アダストリアは、10月1日から販売する40代半ば~50代女性に向けた新ブランド「エルーラ(ELURA)」の詳細を発表した。「ニコアンド(NIKO AND…)」「スタディオ クリップ(STUDIO CLIP)」など、20~30代向けのカジュアルを主力とする同社にとって、大人女性向けのエレガントなブランド開発は初めて。今秋冬は自社ECサイト「ドットエスティ(.st)」と一部の「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」店舗などで販売し、2020年春以降、単独出店を目指す。ブランド開発にあたって参考にしたのは、化粧品だという。その意図とは?
新ブランドの現場を指揮するのは、「グローバルワーク」出身で、自身も40代後半という伊藤啓子マネジャー。「ファッションは、トレンドやきれい、かわいいといった要素で語られがちだが、新ブランドでは『大人女性の悩みに“効く”』という打ち出しをしていく」と伊藤マネジャー。化粧品の広告やパッケージが、「何々に効く、というのを非常に分かりやすく表現している」ことに着目し、ファッションでも同様なことができないかと考え、開発を進めたという。
立ち上げにあたり、40代以上の社内スタッフやスタイリスト、雑誌編集者からファッションにまつわる悩みを抽出。「下半身を中心とした体型の変化が気になる」「肌がくすんで見える」といった大人女性が抱える課題を解決するデザインを心掛けた。「素材が非常に重要になるが、上質な素材を使ったから高額になったというのでは、社会に出るタイミングでバブル崩壊を経験し、感覚が現実的なこの世代には響かない」として、アダストリアの持つ生産背景をフル活用。「デビューシーズンにも関わらず、オリジナル開発を含む上質な素材を、値ごろに提案できている」点が強みだ。
例えば、ブランドの顔として打ち出すパンツは、中心価格4900円。「社内の他ブランドに比べて価格は1マーク、2マーク高い」が、あくまでSC内で競争力が持てる価格だ。パンツは5サイズをそろえ、体型変化の悩みに対応する。また、コートの中心価格は1万2900円だが、スーパー110のウール糸を使った日本製素材の1万9900円のコートも投入するなど、「価格の幅は他ブランドより広く持ち、上質な商品を求める声にも対応する」。
店頭などに掲出するビジュアルは、「ボトルネックで小顔効果に期待できる」「腰高パターンによる脚長効果」など、分かりやすい文言を心掛けた。また、商品発表会には40~50代のインフルエンサーを招待し、商品への感想を集め、今後の商品開発に生かしていく。立ち上げ時から、このようにターゲット層からの意見を積極的に吸い上げて“共創”していくようなブランド作りは、同社にとっては今まであまりなかったという。
「対象とする団塊ジュニア世代は人口も多い。会社としても、40代以上の販売員などが長く働いていけるブランドをそろえ、環境を整えていく必要がある」と、北村嘉輝取締役営業統括本部長は開発の背景を話す。初年度売り上げ目標などは公開していないが、「出店立地は厳選する考えではあるが、もちろんアダストリアとして100億~200億円規模は狙っていきたい」。今秋冬、「エルーラ」の商品を投入する「グローバルワーク」の店舗はコレド日本橋など全国14店。基本的に面積660平方メートル以上の大型店だ。「都心、準郊外、郊外とさまざまな立地で、来春に向けて検証していく」考え。プロモーションを兼ねて、テレビ通販の「ショップチャンネル」でも販売する。
【エディターズ・チェック】
大人世代に向けたお悩み解決型ブランドはこれまでにも多数あったが、お悩み解決に焦点が寄り過ぎると、どんどん“おばちゃんっぽく”なってしまう。お悩み解決とスタイリッシュさをいかに両立させるかがポイントだが、そこで着目したのが化粧品だ。伊藤マネジャーは「40~50代女性のし好について、さまざまな分野・業界の情報に目を通したが、一番心を動かすのがうまいと感じたのが化粧品だった」と話す。服が売れないという嘆き節があちこちから聞かれるファッション業界に対し、ビューティ業界はここ数年絶好調。ビューティ業界の手法を研究した新ブランドは、好調の波に乗れるか?