さぁ、ミラノ日記も今回で最終回。雨だし、寒いし、天気はグルーミーですが、心は元気いっぱいです。眠いけどね(笑)。
9:35 アラヌイ
本日最初の「アラヌイ(ALANUI)」は、先日ファーフェッチ(FARFETCH)が買収したニューガースグループ(NEW GUARDS GROUP)のブランド。つまり、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の妹分に当たる存在です。
とはいえコレクションは、ノット・ストリート。超贅沢にカシミアをたっぷり使った、カラフルなガウンカーディガンがアイコンです。今シーズンは、ジャングルなどに生息するシマウマやオウムなどをニットで描きました。2020年春夏のミラノ・コレクションは、みんなジャングルを旅してるなぁ(笑)。
オーストリッチの羽根をあしらったニットドレス、透けるほどハイゲージなニットで作るカーディガンやロングスカートなど、バリエーションを拡充しています。
11:05 ボス
「ボス(BOSS)」は、ニューヨークからの移籍組。ニューヨーク・コレクションの時から拝見していますが、ワントーンやワンカラー・コーディネイトに代表されるピュアな色使いに、ドイツらしい“質実剛健”感、言うなれば“ちゃんとしてる感”が程よく絡むブランドです。
今期も、まさに「ボス」らしい。ピュアホワイト、マリンブルー、レッド、キャメル、そしてブラック。次々変わるワンカラーコーディネイトは、シルクとジャージーをハイブリッドしたドレスや、ジャストフィットのジャケット&トレンチ、オーバーサイズ、特に背面がボリュームたっぷりのブルゾンなどを中心に組み立てます。「もうちょっと遊びがあっても良いかな?」。そんな気はしますが、真面目なドイツのブランドが、ご陽気なイタリアにやって来たから、そんな風に感じるのでしょう(笑)。
11:40 マルニ
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「マルニ(MARNI)」の展示会へ。ドレスに描かれたフラワープリントは、デザインチームによるフリーダムな手描きだそう。それらが一同に並ぶ会場は、とっても華やかでした。ここでは、バッグ&シューズ(サンダルかw)の写真を。メガサイズのバケツバッグ、中に荷物をいっぱい入れたら、誰も持てなくなっちゃうサイズ感です(笑)。
13:40 フィラ
韓国資本のスポーツブランド「フィラ(FILA)」のコレクションへ。海を舞台に、誰もが知ってるロゴ全開のスポーティーなコレクションです。ショーには、モデルのKokiも登場でした(黄色いベストのルックです。ご覧あれ)。
ミラノ・コレクションという舞台に挑戦するのだから、気合いが入るのはわかります。でも「フィラ」からブラックドレスって、どうなんでしょう?もちろん水着をベースにしたカジュアル&スポーティーな仕上がりで、シフォンにフリフリフリルなイタリアンドレスとは一線を画しています。でも、「ブラックドレスが欲しいなぁ。そうだ、『フィラ』見てみよう」なんて女性は、多分いない。必要ないと思うんです。
ルック数が多く、ランウエイは長い。なが〜いランウエイショーだったせいか、イブニングが続く後半は、会場のテンションが徐々に下降。再考が必要ですね。
14:25 ドルチェ&ガッバーナ
ジャングル、トレンド確定!!です。おめでとうございます。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」は、めっちゃジャングル。わかりやすくジャングル。疑いようのないジャングルでした。
コレクションは、サファリルックからスタートしましたが、あっという間に「ドルチェ&ガッバーナ」らしいセクシードレスが主役におどりでます。マンゴーやバナナ、スイカなどのフルーツ、オウムやレオパード、ゼブラなどのアニマル、そしてもちろん葉っぱのモチーフに彩られたドレスは、第二次世界大戦後に爆発的な繁栄の時を迎えたアメリカのピンナップガールのような雰囲気で、アップの髪と真紅のリップがレトロムードをかきたてます。
ベルトには、今季増えつつあるアイコンバッグのミニサイズ。「フェンディ(FENDI)」はピコ、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」からもナノサイズのバッグが登場しましたが、「ドルチェ&ガッバーナ」も負けず劣らずのミニサイズ。唇に塗った真紅のリップくらいしか入りそうにありません(笑)。
16:30 グッチ
さぁ、ミラノ・コレクションの実質最終日。オオトリは、このブランドです。「グッチ(GUCCI)」ですね。
会場は、あ、赤い(笑)。こりゃ、セレブ撮影も大変だ(笑)。真っ赤な空間で、ファッション業界一難解であることは間違いないプレスリリースを読みこむと、どうやら今回は「ルールへの反逆」とか「主体性の再定義」などがキーワードの様子。でもソレは、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が、この5年間ずっとやってきたこと。正直、「今回も、似たような感じかな?」なんて思っていたら、ランウエイとなったベルトコンベアが開き、真っ赤な空間のライトが変わり、ショーが始まりました。
「うわっ!全然違う!どうしよう(興奮)!!」。
これが、ファーストルックの率直な印象です。だって、コレですよ。ミケーレは、オールホワイトでゆとりあるのに、なんだか窮屈そうにも見えるルックについて「ユニフォームや実用的な服などは、時に自己表現を排除するために使われる」と説きます。でもコレだけを見たら、誰がミケーレ「グッチ」とリンクできるでしょうか?「ルールへの反逆」は、もしかすると「現在のミケーレによる、過去のミケーレへの反逆」なのか?真っ白の、オーバーサイズのシルエットながら拘束衣のように窮屈にも見えるルックはしばらく続きました。だんだんみんなが、「え、マジで今シーズンは、コレなの?」と困惑し始めているのが、手に取るようにわかる(笑)。みんなドキドキし始めると、舞台は暗転。今度は、いつものミケーレ「グッチ」が登場です。
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と思ったら、コレも違った!!2020年春夏の「グッチ」、スタイルと色はこれまでの「グッチ」ですが、刺しゅうやワッペンの装飾は皆無、柄さえいつもよりだいぶ控えめです。
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そして、ちょっとエロい。シフォンのプリーツドレスは、おっぱいがスケスケ(コレに関しては、イロイロ考えるところがあります)。なんだかハーネス見たいなレザー使いが多いし、何よりムチ……。これまで僕はミケーレの「グッチ」って、前任のフリーダ・ジャンニーニ(Firda Giannini)はもちろん、ブランドを再生し今の礎を築いたトム・フォード(Tom Ford)たちの“本能に訴えるエロス”とか、“イタリアに根強い古典的セクシー”を否定してきたと思っています。なのに今回は、セクシー押し。やはり「ルールへの反逆」は、「自分が築いてきたミケーレ『グッチ』へのドレスコードへの反逆」だったのです。そう考えると、装飾に頼らないクリエイションも素直に頷けますね。
“らしさ”を残しながらのシンプル回帰は、正直、大賛成です。ビジネス的に考えても、今回の「グッチ」はコンサバ気味な日本人に受け入れやすそうだし、おそらくミケーレの狙い通り、浸透しすぎたがゆえに記号化した「グッチ」のスタイルを新たなステージに導くでしょう。「派手なモチーフウエアを着とけばOK。ソレが『グッチ』でしょ?」みたいな一辺倒になりかけていた認識、スタイルを改めることは、プレスリリースが言う「主体性の再定義」なのだと思います。
セクシーも、おんなじですね。これまで否定してきた(ように思える)セクシーを認めることは、さらに「グッチ」というブランドの解釈、そして「グッチ」を着ることで表現する自分のスタイルをさらに自由なものにするでしょう。
ショーの後の記者会見でミケーレは、「同じことをするのに飽きてきた」と話しました。正直、そう感じ始めてきた人が少しずつ増えてきた中でさすがの嗅覚だし、とは言えいまだに一斉を風靡する自分のスタイルを大きく変える勇気もあっぱれです。
会見の中では、セクシーに対して、強い意志を持っていたことを明かしました。その中で面白かったエピソードを2つ紹介しましょう。
まず1つは、ムチ。女の子がほとんど持っていた、2020年春夏のキーアイテム(!?)です。これについてミケーレは、「『グッチ』と言えば、馬。 “ホースビット”(馬の口に含ませる“轡(くつわ)”から着想したアイコンモチーフ。ローファーなどに用いられています)など、馬に由来するアイテムは数多いが、どれも貴族的だった。でもムチは、セクシー。クラブに行く女の子とかが持ちそうで(笑)、貴族的じゃないところが気に入っている」と話します。「貴族的じゃない」は、ポイント。既存の階級社会を揺さぶってきたミケーレらしい考えです。
そしてもう一つは、“動く歩道”を使った高速ランウエイ。「グッチ」は発表するルックが100を超えるため、ランウエイショーは他ブランドの2倍強、25分とか30分かかることも珍しくないのですが、今回は20分弱だったかと思います。これについてミケーレは、「セックスの最中、興奮するオーガズムって、一瞬。だから、ファッションの世界における興奮の頂点であるべきランウエイショーもなるべく短くしたかった」と言います。
この人、やっぱりただ者じゃないです!!
20:30 グリーン・ファッション・アワード
ミラノ・コレクション最後の取材は、スカラ座で開かれたグリーン・ファッション・アワードの授賞式。19:00までに入場して、とあったの急いで着替え向かったら、スタートはまさかの20:30。会食がありましたので、早々に失礼しました。
スカラ座で写真撮ったからいいけどさぁ、押しすぎでしょ。イタリアは、やっぱりイタリアなのですね(笑)。