空前のサウナブームに沸く日本列島。いまや、おじさんだけでなく若者にもサウナ文化が定着し、女性サウナーの存在もチラホラ。その背景には、タナカカツキによる伝説の漫画「サ道」のドラマ化や、「湯遊ワンダーランド」「極上! サウナめし」などが大きく影響しているのだとか。ビジネスマンからファッションラバーまで、慌ただしい日常に癒やしを求めサウナに集まる人たち。人はいったいどんなきっかけでサウナにハマり、何を得るのだろうか。
これまでさまざまな施設を渡り歩いてきましたが、どうしても乗り越えられない壁があります。実は「聖地」といわれる有名店ほど女人禁制なのです! これは、女性サウナーにとってとても悲しい現実(泣)。「天空のアジト マルシンスパ」しかり、「オアシスサウナ アスティル」「サウナセンター大泉」、ちょっと足を運んで名古屋の「ウェルビー」などなど。水風呂も男性が水温15度前後に対し、女性はなんと20度設定がほとんど。その現実を垣間見るたびに、「パンケーキやタピオカよりサウナでしょ、男に生まれたかった~!」、何度そう思ったことでしょうか……。政治の世界とはいいませんが、サウナの世界は男社会そのものなのです。
今までファッション業界でジェンダーの差別を感じることはなかったし、ここには年齢問わず、それぞれのスタイルを謳歌している人たちが大勢います。たとえば2019-20年秋冬の「ポステレガント(POSTELEGANT)」は、ウィメンズとメンズがほぼ同じ。いっぽう「チノ(CINOH)」は、グランジをテーマに、露骨なオンブレチェックをレディライクに落としこみます。まさに現代女性の働き方や、ひとつの価値観に縛られない自由な生き方、強さを投影しているのだと感じました。19年春夏にスタートした、奥田亜紀乃さんが手掛けるテキスタイルブランド「マスノウ デザイン(MASNOU DESIGN)」も、ジェンダーレスかつエイジレスな服を提案しており、もはや男女の垣根を越えて美を追求する世の中になったのだなと改めて痛感。少し話しが逸れましたが、サウナだってジェンダー関係なく楽しめる施設・温度設定であってほしい、そう心から願わずにはいられません。毎日のオシャレを楽しむように、女性にもサウナの選択権がもっと与えられますように……。
尾竹めぐみ:ファッション・エディター、ライター。大学卒業後、ボストンへ留学。帰国後はファッション誌「オーリーガールズ」編集部で、ストリートスナップを担当。2005年からリットーミュージックが発行するファッション&クラブカルチャー誌「ルイール」で、海外アーティストの取材やセレブゴシップ特集に力を入れる。12年、INFASパブリケーションズに入社し、季刊誌「WWD マガジン」、ファッション週刊紙「WWD ジャパン」で経験を積む。現在、フリーランスとしてファッションウェブ媒体を中心にエディトリアルからライティングまでを手掛ける。趣味はネットフリックスと日本全国のスーパー銭湯めぐり