LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が2018年4月から実施しているスタートアップ支援プログラム「ラ・メゾン・デ・スタートアップ(LA MAISON DES STARTUPS)」の第3弾がスタートし、1000件以上の応募の中から26社が選ばれた。
今回はオムニチャネルの物流ソリューション、顧客エンゲージメントや販売支援ソフトウエア、店舗での買い物体験を向上させるカスタマイズサービスなどを開発する企業が選ばれたが、中でもAI(人工知能)を使った高級ブランド品の鑑定サービスを提供する米エントルピー(ENTRUPY)に注目が集まった。LVMHは、同社をはじめプログラムに参加する企業同士が協業することで、ラグジュアリー業界を悩ませている“製品の真贋”にまつわる諸問題の解決策を見出したいとしている。
エントルピーの鑑定サービスの利用方法は簡単で、同社が開発した端末を品物の上に置き、連動する専用アプリの指示に従って品物の写真を撮ると、AIのアルゴリズムがそれを分析してすぐに鑑定結果をユーザーに送信する仕組みだ。例えば「シャネル(CHANEL)」のバッグであれば、500のデータポイントをマッピングして4秒で分析する。現在は「シャネル」のほかに、「エルメス(HERMES)」「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」など15のラグジュアリーブランドに対応しており、鑑定の精度は99.1%に上るという。
ヴィデュース・スリニヴァサン(Vidyuth Srinivasan)=エントルピー共同創業者兼最高経営責任者は、「今回のプログラムに選ばれたことで、ラグジュアリー業界や2次流通業界が直面している問題を理解しているほかのスタートアップ企業と協業する機会を得ることができ、とてもうれしく思っている」と語った。エントルピーは12年に創業。同社の鑑定サービスは、消費者保護に関連する政府機関や小売業者、ECプラットフォーム運営会社、2次流通業者などに採用されているという。
近年、ラグジュアリー製品のECや2次流通市場の隆盛とともに、模造品や盗品の流通、詐欺などの問題が増加している。17年には、米国だけでもおよそ3万5000点の荷物が米税関・国境警備局や同移民・関税執行局によって押収され、その15%がアパレルとアクセサリー類だった。