松本恵奈が2015年秋にスタートした「クラネ(CLANE)」が、順調に売り上げ規模を拡大している。「ルミネ新宿2の店舗をはじめ、直近の売上高は前年同期比20~30%増のペースで推移している。19年1月期の売上高は約12億円だった。20年1月期は14億円弱で着地する見込み」と田畑辰雄クラネデザイン取締役。現在、卸先は36社119店、直営店はルミネ新宿2の他、表参道ヒルズ、三越銀座の計3店を構える。12月には、伊勢丹新宿本店2階にも出店が決まっている。「23年1月期には直営店を計7店体制にし、売上高は30億円を目指す」。
コンテンポラリーな感覚のデザインと比較的買いやすい価格設定で、「エンフォルド(ENFOLD)」「ブレンヘイム(BLENHEIM)」などと共にママ層を含むアラサー世代の市場をけん引してきた。三越銀座店はまさにそういったブランドが並ぶ売り場に入っており、12月に出店する伊勢丹新宿本店も同様だという。他にも、名古屋や大阪などで、同様の並びでの出店要請がある。
好調要因の一つは、商品の見た目に対して割安に感じられる価格設定だ。強みのスカートで中心価格は2万6000~2万8000円、ワンピースは2万8000~3万6000円。「ブランドを立ち上げたころは、これくらいの価格帯でこういったクオリティーの商品を出すブランドは少なく、百貨店向けブランドと(ルミネなど)ファッションビル向けの中間といわれた。そのどちらに出店したいのかともよく聞かれたが、そういった業界内の区分けよりも、私自身が純粋に、この価格でこういった商品がほしいと思ったからこの形で始めただけ」と、社長も務める松本は話す。
中心価格は従来と変えていないが、ここ数シーズンは少しずつ高額な商品も増やしている。2020年春夏で出している、オリジナルのラメ入り素材のワンピースは5万8000円。ブランドのキーディテールとして押している、ヨークがフリルのようになったバックコンシャスなデザインの2ウェートレンチコートも5万8000円だ。伊勢丹新宿本店の店では、オリジナル素材も使った限定商品を毎月3~4型投入する考えといい、高感度な新客の獲得をめざす。
20年春夏物のテーマは“インサイド”。ルームウエアやインナーウエアを思わせる柔らかい色使いや、リラックスしたムードがポイント。これまではウエストをマークした着こなしが中心だったが、今季はロング丈のトップスとパンツのレイヤードなどで、より肩の力の抜けたシルエットを提案する。一方で、クリーンなジャケットのセットアップスタイルなどもそろえ、通勤などのシーンにも対応する。メンズも、ウィメンズと同じくミントグリーンなどの淡い色使いで、クリーンなベーシックウエアをそろえた。