こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。こちらの連載のアップは基本、月曜日の朝ですが、月曜日が祝日の週は火曜日朝に更新しています。という訳で今週もよろしくお願いします!
9月6日(金)
ウォーホルやバスキアも
彼女には自然体だった
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左の女性の大きな笑顔に引き込まれませんか?彼女の名前はペイジ・パウエル(Paige Powell)。写真家です。「グッチ(GUCCI)」がこのほど、ペイジの限定版写真集「PAIGE POWELL」を出版し、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で9月26日までインスタレーションを行っています。この日はペイジを迎えてのトークショーとブックサイン会でした。
写真家の都築響一さんたちとのトークショーで展開されたのは、1980年代のニューヨークでのアーティストたちとの思い出です。毎晩ディスコから朝帰り、みたいな生活を送っていたペイジから出てくる名前は、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やジャン・ミシェル・バスキア(Jean Michel-Basquiat)、キース・ヘリング(Keith Haring)などなど。彼女は一晩にいくつものディナーやパーティーを掛け持ちして彼らとの親交を深めたり、誰かと誰かをつないだりする中で写真を撮っていたそうです。携帯電話すらない時代に、ペイジは歩くSNSみたいな存在だったという訳です。
彼女と私は初対面ですが、“あれ?会ったことあったけ?”と勘違いするほど人懐っこい笑顔で迎えてくれました。被写体の表情が自然体なのはきっとペイジの相手の懐に飛び込む笑顔があるから。相手が有名人であっても友人関係が先にあり、その次にシャッターが押されていたのだと思います。それにしても80年代のニューヨークのナイトシーンってめちゃくちゃ刺激的だったんですね。
9月6日(金)
女が一人で飲める場所を見つけた
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ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)青山 ウィメンズストアのオープニングに駆け込みました。強調したいのはこのストアがバーを併設していること。しかも、女がひとりでふらっと立ち寄れる雰囲気です。とか言いながら写真を撮り忘れて申し訳ございません。
青山のど真ん中という点がいい。仕事終わり(もしくは合間)の一杯や、夜ご飯の待ち合わせ場所などに活用できそうです。もちろんバーだから対象は男女を問わず、です。阪急メンズ東京の3階に今夏オープンした「フランチャコルタ(FRANCIACORTA)」バーも当初の予想以上に女性で賑わっているそうで、洋服の近くにバーカウンター、ニーズがありそうです。
この店のキーワードは“ローカル”だと思います。ローカルというと、都心以外の場所をイメージしがちですが、港区南青山だってそこで長時間過ごす人にとってはローカル。仕事に行くだけの場所ではなく、青山で過ごすこと自体をもっと楽しもうじゃないか、という視点がよいと思います。朝8時からのオープニングイベントや、「紀ノ国屋」とコラボしたダブルネームのエコバッグなどが象徴的です。
店内に飾っていた花は南青山7丁目の「ル・ベスベ(Le Vesuve)」だそう。「ル・ベスベ」の店主だった故・高橋郁代さんは、コレクションマガジン「ファッションニュース」を愛読していて、その理由を尋ねると「旬なファッションの色使いはフラワーデザインの参考にもなるから」と教えてくれました。今の「ル・ベスベ」も高橋さんの感性を引き継いでいて、店内のファッションや壁のアートとリンクしながら店内を彩っています。
9月10日(火)
ミラノの癒しカフェ
「コヴァ」がやってきた
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ミラノコレクションで石畳を歩き回り、“もうダメだ、疲れた~”となった時に駆け込むのは街中にあふれるカフェですが、今日はリッチに行っちゃおう、という日はモンテナポレオーネの「コヴァ(COVA)」です。(以前は大聖堂ドゥオーモに駆け込み、静寂の中でしばし癒されていましたが、最近は観光客が増えすぎてドゥオーモには気軽に入れなくなりました)。
その「コヴァ」がギンザ シックスにオープンしました。まもなく開業する渋谷スクランブルスクエアにもオープンするそうです。なぜ出店が相次ぐの?どこが運営しているの?など疑問に思った方はぜひ記事へ。ちなみに、店の前でシャンパンを掲げる首脳陣の顔ぶれが、世界と日本における「コヴァ」ビジネスの背景を端的に示しています。こういう写真をしっかり押さえるのが「WWDジャパン」の仕事でございます。ハイ。香港ではすでに多店舗展開をしている「コヴァ」は、今後日本でも店舗が増えそうです。
レセプションには、J.フロント リテイリング関係者(写真2枚目)やイタリアとゆかりの深いブランド関係者などが来場していました。その中にイタリア料理の落合務シェフの姿もあり、落合シェフのレシピ本を愛用しているので、思い切ってご挨拶をしました。落合シェフのレシピ通りに作ったら美味しくできた!経験が何度かあるため少々興奮し、自己紹介の後、2言目に「ミートソースの肉は音が変わるまで触りません!」と自己アピール。肉を焼くときはやたらと触らず、耳を澄まして音の変化で焼き具合を察知せよ、がシェフの教えだからです。に、対して淡々と「はい、そうしてください」と返してくださったシェフ。ありがとうございます。教えを守ります。
9月11日(水)
「日本メガネ大賞」の審査会は
忖度なし
昨年から参加している「日本メガネ大賞」の審査会に出席しました。洋服の審査と違い、メガネは機能面もポイントになるので難しい……。数百点あるメガネを一つ残らず試して決めました。これだけの量のメガネを一気に見る機会はなく、結果メガネがほしくなりました(笑)。
審議は文字通り白熱。こういった審査会は業界と密接な分、メーカー側の事情が分かりすぎて忖度が発動されがちですが、“業界のためにもそういうことはやめよう”という空気があるのがこの審査会の良いところ。結果は10月8日にIOFT2019内で発表されるそうです。
9月12日(木)
ゴルチエは隠居せず
パワフルでした
デザイナーのジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のクリエイションの軌跡をたどる企画展が10月13日まで東京・代官山のカシヤマ ダイカンヤマ(KASHIYAMA DAIKANYAMA)で開催されており、インタビューをしました。プレタのビジネスを止めて今はオートクチュールに専念している67歳のゴルチエ氏ですが、富も名声も得て半隠居生活かと思いきやとんでもない、めちゃめちゃ活動的でした。そして、今のファッション業界の課題や夢、若い世代へのメッセージなどをノンストップで語ってくれました。
オンワード樫山とは2015年に契約が終了しています。その関係が今も蜜月な理由は、ゴルチエが若かった頃、資金が尽きてショー開催を諦めかけた時の救世主がオンワード樫山だったから、だそう。報恩謝徳の精神ですね。
「エルメス(HERMES)」のウィメンズウエアのデザイナーでもあったゴルチエ氏ですが、04年に見たそのデビューショーは“これぞパリ!シック!そしてフェティッシュ!”なショーであり、馬の蹄の音とともに脳裏に焼き付いています。加えてその時、招待状に入っていた本物の馬蹄を日本に持ち帰ろうとしたところ、パリのシャルル・ド・ゴール空港の手荷物検査でひっかかり詳しい説明を求められたことも記憶に刻まれています。「お前はなぜ馬蹄を持っているのか?」と尋ねられ「『エルメス』のショーに行ったからだ」と言ったらすんなり通してくれて「『エルメス』ってすごい」と思いました(笑)。
9月12日(木)
最新号「モードって何?特集」
校了と本日のおやつ
特集「モードって何?」が完成!「モードって何?」の問いかけに対して35人が言葉をくれました。協力いただいた皆様、ありがとうございました!表紙はこの問いに対する答えを言葉ではなくビジュアルで表現してもらいたいと思った写真家、スタイリスト、ヘアメイク、編集者、アートディレクターに丸っとお任せました。シンプルだけど難しいテーマだったと思いますが、結果、熱量を感じる表紙になったと思います!本日のおやつは「コヴァ」のオープニングのお土産。「コヴァ」にはおもたせにぴったりなスイーツもそろっていますよ。