繊維素材メーカーと繊維専門商社が統合した、業界では新しい形態の企業である帝人フロンティア。竹中哲嗣・社長は就任以来、糸からテキスタイル、縫製までのすべてを自社生産背景に持つ強みを生かした、新しい垂直統合型ビジネスの開発を掲げてきた。新規顧客の開拓も進みつつある中で、OEM(相手先ブランド生産)ビジネスも次のステージに入ろうとしている。
WWDジャパン(以下、WWD):2014年3月期を振り返ると?
竹中哲嗣・社長(以下、竹中):帝人フロンティアが中核会社になって構成している帝人の製品事業グループとしては売上高が2542億円(前年比107%)、営業利益が52億円(同110%)と増収増益だった。帝人フロンティア単体では取引量は伸長したが、OEMビジネスにおける環境の変化(急激な為替変動など)により収益面で苦戦し、増収減益となった。しかし、今期の為替は1ドル100円前後で安定的に推移しており、これをベースに商売を組み立てていくことができそうだ。
WWD:直近の商況は?
竹中:4月から6月、あるいは9月ぐらいまでは消費税増税の影響が出るかもしれないと懸念している。現在デリバリーを行なっている秋物については、ダウン関連の受注が落ち込んでいるが、ボトムスなど他アイテムの受注を増やすことでカバーしている。また繊維素材メーカーとしての素材背景を武器に新販路の開拓も進んでいる。
WWD:社長就任以来、“顧客起点による素材と製品の融合ビジネス”を掲げてきたが、その成果は?
竹中:素材販売チームをアパレルOEMチームと一緒にしたり、素材から製品まで一貫して開発・生産・販売する専門部署を作ったりと組織面で手を打ってきた。また社内横断プロジェクトを立ち上げ、目標が見える形にしたことで、特にリテイラー向けにおいて成果は着実に上がってきている。このビジネスを展開するためには、商品開発にかかる時間のうえでも、生産のリードタイムにおいても、取引先との厚い信頼関係が前提になる。そのため短期的な業績の上下があっても、既存顧客であるアパレルメーカーを始めとする取引先とパートナーシップを組み、ともに成長していくという考え方を変えるつもりはない。
竹中:数年前まではQR(クイック・レスポンス)に代表される機動力さえあれば取引先から評価されたが、現在はそれを下地に、素材から製品までの一貫企画や生産技術・品質管理の確立など、さらに立体的な仕組みが求められていると実感している。これらに対応していくには、自社工場を設立したり、拠点のコアとなる工場へのマジョリティ(過半)出資による自前の生産背景をベースに、新たな仕組みを構築していく必要がある。これは現在ミャンマーやベトナムといった重要拠点で検討を行なっている。また、スポーツ衣料や紳士服などの重衣料に関しては、有力なスポーツブランドや大手紳士服量販店との間でしっかりとしたビジネスモデルが確立できており、そこそこのビジネス背景を持っていると思う。ダウンジャケットや婦人フォーマルスーツについても同様に感じている。だが、カットソーは弱い。今後は生産背景から取引先との強固な関係まで、しっかりと構築したアイテムをどれだけ増やせるかが課題だ。
WWD:OEMビジネスを進化させる次の一手は?
竹中:これまでは何でも帝人フロンティアの中で仕事を遂行・完結させる自前主義が強かったが、これからはグループ企業や外部と連携を取る形を増やしながら、新しいビジネスモデルを構築していきたい。過去の一例を挙げると、大手紳士服量販店との取り引きでは、帝人フロンティアが持ち合わせていないデザインやパターンのノウハウや人材を有するグループ会社のフォークナーをビジネスモデルに組み入れることによって、大きなビジネスへと発展させることが出来た。これからは社員自身がビジネスの中で新たな機能や組織形態が必要だと考えたら、ゲリラ的にどんどん外へ飛び出して子会社を立ち上げ、帝人フロンティアと連携し、それぞれの顧客との取り組みを拡大・深化してほしい。
WWD:かなり積極的な経営姿勢だが、設備投資は?
竹中:今期の設備投資については、帝人製品事業グループ全体で前年比85%増やす計画だ。衣料分野においては、縫製関連の出資だけでなく、帝人南通やタイナムシリインターテックス(いずれもテキスタイル工場)の設備強化も図っていく。商社のビジネスは守りより攻め。“攻撃は最大の防御”じゃないけど止まったらダメ。今年度は積極的に投資・拡大していく。