8月、東京・神宮前の明治通りを歩いていると、若い女性の行列に遭遇した。「またタピオカの新しい店が出来たのか?」といぶかしんでいると、列の先にはパルの複合型ショップ「ベースヤード トーキョー」。並んでいる女性もオシャレ上級者な感じの女性が多い。店員に聞き込むと、この日は東京・学芸大学のセレクトショップ、333(ベトナム語で「バーバーバー」)のポップアップショップのオープン日だという。女性たちのお目当ては、同ショップが買い付けるオシャレサンダルだった!
後日、学芸大学の333を訪ねると、約40平方メートルの店内にはベトナムを中心にタイ、ミャンマーの服のほか、ビンテージアクセサリーや食器類の買い付け商品が並ぶ。目当てのサンダル(3000円)は、アッパーにあしらわれた繊細な花柄のビーズ刺しゅうが目を引く。ベトナムの工場で職人がひとつひとつ手作業で刺しゅうを施しているため、全て一点物。それでいてプチプラなのがヒットの理由だ。同店の坂野高広オーナーバイヤーに聞けば、もともとは現地の女性が家庭で手作りし、おしゃれというよりも日常的に履いているサンダルだという。18年夏に実験的に買い付けたところ、インフルエンサーの目に止まって瞬く間にSNS上で拡散。今年の夏からは本格的に人気に火が付いて、入荷と同時に完売を繰り返すようになり、今春夏は店舗・卸で計4000足以上を販売した。
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気になるのは秋冬の新作サンダルだが、やはりあった!すでに販売中のベロアサンダル(3500円)は、上品なアッパーに刺しゅうをあしらった、オペラスリッポンのようなルックス。ローゲージニットにデニムのようなカジュアルスタイルを上品に仕上げてくれるだろうし、ワンピースやロングスカートに合わせてもエレガントなムードを加速させてくれそう。これも、ヒットの予感がプンプンする。
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サンダルの販売にあたり苦労したのが、品質管理だったという。坂野オーナーは「手作業で数を作るため、当初は作りが粗い物も多かった。生産工場には、『丁寧な仕事をしなければ日本の消費者には受け入れられない』と何度も伝え、一方でわれわれはしっかりと量を買い付けることで本気度を示し、信頼関係を作った」と振り返る。最近は類似品が市場に増えてきたが、「一朝一夕で真似できるビジネスではないし、だからこそ、われわれのやっていることにオンリーワンの価値が生まれるのだと思う」と自信をのぞかせる。
坂野オーナーは、「サンダルだけにフォーカスされてしまうのはウチの本懐ではない」とも。「本当に伝えたいのは、ベトナムの文化そのもの。かつてアメリカに戦争で勝った国としての矜持があり、ホーチミンは住む人の平均年齢も20代後半と、ハングリーさにあふれたタフでクールな街。伝統を受け継ぎながらも、新しくモダンな物作りをする彼らのプロダクトやストーリー、そしてこのストリートの空気感そのものを、この店から発信していくことができたら」と、ブームのその先を見据えている。