2001年に経営統合し、百貨店の業界再編に先鞭をつけたそごう・西武は06年、セブン-イレブンやイトーヨーカドー(IY)を擁するセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入った。高度なロジスティクスや商品管理システム、マーケティング力を持った巨大流通グループの一員となり、オムニチャネルやスケールメリットなど、シナジー効果により、新たな収益構築確立にまい進している。「ロフト」や「ニッセン」「バーニーズ ニューヨーク」「フランフラン」など、グループが増えているのも朗報だ。
昨年3月、ファッション畑で、池袋西武の増床なきリニューアルの成功や、「リミテッドエディション」を核とした自主開発商品の拡充など変革の陣頭指揮を執ってきた松本隆・社長体制が始動した。「一番大事なのは、お客さまの立場に立ち、ニーズにどう対応するかだ。ファッション商品を買わなくなっているなどと言われているが、逆に興味は深まっていると感じている。むしろ、ファッション業界の対応力が弱まっているだけ。変化への対応を強くメッセージとして掲げ、顧客ニーズに応えるべく、すべてをデザインをしていきたい」と松本社長。
その答えが、オムニチャネルと自主企画商品だ。「スマートフォンが広がり、移動しながら調べものや買い物ができる時代になった。ここが大きな入口になる。オムニチャネルでダントツにナンバーワンのグループにいるし、素晴らしいトップ(鈴木敏文・代表取締役会長兼CEO)がいる。8年前にグループ入りした際には、自主開発商品作りを課題として与えられ、ピンとこなかった部分があったが、09年に「リミテッドエディション」をスタートし、オムニチャネル化を進める中で、なぜ必要なのかがよくわかった」。ネットでは問屋もメーカーも百貨店も、消費者から見れば横並びでモノを売ることになる。そんな中で、「独自性と競争優位性を高めるためには、自主企画商品を開発することが不可欠だった」。
さらに、「私は工場主義者。お客さまに適切な商品を適切な価格で提供するため、そして、メーカーや取引先に正しい意見を言うためには、工程や構造、問題点を理解しなければならない。それには自分たちが実際に作ってみることが一番だ」という持論もある。2009年にスタートした自主開発商品の売上高は13年度に730億円となり、今期は1000億円超えを目標に掲げるなど、順調に拡大している。
同時に、「商品の精度を高めるためには、マーケティング力の強化が必要不可欠だ」として着手したのが、単品管理である。JANコードでのSKU単位での商品管理はどこの小売業でも当たり前になっているが、そごう・西武では5年前から、専属スタッフが各社バラバラの属性コードを独自に翻訳・変換した“超単品データ管理”に挑戦。「3年前から稼働し、すでに2年分のデータを蓄積した。これがあれば売れ筋の傾向が一目瞭然だ。色や形、丈はもちろん、レースの使い方が全体なのか袖だけなのかなどもわかる。早い段階でメーカーに情報を開示して売れ筋を確保できる。逆に、お客さまに『スカイブルーのカーディガンが欲しい』言われれば、ブランドをまたいで紹介することも可能だ」という。このデータとモノ作りで得たノウハウを活用し、「説得力を持って強いNB(ナショナルブランド)と一緒にモノ作りをしていきたい。サッカーでもポジションがあるように、売り場作りでも役割分担を決め、個々を輝かせたい。データがあるので、モノ作りも完全買い取りもまったく怖くない」と力強い。