ファッション

2019年「LVMHプライズ」は、南アフリカ出身の26歳に栄冠! 「アンリアレイジ」は惜しくも受賞ならず

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は4日、2019年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」の最終審査をパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)で行った。

 過去最高となる100カ国以上1700人を超える応募者の中からグランプリの栄冠を勝ち取ったのは、南アフリカのヨハネスブルグを拠点にウィメンズウエアを手掛ける「テベ・マググ(THEBE MAGUGU)」のテベ・マググだ。彼は1993年南アフリカ生まれの26歳。キンバリーという小さな町で生まれ育った後、ヨハネスブルグにあるファッッションスクールLISOFで、ファッションデザイン、フォトグラフィー、メディアを学んだ。卒業後から2年間経験を積んだ後、2017年に自身のブランドを設立。南アフリカ製の素材や現地の生産背景を生かし、アフリカの伝統をモダンに解釈したウエアを手掛ける。それぞれのアイテムにはタグが埋め込まれ、専用のアプリを使うと、その背景にあるストーリーや情報を知ることができるようになっている。

 アフリカからの初の受賞デザイナーとなったマググは、賞金として30万ユーロ(約3480万円)を受け取った他、LVMHグループのエキスパートによる1年にわたるメンターシップ(指導)を受けられる機会を獲得。ステージでトロフィーを手渡され、「選考の過程を通して、多くの刺激を受けた。LVMHには本当に感謝しています」と語った。

 また、創設当初から審査員として参加していた故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の功績を称えて「カール・ラガーフェルド賞」と改称された特別賞は、イスラエル・テルアビブを拠点に自身の名を冠したブランドを手掛けるヘド・メイナー(Hed Mayner)が受賞。賞金15万ユーロ(約1740万円)に加えて、グランプリ同様、LVMHのエキスパートによる1年間の指導を受ける機会を手にした。メイナーは、1986年イスラエル生まれの32歳。エルサレムのベツァルエル美術デザイン学院とパリのIFMでファッションを学んだ後、2015年に自身のブランドを立ち上げた。メンズウエアのベーシックアイテムをベースに、シルエットや構造を再解釈したユニセックスなアイテムを提案。18年春夏シーズンからは、パリ・メンズ・ファッション・ウイークでコレクションを発表している。

 今回初めて審査員を務めたクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)「ベルルッティ(BERLUTI)」クリエイティブ・ディレクターは、「このような形で自身のクリエイションを発表できるプラットフォームがあるのは、若手デザイナーにとって素晴らしい機会だ。ある意味、今回のファイナリストは皆が勝者だと思う。エモーションとストーリーテリングという観点から、正しいと感じる受賞者を選んだ」とコメント。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)「ロエベ(LOEWE)」クリエイティブ・ディレクターも、「受賞者だけでなく、“私たちが開かれた世界で暮らし、サステイナビリティーや多様性について考えることが必要だ”という一体感のあるメッセージに感銘を受けた。それは本当に素晴らしいことで、変な言い方かもしれないが、受賞が全てではないと考えている。ファイナリストは皆、誇りに思うべきだ。今日は、グランプリを決めないといけない立場にいることが辛かったよ(笑)」と話し、僅差だったことを匂わせた。

 「LVMHプライズ」は13年11月、若手ファッションデザイナーの育成・支援を掲げ、デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントが中心となりスタートした。応募資格は、40歳未満で少なくとも2つのコレクションを製作していること。最終選考の審査員には、アンダーソン、ヴァン・アッシュ、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)といったLVMHグループのブランドを率いる現役のトップデザイナーたちに加え、前出のアルノー=エグゼクティブ・バイス・プレジデント、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOのアドバイザーも務めるジャン・ポール・クラヴリー(Jean-Paul Claverie)LVMH社会貢献活動部門責任者、シドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEOが名を連ねる。

 第6回となる今回のファイナリストには、日本からは「アンリアレイジ」の森永邦彦デザイナーが選出されていたが、惜しくも受賞には至らなかった。また、「べサニー ウィリアムズ(BETHANY WILLIAMS)」のベサニー・ウィリアムズや「ボーディ(BODE)」のエミリー・アダムス・ボーディ(Emily Adams Bode)、「フィップス(PHIPPS)」のスペンサー・フィップス(Spencer Phipps)といったサステイナブルなクリエイションを手掛けるブランドが多く残るなど、時代の流れを反映したラインアップが特徴だった。

 これまでグランプリを受賞したのは、「トーマス テイト(THOMAS TAIT)」の「トーマス・テイト(Thomas Tait)、「マーケス・アルメイダ(MARQUES' ALMEIDA)」のマルタ・マーケス(Marta Marques)とパウロ・アルメイダ(Paulo Almeida)、「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」のグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)、「マリーン・セル(MARINE SERRE)」のマリーン・セル、「ダブレット(DOUBLET)」の井野将之。加えて、「ジャックムス(JACQUEMUS)」のサイモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)、「コウザブロウ(KOZABURO)」の赤坂公三郎、「ロク(ROKH)」のロク・ファン(Rokh Hwang)らが特別賞に選ばれてきた。その中には着実にステップアップしているデザイナーも多く、同プライズの注目度は年々高まっている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

27メディアが登場、これが私たち自慢の“ナンバーワン”【WWDJAPAN BEAUTY付録:化粧品専門店サバイバル最前線】

11月25日発売号は、毎年恒例のメディア特集です。今年のテーマは "ナンバーワン"。出版社や新興メディアは昨今、ウェブサイトやSNSでスピーディーな情報発信をしたり、フェスやアワードなどのイベントを実施したり、自社クリエイティブやIPを用いてソリューション事業を行ったりなど、事業を多角化しています。そのような状況だからこそ、「この分野ならナンバーワン!」と言えるような核を持てているかが重要です。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。