入アイテムを披露していますが、この1年(13年6月号〜14年6月号)の総額は873万2229円に!ダントツのトップだと思います。自分も車やバイク、時計などウン千万円相当の消費に貢献しました(笑)。