「WWDビューティ」10月3日号ではフレグランスを特集しました。これまで2013年以降、10月1日の「フレグランスの日」に前後して、毎年1回フレグランス特集を行っており、ラグジュアリーブランドを中心にその動向を追ってきました。今年は、フレグランスの輸入・販売を行う専門商社、メーカー、小売りを横断して商況を取材。これまでの百貨店チャネルだけではなく、バラエティーショップやドラッグストアまでを対象に、広く“香り”市場の現状を探りました。
矢野経済研究所の「化粧品市場に関する調査(2018年)」によると、17年度の国内化粧品市場は前年比3%増の2兆5450億円で、そのうちフレグランスの構成比は1.2%の303億円だったといいます。これは前年比2ケタ伸長を示す数字で、ここ数年の化粧品市場全体の成長率3~4%を大きく上回っています。
フレグランス製品の品目が増加し裾野が広がる
今回の取材を通して小売りバイヤーが一様に指摘していたのは、フレグランス関連の品目が増えたことが購入層の裾野を広げているという点です。柔軟剤の香り提案をきっかけに香りへの抵抗感が薄れた結果、ディフューザーやルームスプレー、キャンドルなどのインテリアフレグランスから、ヘアミストやボディーミストなどのボディーケアまで香りをうたった商品が増え、エントリー層も手に取りやすく、新客の取り込みにつながっているようです。また、最近はビューティでもファッションでもライフスタイルを切り口にしたブランド展開や訴求が増え、そうしたブランドにとっても香りを使った提案は欠かせないものになっており、消費者が香りに触れる機会は格段に増えています。
供給側でも間口を広げる動きは活発で、例えば日本のフレグランス市場のリーディングカンパニーであるブルーベル・ジャパンは、今秋からルームスプレーなども展開するメゾンブランド「パルファム ドゥ ラ バスティード(PARFUME DE LA BASTIDE)」の取り扱いを開始し、さらに、このブランドでセミセルフ市場に本格進出するといいます。またブランド側でも、価格帯が比較的高いメゾンブランドがミニサイズを発売したり、ライトな香り立ちの製品をそろえたりしています。海外香水は日本市場に向けて作られたものではありませんが、こうしたトレンドも好材料になっているように感じます。
カテゴリーの垣根が低くなり市場が活性化
バラエティーショップやドラッグストアチャネルでは、スティック形状の練香水やメンズフレグランスといった新興カテゴリーが伸長しました。ウィメンズでは携帯性や若年層向けの“モテ香水”といった切り口など、分かりやすさや実用面での訴求が奏功。メンズカテゴリーでは、臭いケアに加えて、みだしなみの延長線上で香りを楽しむ人が増えているといいます。
今回の特集では、新客との接点が増えていることに加えて、製品やブランドのカテゴリーやチャネルの垣根が低くなっている様子が見られ、そのことがフレグランス市場の活性化につながっていると感じました。市場の活性化がわかる一方で、構成比1.2%というのはまだまだ伸び代があるということ。各社の次の一手に注目です。