大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
今日のニュース:P.13「海外Beauty通信 ブランドの枠を超えて商品提案する「AI肌診断機」とは?」
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読み解きポイント:耳ざわりのよい診断精度に引きずられないこと。
<ニュースのポイント>
1回9.9元(約150円)の証明写真ボックス型の肌診断機が、上海市内のデパートや地下鉄駅構内などに、約20台設置されている。セフォラ(SEPHORA)、自然堂とも業務提携を結び、診断結果や具体的なアドバイスと関連商品の割引クーポンを合わせて、利用者の携帯端末へ通知。肌診断の確実性を高めるため、10万回以上の試験を実施し、正確度を97.25%に引き上げることにも成功した。
「肌診断の正確度:97.25%」。「診断の精度、相当高いなぁ!ん?でも本当なの?」と思うこと、多くありませんか。最近、「AI、精度99.9%」というようなニュースをよく見かけます。わかりやすい数字とメッセージなので、判断が引きずられることも多いです。とはいえ検知精度が高くても、診断や検証で導かれた答えが起こりうる可能性が低いこと、実は多々あるんです。
そこで今回は、99%というような耳ざわりのよい数字に「ホントかぁ!?」とツッコミを入れてみたいと思います。
「正確度97.25%」ということは、誤診率が2.75%。つまり「肌は健康なのに、不健康と診断される確率(偽陽性:false positive)」や「肌は不健康なのに健康と診断される確率(偽陰性:false negative)」が2.75% ということです。
例えば、不健康な肌の人が、人口の10%いるとした場合、AI肌診断機で「肌不健康」と診断された人が、本当に不健康である確率はどのくらいになるのか計算してみたいと思います。
「肌が不健康」と診断で発見される確率は、0.1(10%)×0.9725(97.25%)=0.09725
一方、「肌が健康なのに誤診で不健康」とされる確率は、0.9(90%)×0.0275(2.75%)=0.02475。よって、「肌が不健康」と診断された人が、本当に不健康である確率は、0.09725/(0.09725+0.02475)=0.79、約8割。「なるほど」という診断結果ですが、よく考えると「肌が不健康」と診断された5人のうち1人は、「肌が不健康でなく健康」ということになります。実際に、肌が不健康な人が世の中にどのくらい存在するのか分からなければ、診断機の正確度だけでは、結果の判断はできないということです。
ちなみに実際「肌が不健康」な人の割合が、人口の1%だった場合、診断機の正確度が97.25%だったとしても、「肌が不健康」と判断された人が、本当に「不健康」である確率は、たったの26.3%となります。
ところで、このAI肌診断機。化粧を落とさずバッチリメイクで撮影してもうまく診断してくれるのでしょうか。今は検診データを徹底的に集めてナレッジをためている状況で、今後はアプリ化して、家で化粧を落とした後、気兼ねなく正確な診断ができるサービスなどを狙っているのかもしれませんね。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中