ファッション

ロンドンコレ後半戦のダイジェスト 創業者のロマンチックな一面を描いた「バーバリー」、“宝物になる服”を追求した「ジェイ ダブリュー アンダーソン」など

 2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークは最終日、多くのブランドがスマッシュヒットを連発した。「バーバリー」「ジェイ ダブリュー アンダーソン」「クリストファー ケイン」の3ブランドをリポートする。

バーバリー(BURBERRY)

DESIGNER/リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)

 ティッシは就任から3シーズン目のランウエイで、新たな「バーバリー」像の一つの土台を完成させた。この1年間、ブランドアーカイブの研究を重ねたティッシは、創業者のトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)へ強い関心を持った。すでに彼のイニシャルである“TB”ロゴやモノグラムなどの新たなシグニチャーを生み出しているが、今季目に留めたのはトーマスが描いたというブランドを象徴する騎士のロゴだ。騎士が跨るのは馬ではなくユニコーン。「(ユニコーンを選んだトーマスは)大胆な革新者であると同時に、ロマンチストだったということが分かった」とティッシは話した。

 ブランドが創業したビクトリア朝(1830年代~1900年代前後)の繊細な刺しゅうをイメージしたフリルドレスや、アンティーク風のイラストを入れたスカーフなどをドッキングしたブラウスなどが登場。また、ユニコーンを思わせる長いフリンジを施したスカート、翼のようなフェザードレスや、背中にレースを合わせたTシャツなども披露した。

 代名詞のトレンチコートはクリスタル装飾を施してアップデート。またユニークな新アイテムとして、裾を折り返して丈を調整できるシャツや、キャップとハットの中間のような帽子などもそろった。カラーパレットは、ニュートラルでタイムレスなグレー、ベージュ、ブラック、ホワイト。淑女から紳士、少女、少年のさまざまな世代に愛される「バーバリー」らしいインクルージョンを“バーバリー キングダム”として表現。創業者に敬意を払いながら、アーカイブに新たな時代の価値観を加えてその先の未来を描いた。

ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)

DESIGNER/ジョナサン・アンダーソン

 「なぜファッションは重要なのか?なぜここまで人を真剣にさせるのか?」-大量生産・大量消費が繰り返される世の中で“サステイナブル”の言葉が切り離せない今、ジョナサンは「どうしたら、長く愛される服を生み出せるのか」を追求している。会場にディスプレーされたカナダ人のアーティスト、リズ・マゴー(Liz Magor)による作品は、古いぬいぐるみなど、かつては誰かに大事に扱われていたものをクリアボックスに入れたオブジェだった。それを見て「私もこういうものを持っていたことがある。今はどこに行ったのだろう?」と考えさせられるものだ。

 今季はマゴーの作品を通して、“誰かにとって宝物になるような洋服”を提案した。ファーストルックは、ギリシャ神話の女神のドレスようにドレープを効かせ、ジュエリー風のブラやネックレス、ベルトを合わせたワンピース。高貴を象徴するジュエリーをウエアに取り入れることで特別な一着へとグレードアップさせた。全体的に丸みを帯びたシルエットは「マリー・アントワネットのドレスように誇張をした後、空気を抜いたような形を探求した」とジョナサン。ウエストから裾にかけて緩やかなカーブを描くテーラードジャケットは、ウエスト部分に空洞ができる変形型。ワードローブに加えて、ベースボールキャップ型のショルダーバッグや、ロープとリボンを絡ませたエスパドリューのレースアップサンダルなど、外しに効かせたアクセサリーも面白い。

 ジョナサンによるアート作品に着想を得たコレクションは難解だが、見る人によって捉え方の異なる知的なアプローチだ。服のデザインについて「これは素敵」というシンプルな直感は重要だが、込められたメッセージを読み解くことが“ラグジュアリー”であり、服が人の心を豊かにするものだと気づかせてくれる。

クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)

DESIGNER/クリストファー・ケイン

 「風と愛し合い、星と眠り、花を感じる……(Make Love with the Wind, Sleep with the Stars, Feel the Flowers…)」- ロンドンで、自然愛をダイレクトに示したのが「クリストファー ケイン」だ。これまでも題材に掲げてきた花や植物、そして得意とするセクシュアリティーの表現を融合。「エコセクシュアル(the Ecosexual)」と題した今季は、ケインの自信がみなぎる力強いショーだった。

 ショー開始前にデジタルサイネージに映し出した草原の映像を、ファーストルックのコートとスカートのセットアップのプリントとして登場させた。花びら型のスカートのドレスや、胸元に深いスリットを入れたペイズリー柄のタフタドレスは、ただナチュラルな自然を出すのではなく、光沢感のあるタフタで仕立てたてたり、ネオンカラーをポイントに取り入れたりすることでフューチャリスティックな雰囲気を醸し出している。

 「クリストファー ケイン」が「グッチ」を擁するケリングから独立して早1年。ここ数シーズンの性のタブーに切り込むクリエイションは賛否両論だったが、今季は環境問題への意識をブランドらしくセンシュアルに描くことで新たな道を開いたようだ。今後も独自の世界観を失わずに、共感されるメッセージを組み込んで前進して欲しい。

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