「アウトドア市場は伸び続けてる」「特にキャンプはすごい」——そんな声を多く聞く今日このごろ。アウトドアにはなんとなく憧れがあるし、記者としても市場をしっかり取材したいという気持ちはあるものの、肝心のキャンプ経験はゼロ。アウトドアといえば、年に一度の弾丸日帰り「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)」のみという完全なインドア派のため、「キャンプって専門的で、なんかハードル高くないですか?」という固定観念が振り払えず、自分ごと化できずにいました。そんな時、10月5日に発売される「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO NEW BALANCE以下、TDS)」と「スノーピーク(SNOW PEAK)」のコラボアイテムが体験できるというイベントのお誘いが届きました。これは参加するしかない!と、重い腰を上げて新潟・中野原のスノーピーク本社兼キャンプ施設に行ってきました。
スノーピーク敷地の広大さにビックリ
東京駅から新幹線で2時間弱、その後バスに30分ほど揺られて現地に到着。いい場所だというウワサは聞いていましたが、想像以上に気持ちいい。目の前に広がる緑と青空がきれい!緑の中を走り出す人やキノコを発見して「おーー」と声をあげる人、トンボが近くにとまると「うおーー」と携帯電話のカメラを向ける人など、自然に触れるとささいなことでもみんな元気いっぱいです。「スノーピーク」の私有地はなんと約20万平方メートルという広さで、フェスも余裕で開けそうなぐらいの規模。しかも今後は面積を2倍に広げる予定だといい、数字だけでは伝わらないスケールに圧倒されました。キャンプフィールドは一般利用も可能で、ショップを併設してレンタルも行なっているので、手ぶらで行けます。
イベントは1泊2日の日程でキャンプをしながら自然と親しみ、商品も体験してもらおうという内容です。ニューバランス ジャパンの久保田伸一社長と「TDS」を率いる守谷周庫・東京デザインスタジオ クリエイティブ・デザイン・マネージャー、「スノーピーク」の山井梨沙副社長CDOらに加え、有力ショップのバイヤーやメディア関係者が約30人が参加しました。まずはテントを組み立てるところからスタート。出た、いきなりハードル高いやつ。でも「スノーピーク」のエントリーモデルであるテント“アメニティドームM”(3万6800円)は組み立ては容易で、テント設営未経験の参加者もスムーズに完成させていました。テントの中も快適そうで、キャンプについて想像していたハードな先入観とは明らかに違いました。
気になる商品のはき心地は?
テントを組み立て終えると、いよいよ今回の目玉であるコラボアイテムの体験です。スノーピーク本社の地下にあるミュージアムスペースを使い、久保田社長や山井副社長が映像や説明を交えてアイテムの機能やデザインについて解説してくれました。そして実際にシューズ“TDS × Snow Peak EXTREME SPEC R_C4 MID”(3万5000円)を試着します。アウトドアブーツのような見た目に反して、履き心地の軽やかさは完全にスニーカーそのもの。でも(これでアウトドア、本当にいけるの?)という思いが生じたのも正直なところ。ただ今回は説明を聞いた直後にハイキング体験ができたのがよかった。これまでいくつも体験イベントを取材してきましたが、ここまで機能について納得した例は多くはありません。優れたグリップ力があるため、急斜面でも草木が生い茂る道でも終始安定感がありました。僕のほかにもいたアウトドア初心者からも好評でした。
守谷マネージャーは「今回のアイテムは『スノーピーク』のギアとしても店に並べられるように、今まで以上に機能性を充実させるように意識しています。シューズはわれわれが、ウエアは『スノーピーク』がそれぞれリードして協力し合いながら完成させました。『TDS』の本格的な立ち上げから1年になりますが、ニューバランスの素材や機能性を開発していくチームとして徐々に実績を作れてきています」と語ります。アパレル開発をリードした「スノーピーク」の山井副社長は、「TDS」だったからこそ協業を引き受けたと言います。「ブランドとしてコラボレーションはあまり積極的に行っていないのですが、ニューバランスは企業理念も働く人も好きで、いい会社という印象をもっていました。そんなブレないスタイルと信頼性がある老舗企業が新しいことに挑戦しているのが『TDS』。その姿勢に共感したので、ぜひやりたかったんです」。そして今年3月にニューバランス ジャパンのトップに就任した久保田社長はライフスタイルの商品企画などをグローバルでけん引してきたキャリアがあり、「TDS」設立の発起人でもあります。完成した商品について「ウエアの素材にはコットンが入っていて着心地がとてもいい。シューズも、着用した自分の足を見下ろしても形がきれいで、よくできています。バーベキューをひんぱんにやるので今回のアイテムは役立ちそうですね」と満足気でした。
アウトドアブームは今後も続きそう
取材をしている間に太陽も沈んで火がたかれ、あたりは日中とはまた違う幻想的なムードに。最初は緊張気味だった参加者も「イナー(the inner)」の内星太郎さんが手掛けたフードを囲んで、共に体を動かし、汗を流し、山のきれいなシルエットや変わった雲の形についても語り合ううちに、自然とリラックしてコミュニケーションをとりあっていました。東京で連夜行なわれているハイテンションなパーティーでは、なかなかこうはいきません。アウトドアは山に登ったり川を下ったりとアクティビティーを楽しむだけではなく、コミュニケーションを自然体で楽しめるのも魅力なのですね。デジタルの時代だからこそ、アウトドアの価値があらゆる面であらためて見直されているのかもしれないなと、満天の星の下で思いました。