さぁ、ミラノ・コレクションは2日目。昨日から一転、今日はなんだか肌寒く、秋の気配が漂っています。でも、コレクションは今日もアツい!!「どや!」ブランドから、インフルエンサー大集結の人気メゾン、そして、大胆な方向転換が心地よい若手まで、できるだけインプットするために、今日もミラノ市内を駆けずり回ってみましょ〜。
10:00 マックスマーラ
さて、本日最初の取材は、「マックスマーラ(MAX MARA)」。このブランドと言えば前回……、
記者がこんなレビューを書いちゃうほど「どや!」という勢いにあふれているワケですが、「どや!」感、まだまだ健在でございます。てかむしろ、強まってるのです(笑)。
前回同様、同じスタイルの色違いのモデルが隊列を組んでやって来るし、そもそも、スタイルがミリタリー。メイクはダークな黒リップ。すごく乱暴にいえば、多くのデザイナーが普通の女性の、何気ない日常を描くことで彼女たちに共感してもらおうと思っているなかで、「マックスマーラ」は女スパイを描きます。唯我独尊。自分たちに確固たる自信がなければ、こんなコトはできません(笑)。
でも、参考にした着想源の1つが、アメリカの連続ドラマ「キリング・イヴ」(冷酷な暗殺者と、優秀な捜査官の攻防戦を描いているそう)。かつては映画でしたが、イマドキのデザイナーはTVドラマ、特にNetflixで視聴できる連ドラなんかにインスピレーション源を得るのですが、その潮流にうまく乗っており「唯我独尊」なだけでもないのです。
フィナーレは、3人一組だった隊列が増殖。まるで戦隊、僕の世代で言うならゴレンジャーです。
10:50 ジル サンダー
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11:45 エンポリオ アルマーニ
「ジル サンダー(JIL SANDER)」の展示会の後は、「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」へ。チュールには優しいパステルカラー、合わせるのはシルバーのスパンコールやステッチがピカピカ光る流線型のコンパクトジャケット。スカイブルーにシルバーの組み合わせは、まさにテーマの「空」を連想する優しさと軽やかさ、そして壮大さです。
イヴニングのパートは、「空」が「夜空」に変身。ウエアはモノトーンに、その代わり装飾が一気に増えて、星が瞬く夜空そのものです。
それでは、ビーズがいっぱいのフリンジが揺れ、流れ星のように瞬くドレスの動画をスローでお楽しみください(笑)。
12:25 ヘルノ
歩いて「ヘルノ(HERNO)」の展示会へ。ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)で拝見したメンズ同様、モノグラムがレトロムードを醸し出すコートなどを拝見です。
メンズではアーバンモードな雰囲気に溢れている、高機能素材“ラミナーシリーズ”。ウィメンズは、淡いピンク色に彩られるなど、デザイン性が増して全然違う商品に仕上がっています。面白い!
13:05 フェンディ
さぁ、お隣の建物の「フェンディ(FENDI)」へ(笑)。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がいなくなって、最初の、ゼロから作り上げたコレクションです。シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)、頑張って!
と応援するつもりで拝見しましたが、シルヴィア、期待に見事応えたと思います。先に発表したメンズ同様ほっこりするガーデニングムードで、同じリーフモチーフもたくさん。キルティングで作るボリュームドレスは、なんだか“オフトゥンドレス”みたいで愛らしく(そのまま横たわったら、安眠できそうw)、シフォンにギンガムチェックをのせたミニワンピは「フェンディ」らしい、カールらしい意表を突いた素材選びと、遊び心たっぷりのモチーフ選び。がま口のショルダーバッグや、メッシュとレザーを組み合わせた“ペカン(メゾンが呼ぶストライプ柄のこと)”トート、日よけの大きな防止など、キッチュなアクセサリーも豊富です。なんの心配もいりません。
にしても、インフルエンサー、多数集結!会場は終始大混雑でした。
14:10 アンテプリマ
お次は「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」。ニットでリゾートです。マルチカラーのボーダーニットを何枚も用意してパネル上につなげたドレス、プリーツの中にコミカルな人物を描いたスカート、そして、涼しげなニットの開襟シャツ。ワイヤーバッグも大量放出‼︎でした。
15:00 プラダ
昨日の「プラダ(PRADA)」の展示会へ。
昨日、「『プラダ』のショーは、禅問答」と話しましたが、ショーを見ながらそれぞれがミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の心の内を考えるランウエイショーの、答え合わせの時間がやってまいりました。
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答えは、「複雑さに対する解毒剤」。アイテムを絞り、シンプリシティーに徹することで、ファッションではなく、スタイルとしての強さを表現したそうです。僕が考えた「プラダ」流の、こんまりの“ときめき”断捨離、まぁまぁいい線行ってたんじゃないでしょうか(笑)。
16:05 M ミッソーニ
「M ミッソーニ(M MISSONI)」からは、結構キツめなテンションで、「15:55からの“ライド”になるから、遅れないで」というメールをもらいました。“ライド(RIDE)”って、なんだろう?搭乗?乗車?まさか乗船??頭の中ではクエスチョンマークがクルクル回りつつ、イタリアだから時間通りには始まらないとわかりつつ、それでも、なんとなく小走りになりつつ(マジメだw)15:55にたどり着きますと、20人弱のゲストはすでにスタンバイ。しばらくすると、ピンクのおキャワなトラムがやってきました。ミラノでは今も大事な市民の足が、「M ミッソーニ」仕様になって、この日はミラノ市内を走っているんです。
クリエイティブ・ディレクターが一族の3代目マルゲリータ・ミッソーニ(Margherita Missoni)に変わった「M ミッソーニ」の2020年春夏プレゼンテーションは、このトラムに乗って25分間、市内を旅するプログラムです。席に座って発車を待っていると、カラフルニットの男女がやってきました。彼女たちが、今回のモデルです。
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ローゲージのロゴニットから、ハイゲージのフレアパンツ、スプレープリントのGジャンまで、「ミッソーニ」もカラフルですが、「M ミッソーニ」はもっと大胆。さまざまなモデルが集まっている様子もカラフル。ブランドらしいプレゼンテーションでした。
17:05 ファビアナ フィリッピ
糸を紡ぐところからクリエイションをスタートする「ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)」は、砂、水、そして緑などの自然をイメージしたコレクション。トレンチコートもギャバジンのようにハリのある素材感ではなく滑らか。ニットで提供する極上の着心地を妨げません。
17:50 シモーナ マルツィアーリ
イタリアの若手コンテスト「Who’s on Next?」で今年グランプリに輝いた「シモーナ マルツィアーリ(SIMONA MARZIALI)」のコレクションは、うれしい発見でした。レトロなテニススタイルを描いたニットの主軸のコレクションは、若手らしいスポーティーとストリートでイタリアのクラフツマンシップを若々しく表現します。
ミラノって、本当に新人ブランドには冷たい街なんです。パリは、若手のコレクションに比較的多くの業界人が集まって「まずはチェック」という姿勢を感じることができるのですが、ミラノは全然違う。「まずはチェック」なんて心意気があまりないので、新人のランウエイショーは時に可哀想なくらいガラガラな時もあるんです。でも「シモーナ マルツィアーリ」のショーは、初登場ながら結構大勢で賑わいました。現地の期待も、大きいです。
18:55 ボッテガ・ヴェネタ
さぁ、本日の最後は、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」。32歳の若手ダニエル・リー(Daniel Lee)を大抜擢したブランドが、彼にとって2回目のコレクションを発表です。
このレビューの通り、前回のコレクションは写真や動画で見る限り、ダニエルの“思い切り”、つまりブランドにとっては突然の大変身に“ついていける人・ついていけない人”がパッキリわかれそうなコレクションでした。正直、僕は後者だったのですが、その後店頭に並び始めた若々しいバッグ、何より今シーズンの広告ビジュアルを見て、「なんか、新しくていいかも」と思い始めた中でのランウエイショー。その期待は、間違っていなかったみたいです。
コレクションは、前回同様、ちょっとした、いや時に結構な違和感を覚えるボリューム感です。しかも極端なオーバーサイズは、ストリートムードの沈静化により正直ダウントレンド。でも、ダニエルによる80年代風とも言えるセットアップ、ビッグシルエットのアノラック、それに対してボディコンシャスなミニドレスは、ディスクリート・ラグジュアリー(控えめなラグジュアリー)というアイデンティティを持つブランドらしい落ち着いたカラーパレットのせいか、それとも、装飾を極力排除してシンプリシティに徹したおかげで直接的・本能的になったせいか、新たなフォームに対する抵抗感がありません。むしろ、「新しいシルエットに挑戦するなら、『ボッテガ・ヴェネタ』かも」とさえ、思ってしまうくらい。独特のボリューム、徹底した非装飾主義、そしてボリュームアウターから連想する着心地と、ボディコンワンピの緊張感。どれも割り切ったくらい大胆で潔いので、「わかりやすい」んだと思うんです。
ということで僕も「わかりやすく」お話すれば、「新しいスタイルを見つけたいけれど、『グッチ(GUCCI)』や『バレンシアガ(BALENCIAGA)』は、“てんこ盛り”すぎて、難しいかもなぁ」と思う人は(実際、これらのメゾンにもシンプルなアイテムはあるのですが)、「ボッテガ・ヴェネタ」を新たな候補に選ぶかも。もしかしたら、“ポスト・フィービー”枠ではなく、“「グッチ」&「バレンシアガ」対抗枠”なのかも?と思ったのでした。
20:30 A|X アルマーニ エクスチェンジ
さぁ、本日最後は、なぜかバスケットボールコートへ(笑)!!「A|X アルマーニ エクスチェンジ(A|X ARMANI EXCHANGE)」がユニホームを提供するミラノのバスケットボールチーム、オリンピア・ミラノの試合観戦にやってまいりました。
イタリアと言えばサッカーですが、バスケもサッカーみたいに応援するんですね(笑)。
そして会場には、アルマーニさん!!アナタ、今朝は2回もランウエイショーを開いたのに、こんなに夜遅いバスケ観戦って、どれだけパワフルな80代ですか(驚)!?
アルマーニさんが会場を去るときは、バスケファンも彼に手を振っていました。この人はやっぱり、ファッション業界のみならず、イタリア中で愛されているんですね。