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一世を風靡した「フォーエバー21」はなぜ失速したのか?

 米国発ファストファッションブランドの「フォーエバー21(FOREVER21)」は、10月末で日本にある全14店舗と自社ECを閉鎖し、日本から撤退すると発表した。米本国でも経営の悪化が伝えられ、連邦破産法(チャプター11)の申請を検討していると報道されている最中だ。日本に先駆けて、今年4月末には中国市場から撤退し、実店舗はもちろん、アリババのファッションブランドサイト「Tモール(Tmall)」や「京東(JD.com)」などのオンラインストアも閉じており、日本にもXデーが近づいているとみられていた。

 フォーエバー21は1984年、韓国出身のドン・チャン氏とジンスク・チャン夫人が米ロサンゼルスで創業。当初の屋号は「ファッション21」だった。トレンドをいち早く見つけて取引先にディレクションし、企画・デザインと生産を任せ、仕上がってきたものをそのまま、あるいは修正を加えて買い取り、スピーディー、かつ手頃な価格で店頭販売することを繰り返し、ファストファッション型のビジネスモデルで成長を遂げた。その後、取り扱いのほとんどがオリジナルデザインに切り替わったが、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ザラ(ZARA)」のようなSPA(製造小売)型ではなく、しまむらに近いOEM(相手先ブランド生産)型のビジネスモデルが特徴だ。

 89年にショッピングモールへの出店を開始、95年にはカリフォルニアから全米へと店舗網を拡大。店舗数の増加に伴うスケールメリットの創出などにより、売上高が拡大。1号店としてロサンゼルスのフィゲロア通りに出した店舗はわずか25坪(約83平方メートル)だったが、事業拡大に伴い、平均で400~500坪(1320~1650平方メートル)、日本に上陸するころには1000~2000坪(3300~3960平方メートル)へと大型化した。取引先も2000社にまで増えていた。

 2003年度に181店舗・売上高3億1500万ドルだった業績は、09年度には280店舗・23億ドルにまで急拡大した。オーナ―夫妻は敬虔なクリスチャンで、出張時の渡航もエコノミークラスを使い、経営でも勤勉でローコストオペレーションを徹底。大量出店など派手さが目立ったが、当時は経常利益率が15%前後と高収益企業として知られていた。

 日本に1号店をオープンしたのはまさに急成長中の09年4月29日のこと。一足早い08年9月に日本に上陸してファストファッションブームを巻き起こしたH&Mの原宿店の隣に、530坪(1749平方メートル)で出店。開店当日には1200人が行列し、1日平均で約1万6000人を集客。開店2カ月で来店客数が100万人を突破、半年で300万人を達成し、社内記録を更新するなど、ファストファッションブームに拍車をかけた。

 圧巻だったのは、ちょうど1年後の10年4月29日、松坂屋銀座店に5層・930坪(3069平方メートル)のアジア旗艦店「XXI(エックスエックスアイ) at GINZA by FOREVER21」をオープンしたことだ。百貨店内に、しかも「グッチ(GUCCI)」跡にファストファッションの代名詞的ブランドがオープンしたとあって、かなりのセンセーションを巻き起こした(のちのギンザシックスへの建て替えが決定しており、3年間の期間限定出店だった)。この銀座店は、開店初日の入店客数が約4万1500人を記録したほどだ。

 H&Mよりも3割程度安い、数百円~3900円前後の洋服や雑貨を、米国の高級百貨店を思わせるような高級感のある内装や、チャーミングな動きやメイクを施したマネキンなどとともに見せることで“高見え”感も創出。LA系のセクシーカジュアルからプレッピーなアメカジ系、モード系、フェミニン系からビンテージ系までテイストも幅広く、シューズやアクセサリーまで幅広い商品がそろうことが魅力的だった。

 ただ徐々に「しまむら」や、和製ファストファッションの「GU」、さらには、「ウィゴー(WEGO)」やネットを中心に販売する低価格ファッションや韓国系ブランドなどに押されて、当初の勢いは失っていった。トレンド的にも、かつてのLAカジュアル系から、ベーシックが主流となるノームコアや、地厚なオーバーサイズのフォルムやストリートカジュアル系などへのシフトも、「フォーエバー21」離れを引き起こした。

 さらにダメージを与えたのが、昨今のサステイナビリティーへの意識の高まりだ。それまで主なターゲットだった若い世代のミレニアルズ達が、使い捨てを良しとせず、長く着られるアイテムや、「メルカリ(MERCARI)」や古着店などでの2次流通で高値で取引される品質力や換金性の高さを求めるようになったのだ。

 運営面にも問題があった。今の小売業には、リアル店舗とオンラインストアの融合による顧客エンゲージメントの向上や、ブランド体験の提供などが求められる。だが、フォーエバー21は日本に本社機能を置かず、合同会社フォーエバー21・ジャパン・リテールが米本国からのディレクションの下で、オペレーションを行う体制をとっていた。日本に合わせた品ぞろえや組織運営などを行うことができなかった。

 上陸から3年ほどは新宿や渋谷、大阪などにも大型旗艦店を出店するなど話題を呼んだが、勢いは徐々にスローダウンし、17年10月には原宿店を閉店。同時期にダイバーシティお台場やららぽーと船橋の店舗を閉店し、店舗整理を進めてきていた。実は2000年に婦人服専門店の三愛が「フォーエバー21」を日本に上陸させ、わずか2年で事業を閉じているのだが、今回で2度目の撤退になる。

 米国フォーエバー21社の売上高は、15年の売上高44億ドル(約4708億円)がピークで、直近では34億ドル(約3638億円)まで低下。負債は5億ドル(約535億円)といわれている。ECの台頭によるショッピングモールへの客数激減や、オムニチャネル施策の遅れなども背景にある。まずは米本国の立て直しが急務であり、日本での事業は当面考えられないだろうが、三度目の正直があるのか、これからも注視していきたいところだ。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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