オーダースーツのD2Cブランド「ファブリック トウキョウ(FABRIC TOKYO)」を運営するファブリック トウキョウは9月26日、新事業の戦略発表会を東京・渋谷で行った。同社の森雄一郎社長が登壇し、2020年に向けた取り組みや、D2Cビジネスと“SaaS(Software as a Serviceの略)”を組み合わせた新構想“RaaS(Retail as a Service、小売りのサービス化)”実現のための新事業を発表した。
20年に向けての取り組みは出店攻勢と海外展開の2つを発表。これまでに約3年半をかけて東京、関西、名古屋に16店舗を出店しているが、20年9月末までに全国の主要都市を中心に30店舗にまで増やす。海外展開に関しては「具体的な地域は未定」としながらも、すでに社内にチームを設け、ブランドと親和性の高い地域を調査しているという。
「海外展開と出店はまだ序章。D2Cのさらなる先へとわれわれは進化する」と語る森社長が掲げたのが“RaaS”構想だ。「小売りを単に“売る”のではなく、付加価値を付けたサービスへと変える」と同構想について説明する。そのための事業としてサブスクリプションサービス「ファブリック トウキョウ ハンドレット」のスタートと、同社がプロデュースしたスマートファクトリーの稼働開始、そして循環型の服作り“サーキュラーエコノミー”構想の3つを発表した。
26日からスタートしたサブスクリプションサービスは月額398円(税込)で、従来50日間だったオーダー品の保証期間(サイズが合わなかった際の作り直し可能期間)を100日間に延長するほか、サイズのお直しの無償提供とスラックス破損時の保証を実施する。10月以降はスーツの日々の着こなしやクリーニング・保管のサポートなどのサービスを順次実装する。スマートファクトリーは10月から稼働予定で、製造のIT化やデータの可視化、製造プロセスの消費者への見える化を行う。20年以降、このノウハウをほかの工場へB to B展開する計画もあるという。“サーキュラーエコノミー”構想は日本環境設計と提携し、消費者のいらなくなった服を用いた商品の製造を目指す。すでに全国の「ファブリック トウキョウ」店舗では来店者の服の回収を始めており、20年にはそれらを用いたポリエステル製の商品の販売や、すべての梱包資材を循環型にする予定。「2023年に完全サステイナブル化を目指す」と森社長は意気込む。
戦略発表会には5月にファブリック トウキョウに出資したことで話題となった丸井グループの青井浩社長も登壇した。青井社長は「これまでに5年ほどかけ、オンラインとの共存が可能で、経験やコミュニティーが提供できる“売らなくてもいい店舗”を作る体制を整えた。ちょうどそのタイミングで森社長にお声がけいただいき、出資を決めた」と説明する。「われわれは売り場や人の派遣、生産管理ノウハウの提供など、資本だけに限らずさまざまな面からサポートができると考えている。森社長が素晴らしいのは自身の会社だけでなく、D2Cビジネス全体を盛り上げていきたいと考えている点。D2Cのリーダーとして頑張って欲しい」と述べた。