ファッション

質の高いヴィジュアルと知的なコンテンツで躍進中 石橋俊澄/「クレア」編集長

 1989年に創刊し、2月に大々的なリニューアルを行った「クレア(CREA)」が好評だ。特集を軸にOLのライフスタイルに密着した女性誌として旅や文化的なトピックスにフォーカスしてきたが、リニューアル後は、ファッションやビューティを積極的に盛り込み、業界トップクラスのクリエイターを起用したクオリティの高い誌面でインパクトを放っている。「知的に遊ぶ大人の女性のための雑誌」として新たな一歩を踏み出した「クレア」の魅力に迫る。

WWDジャパン(以下、WWD):リニューアルした意図は?

石橋俊澄・編集長(以下、石橋):創刊から25年を迎える「クレア」のコア読者の年齢層は、以前は20代が中心でしたが、30代半ばへと上がってきています。「クレア」読者はキャリアのある女性が多く、良いものを身につけたいと思う感度の高い人たちです。ヴィジュアルを練磨し、より差別化されたコンテンツにすることで、実際の読者に誌面を近づけたいと思いました。また、女性の二大関心事であるファッションとビューティを進化させました。

WWD:「知的に遊ぶ大人の女性のための雑誌」というコンセプトをどのように誌面に落とし込んでいるか?

石橋:まずは特集のテーマや切り口が大事で、バラエティに富んだ執筆陣に登場してもらったり、小説の連載を盛り込んだりして表現しています。また、巻頭で展開しているファッションぺージでも、大人っぽくて優雅な世界をクオリティの高いヴィジュアルで提案。「クレア」が時間をかけて築き上げてきた、“上質な立ち位置”に重点を置いて誌面作りをしています。

WWD:ファッションはさらに強化する予定か?

石橋:日本には、特集記事が面白くて、同時にファッションとビューティのページのクオリティが高い女性誌は存在していないと感じています。だからこそ、ほかにない雑誌を作りたいと思い、特集を軸に置きつつ、積極的にファッションを盛り込んでいくことにしました。ファッションページはある意味、“雑誌の格”を決めるものだと思っています。ラグジュアリー・ブランドのカタログや海外のハイレベルなファッション誌のように、グローバルな視点で制作し、国内最高のクリエイションが反映されたページになるように心掛けています。ありがたいことに、フォトグラファーやスタイリスト、ヘア&メイクアップアーティストなどのトップクリエイターたちが、こぞってファッションとビューティページの制作に参加してくれています。というのも、「クレア」の場合、彼らとディスカッションしながらクリエイトできる環境を提供しているからです。聞くところによると、クリエイターたちの間で“「クレア」が何か面白いことになっているぞ”と注目を浴びているのは嬉しいことです。現に、2号、3号と号を追うごとに読者をはじめ、クリエイターやブランドなど、「クレア」に携わる人たちの心を掴み始めています。今後は、ほかの女性誌にはないストーリーや切り口を考えながら、「クレア」ならではのブランドを掘り下げたページ作りもしていきたいと思っています。また、「クレア・トラベラー」を担当していた時代に培った世界中のネットワークがあるので、海外ロケや取材も視野に入れ、9月号や10月号はイタリアでロケを行い、ファッションにフォーカスする予定です。

WWD:編集長に就任して以来、誌面作りにおいて一番注力していることは?

石橋:ファッション、ビューティ、特集、連載、その4つに通底する知的で上質な大人の世界の構築を目指していきます。さらに、アートディレクターとタッグを組んで、その世界に磨きをかけて、独自のポジションで高品位のものを創り出すことに注力していきます。まだ十分ではありませんが、文藝春秋が持つ“スクープ力”や“文芸”を発揮できる誌面も作りたいと思っています。

WWD:読者のライフスタイルのイメージは?

石橋:「高価だから良い」という単純な価値観ではなく、価格に関係なく「本当に自分に合うもの」を賢く上手に取り入れているのでは。「クレア」の読者にはスタイルがあり、ファッションであれば、コーディネートの基本はすでに身についていて、流行の最先端を行くものやクラシックな定番にも関心があり、本当に自分に合うものを取り入れています。そんな女性たちのイマジネーションを刺激し、夢を与えるようなページ作りをするべきだと考えています。また、「クレア」の読者はファッションはもちろんのこと、ビューティやカルチャーにも同じように興味と好奇心がある。彼女たちは、仕事を持ち、自由に使える時間とお金があるから余を持って豊かな選択ができるのではないでしょうか。

WWD:リニューアル後、読者から反響の大きかった企画や特集は?

石橋:リニューアル1号目の「秘密のパリ」は、企画・ヴィジュアルともに“うっとり”するほど素晴らしいと好評でした。そのため、ファッションとビューティのブランドに多くのファンができました。2号目の「私はこの顔で生きていく」は、特にブランドから絶賛され、3号目の「楽しいガクモン」も「このような特集を女性誌で読みたかった」という声が多く、確かな手応えを感じています。リニューアル後の刷り部数は平均8万部強をキープしていて、特集とファッションとビューティのそれぞれに関心がある読者からの支持率が高いです。旅に関しては、もともと強い分野なので中身の濃い特集を組んだり、別冊などを作りたいと考えています。

WWD:読者年齢が軒並み上がってきている中で、20代をはじめとする若い層との取り組みをどのように考えているか?

石橋:知的な好奇心は20代というよりは、中高生の10代から萌芽があるはず。コアの読者層はもちろんですが、10代から70代までの女性が読むに堪えうる雑誌を作っているつもりです。“オマセ”な若い人には背伸びして「クレア」を読んでほしいですね。

WWD:ウェブ、モバイル、eコマースの取り組み状況は?

石橋:ウェブには誌面のリニューアルよりも前から注力していましたが、今回のリニューアルと同時にデザインを刷新しました。eコマースは取り組みを始めてから10年以上が経ちますが、好調に推移しています。今後は、誌面だけでなく、ウェブ上でのムービーなどを連動させたタイアップなども提案していきたいと思っています。

我が編集部の自慢は?
校了日には編集長がポケットマネーでごちそう

「クレア」の編集部では、校了日には石橋編集長自ら各スタッフに「食べたいものは何」と“おうかがい”を立て、スタッフ2~3人を引き連れて買い出しに行きます。もちろん費用は石橋編集長持ち。

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