アンダーグラウンドは22日、冨永愛の自身初となる自叙伝「Ai 愛なんて 大っ嫌い」の出版を記念して、独り舞台「Ai 愛なんて 大っ嫌い」を公演した。同舞台は2014年に冨永と師弟関係を結んだ長渕剛による総合プロデュース。長渕は、自身のコンサートでは総合的な演出を手掛けるが、音楽以外のエンターテイメントを演出するのは初めて。
舞台は、主演の冨永愛の朗読で進み、途中空手家の新保智や和太鼓の太鼓集団天邪鬼など、長渕の"仲間"が大勢登場。内容は自叙伝に沿い、奔放な母親に翻弄された幼少期や、高身長がゆえにいじめられた思春期、アジア人への偏見の中、怒りをバネにのし上がっていった20代のモデル時代、ひとり息子との絆など、32歳の現在にいたるまでの心の葛藤が描かれた。冨永は舞台終了後に行われた会見で、長渕とタッグを組んだ感想などをトークセッション形式で伝えた。
MC:舞台を終えていかがでしたか?
冨永愛(以下、冨永):初めて感じる達成感と感謝の気持ちでいっぱいです。この舞台のために1年間かけて準備してきたので隣にいる長渕さんにはもちろん、スタッフの皆様、全ての方に感謝したい。
MC:トップモデルとして数々のステージに出演されていますが、今回の舞台はまた違ったものでしたか?
冨永:全く違いますね。モデルとしてたくさん歩いてきたけど、モデルってデザイナーやカメラマンの意志が尊重される世界。今回のように自分の奥底にある感情を表現したのは初めてです。
MC:そして今回は長渕剛さんのプロデュースということですが?
冨永:海外でモデルとして戦っているときに、長渕さんの「MySelf」などをいつも聴いていたんです。長渕さんの曲は、辛い時、いつも私の背中を押してくれた大きな存在でした。そんな憧れの方に私の舞台をプロデュースして頂けるなんて。
長渕剛(以下、長渕):僕は自分の舞台のプロデュースはずっとやってきたけど、人のプロデュースをするのは初めてだったんですよね。しかもあの冨永愛をプロデュースするっていうんだから、責任感は半端なかったし、軽い気持ちでは引き受けられないと思いました。
冨永:とにかく最初は食事の改善と体力トレーニング。長渕さんの故郷の鹿児島に連れていって頂いて、長渕さんの一流のお仲間、お友達と一緒に色々なトレーニングをさせて頂きました。
長渕:僕はまず、彼女に孤独を感じてほしくなかったんです。一人じゃないんだよって。このお話を頂いた時にまず自分の仲間に電話して「冨永愛が生まれ変わりたいらしいから手伝ってやってくれないか」って持ち掛けたんです。そして仲間達とまず彼女を連れて行ったのは、鹿児島の山の坂道。傾斜がきつい100mほどの坂道を皆と一緒に10本ダッシュで走らせました。その経験は、自分の人生を変えるため、自分が生まれ変わるために多くの仲間が一緒に苦労してくれていることを感じさせてくれたと思う。
冨永:それから足に3キロの重りをつけてみんなで山頂まで登りました。
長渕:その山頂には、桜島がどかーんって見える見晴らしの良い場所がある。そこに彼女が到達したとき、なんて言ったと思う?この人ね、「車でここまで登ってきたやつにはこの気持ちよさわかんないだろうなー!」って大声で言ったの。それを見て俺たちは「よっしゃ!」って感じだった。「よし、本気でこの子をサポートしてあげよう」ってね。彼女の息子もその時一緒に山に登ったんだけど、その日から少年空手家が誕生した。ちょっと帯の色の成長具合、言ってやって!
冨永:その日から始めて、1年で、白、オレンジ、青、黄色に成長しました。
長渕:たった1年でここまで駆けあがってこれるのはすごいことだよね。彼女と息子さんを見ていて、子が母を想う気持ち、母が子を想う気持ちが伝わってきて、亡くなった自分の母親を思い出したりしたね。
MC:長渕さんの指導はかなり厳しいものだったのでしょうか?
冨永:めちゃくちゃ厳しいけど、それと同時にものすごく優しいんです。今回の台本も、全て、ト書きから何から何まで長渕さんが書いてくれて、照明も音響もすべてプロデュースして頂きました。キャストも長渕さんのご友人ですべて皆さん一流の方ばかり。私の感情を見事に表現して頂きました。
MC:自叙伝を書かれたきっかけは?
長渕:彼女はこれほどの大器で世界で活躍していて、今以上に素晴らしいアーティスト、表現者になれる。ここに来るまでにたくさんの辛いことがあったと思うけど、「書く」ことで自分の人生を肯定してほしかったんです。
冨永:自叙伝を書き上げた時、長渕さんに電話しました。秋の晴れた日曜日で、空が青くて綺麗で、「私、幸せです。」って。「この自叙伝が私のすべてだ」って思いました。
MC:どんな方に自叙伝を読んでもらいたですか?
冨永:私と同じ世代の女性やお母さんたちにも読んでもらいたいです。
長渕:それに、シングルマザーで頑張っている人や、10代のこれから社会に出ていく子たちにもね。これから彼女の自叙伝が始まっていくんですよ。今回の舞台を皮切りに、次のページがめくられていく。この類まれな才能で新しい境地を極めてほしいですね。