ファッション

創刊60周年で原点回帰!リアリティを追求し、顧客を拡大 戸賀敬城/「メンズクラブ」編集長

 「メンズクラブ」は、“コストパフォーマンス”と“使えるラグジュアリー”をキーワードに、30~40代男性に向けてリアルなファッションとライフスタイルを発信している。1954年、「婦人画報」の別冊として産声を上げた同誌は今年9月に60周年を迎える。戸賀敬城・編集長は、改めてリアリティに根差した誌面作りと、全国各地を網羅した顧客向けイベントを強化しながら、6月にはウェブサイトの「メンズクラブ・オンライン」をリニューアルする。

WWDジャパン(以下、WWD):創刊60周年を迎え、目指す誌面作りとは?

戸賀敬城・編集長(以下、戸賀):「メンズクラブ」のターゲットは35~36歳で平均年収800万円台の男性です。彼らに刺さるリアリティある商品、コーディネート、ライフスタイルを見せられる誌面を作りたいと思っています。今、読者から求められているのは、コストパフォーマンス。“リアリティがある”とは、例えば読者が買える価格帯の商品であるか、その価格に見合ったクオリティがあるか、そしてそれが実際に日常で使えるかどうかということです。たとえトレンドど真ん中のファッションであっても、トレンドの周期が長いものか短いものか、本当にその価格がリアルか、スタイリストやライターと密に話し合って決めています。また、誌面ではあえて外国人モデルの露出を減らし、代わりにセレクトショップやブランドのプレスの方々に登場していただくページを増やしています。これも、等身大の着こなしでリアリティを伝えるためです。ちなみに、僕が誌面に出る機会も減らしています。ターゲットの読者層より年齢が上の僕が出ても説得力がないし、リアリティがないので(苦笑)。創刊当時から、男性のファッションをただそのまま海外から輸入するのではなく、日本の社会性や肌の色などを考慮したうえで、日本人としての楽しみ方を伝えてきました。改めてこの原点に戻り、トレンドを“コスプレ”に見せず、リアルに着地させることに気をつけていきたいです。

WWD:反響が良かった特集は?

戸賀:スーツやジャケット特集はもちろんですが、ライフスタイル軸を強化してきたことが奏功し、車やゴルフ、お酒といった特集が軒並み好調です。これらの嗜好品はライフスタイルを豊かに広げますよね。顧客招待型のイベントも今後はライフスタイル型を増やし、11月には60人の顧客を対象にした有料参加型のゴルフ大会をハワイで企画しています。また、スナップ本も消化率が80%を超え、大当たりしています。編集長に就任して7年、苦しい時代もありましたが、現在の広告収入は就任当時から倍増しました。定期購読の数が多いことと、SNSを有効活用した顧客イベントが好評なことも強みにつながっています。

WWD:読者イベントも積極的に行っているが?

戸賀:雑誌は今まで、一方的に情報を伝えるだけで読者のことを大切にできていなかったと思うのです。雑誌を使った顧客ビジネスとしてイベントを強化し、編集部総動員で運営しています。編集者にとっても、読者の声を直接聞ける良い機会。リアルな声をつかみ、読者との距離を縮める誌面作りにも生かせています。弊誌の強みでもある名物企画の「日本全国スナップ」撮影会でも、編集部員が全国津々浦々のスナップ会場を飛び回っています。今時、スナップのキャプションを書くだけなら、編集部員でなくてもできると思いますが、その場の空気感と読者とのコミュニケーションを通して得られることを生かしたページでないと意味がありません。こまめに読者と顔を合わせたい。常連顧客と大勢でご飯に行くこともあるし、あだ名で呼び合えるほど仲の良い顧客もいます。こうした地道な努力の甲斐あって、ブランドからも「読者にリアリティが届く」媒体という信頼をいただいています。昨年開催した某ラグジュアリーブランドのショップイベントでは、1時間半という短い時間ながら記録的な売り上げを達成しました。ラグジュアリーの部門でもリアリティのある発信を続けてきたことで、読者の購買につながったのだと思います。イベントは、顧客に対してのロイヤリティだけでなく雑誌のマネタイズにも貢献しています。広告収入は、毎年前年比120%をキープできています。「トガブロ。」(戸賀編集長のブログ)を始めたことで、SNSを有効に生かせるようになり、顧客との関わり方の道筋を見つけられました。11月までほぼ毎週、多い月は週に2回はイベントスケジュールが埋まっていて大変なことも確かですが(笑)、もっと読者と接点を持ちたいし、積極的に巻き込んで交流したいという思いが強いですね。あとは9月26日から3日間、表参道の「インターセクト バイ レクサス 東京」で「メンズクラブ」主催のセレクトショップをオープンします。60周年のハイライトになるイベントの一つですね。

WWD:ウェブコンテンツの取り組みは?

戸賀:電子書籍のダウンロードは伸びています。そして6月に「メンズクラブ・オンライン」をリニューアルします。PV数も好調に推移し、現在の広告収入の1割を占めている重要なコンテンツです。「エスクァイア」「ロード&トラック」「ポピュラーメカニクス」などハーストグループのメンズコンテンツも取り込んだポータルサイトに生まれ変わります。年内における目標は、月間250万PV。メンズ誌オンラインにおけるナンバーワンを目指します。「メンズクラブ」が中心になりますが、「メンズクラブ・オンライン」という名称も変える予定です。「エスクァイア」に関しては、昨年に別冊として刊行しましたが、定期刊行化を目指すうえで、このポータルサイトも重要な位置付けです。読者のほとんどが30代で、これから20代をどう取り込むかと考えた時に、デジタルに可能性を感じています。以前は「そうはいっても紙が大切では」と思った時もありましたが、今はデジタルのパワーとインタラクティブな関係性の伸びしろの大きさを痛感しています。また、ありがたいことに、40代読者も全体の30%近くを占めているんです。いろいろな男性誌を通ってきた40代の方に、「買えるモノが載っている」雑誌として選んでいただいているのは嬉しいですね。リアリティとコストパフォーマンスを意識した誌面作りとイベント、そしてデジタルという3本の柱を強化することで読者のロイヤリティを高め、さらに成長していきたいと思います。

我が編集部の自慢は?
編集部員がゴルフと車に熱中!

ライフスタイル軸を強化している中で、編集部員の約半数がゴルフを楽しみ、車を所有しています。部員の平均年齢は、雑誌のターゲットである30代半ば。これも誌面のリアリティに反映されています。

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