エイ・ネットのもとでの生産・販売を、国内では2019年春夏をもって終了していた「ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)」が、20年春夏から販売を再開する。津森千里自身のデザイン事務所ティー・シー(T.C、森山和之社長)がブランド運営を手掛け、国内では顧客向けの受注販売を実施。海外では、フランチャイズでオンリーショップを運営してきたロシア(3店)、香港(2店)で継続して販売。台湾のフランチャイズ店舗(1店)では、セレクト店の中でのコーナー販売という形で販売継続する。
9月28日まで、東京・南青山にあるティー・シーのオフィスで20年春夏の展示会を行っている。ブランド再開は、フランチャイズ先やファンの要望を受けて決めた。展示会には一部の地方店バイヤーなども招待しているが、メインとなるのは連絡先を把握している顧客約80人だ。個別で顧客を展示会に招待し、受注を取る。津森自身も展示会に立つ予定という。
エイ・ネットとの契約が終了したことで、百貨店インショップを中心とした国内の約20の直営店は8月末をもって全てクローズしている。直営店があった伊勢丹新宿本店4階、阪急うめだ本店6階などでは、クローズ前の駆け込み需要で、「19年春夏は『ツモリチサト』が非常に好調」といった声もあがっていた。顧客を招いての受注会は、直営店クローズに伴う苦肉の策ではある。ただし、「今はアパレル在庫の廃棄なども社会的に問題になっている。受注販売ならば、必要以上に商品を作って余らせることもない。自分たちが置かれた状況を逆手にとってポジティブにブランドを運営していく」と森山社長は話す。もともと、凝ったデザインの個性の強い服が持ち味のブランドだ。「受注販売の方が、そういった商品が作りやすい」という面もある。
将来的に自社ECももちろん検討しているが、まずはその前段階として顧客受注会という形をとった。「音楽も今はアプリで聞くのが主流の時代だが、ライブの方が喜ぶファンもいる。同様に、展示会で津森と話しながら購入することを楽しんでもらえれば」。
これまでは、素材も全てオリジナルで企画してきたが、20年春夏はオリジナル素材は一部に抑え、エイ・ネットの生産体制を離れても価格が上がらないように配慮した。価格はワンピースで3万~4万円台が中心。「中心価格は従来とそれほど変わっていないが、以前あった高価格の手の込んだ服は作っていない。ただ、香港の店舗などから凝った商品も必要といった声が出ており、今後検討していきたい」。