インテリア最大手のニトリホールディングス(HD)の2019年3~8月期決算の売上高は前年比6.6%増の3215億円、営業利益が同0.6%減で555億円、純利益が同2.9%減の368億円だった。
10月2日行われた会見で似鳥昭雄ニトリHD会長兼CEOは、増税やアメリカ市場の現状を例に「小売業として生き残るには価格を安く、品質や機能をアップしていくしかない。約1万4000あるSKUの半分を1年間で入れ替え、残りは品質を向上させるか価格を下げるべきだ」とコメント。ニトリHDでは会長兼CEOが自ら年間1400人のスタッフをアメリカ研修に連れて行くという。同会長兼CEOは、「アメリカの市場は年々変化している。2つのブラックホールであるアマゾン(AMAZON)とウォールマート(WALMART)によるネット旋風が巻き起こり、リアル店舗は淘汰されている。専門店も寡占化していっている。10年後、日本もアメリカのようになる。だから、安さや今までにない機能といった商品の魅力を追求するしかない。目先のことに惑わされても仕方ない。10年、20年、先を見据えて人材を含めて投資していきたい」と話した。
梅雨寒の影響も季節商材は前年並み
7月は記録的な梅雨寒の影響で季節商材の売り上げが伸び悩んだが、8月に好転。気温の上昇に伴い“ハンディファン”や“Nクール”などの季節商材の売り上げはほぼ前年同様だった。ほか、テレビCM効果で部屋が広く見えるロータイプのダイニングの売り上げが堅調に推移。また、一部地域で限定販売をしていたベビー商材がSNSで話題になって全国展開をスタートさせ、今後も継続してこだわりが詰まった商材を強化していく。通販事業は首都圏中心の若年層からの支持を得て好調で同20.6%増。8月26日に「ニトリネット」のリニューアルを行い、アプリを刷新することで利便性を高める。LINE会員証の導入も今期中に行いさらに客層を広げるもくろみだ。
「デコホーム(DECO HOME)」では、女性向けの花柄やカラー商材が好調。今後はフレグランスなどの商材を拡大していく予定だ。現在オリジナル商材は全体の約55%だが、人気の高い「ニトリ(NITORI)」の商材もキープしつつ来年には70%までに増やす目標を掲げている。
中国では日本のノウハウをもとに標準化を図る
現在38店舗を運営している中国市場では、上海の主要店舗で日本における最先端の店舗を再現するとともに、ノウハウやパターンを導入した標準店舗とすることで既存店に広げていく予定だ。売り場の改装を行った上海七宝店では、日本の売り場では当たり前のポップなども整備したところ改装後に売り上げが2ケタ増になったという。2021年の出店再加速を視野に入れ、日本人の店舗運営スタッフ4人を常駐させて内部マネジメントの体制を整えるとともに、中国市場の把握や商品の効果的な打ち出し方を模索する。
日本ほどブランドの認知度がない中国では、出店するSCの集客に頼らざるを得ない面があり、採算が取れない店舗に関しては閉店していく。日本市場と共通の商品の割合は現在約60%。先行してクッションカバーや布団カバーなどのファブリック素材を中心に、今年末までに70%を目指し、ゆくゆくは家具のサイズの見直しなども行っていく。
増税後は販促とコントロールを強化
増税前の駆け込み消費は、9月21~30日の10日間では、既存店売り上げが前年比6割強増加して予想を上回る結果になったが、約半年間は増税の影響を見込んで販促を積極的に行うほか生産、在庫などのコントロールの精度を上げていくという。
2020年2月期の通期見通しは、売上高が同5.7%増で6430億円、営業利益が同3.2%増で1040億円、純利益が同4.9%増で715億円を見込んでいる。
11年には年商を1兆にする目標を掲げるニトリHDの今後の動きに注目が集まる。