大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
本日のニュース:P.25「アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ Vol.38 若者の価値観」
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読み解きポイント:地域限定の企画・生産でグローバル流通の課題を解決
ニュースのポイント
来店する16〜17歳ぐらいの高校生は、スニーカーを買う前に必ずメルカリで値段を確認をしている。今はモノの価値が「定価ー(マイナス)リセール価格」の時代。価値観がリセールマーケットの中にある。同じモデルのスニーカーが海外で先行発売されると、リセール市場で実勢価格が決まってしまう。そのためショップでの販売前に商品の運命が決まってしまう課題も存在している。
CKRはこう読む!
「Gross Domestic Product」。社会の教科書で見たことある国内総生産(一定期間内に国内で生み出された付加価値総額)のことですが、10月1日、ロンドン郊外にアーティストのバンクシー(Banksy)がオープンしたショップの名前でもあります。このショップは店内に入ることができず、ショーウィンドウから眺めることしかできません。商品は手頃な10ポンド(約1310円)〜。すべてにリサイクル素材を使用し、英国内で手作りされています。数量限定、公式オンラインストアで販売予定とのことです。欧州連合(EU)からの離脱期限が10月31日に迫る中、面白い仕掛けだなぁと思います。
今回は「情報流通はグローバル全体で即時化するから、商品の企画・生産は地域限定が進むだろう」という点について考察したいと思います。
英国のEU離脱という政治領域だけでなく、米中相互で通信機器の禁輸が始まるIT領域や、GDPR(一般データ保護規則)適用によるEU域内の個人情報保護という制度・法務領域でも、国や地域の分断が進んでいます。
2020年春夏ニューヨーク・コレクションで、ネクストキーワードとして「パトリオット(愛国)」が顕在化した点や、バンクシーのショップ名に「ドメスティック(国内)」というワードが含まれる点からも、「その国らしさ」というのが時代の空気感なのかもしれません。
記事の中にある、スニーカーの発売時期が国毎にずれることで生じる課題(遅れて発売となる国での運命が、発売前に決まってしまう課題)についても、地域や国毎にスニーカーのモデルを変えることで、解決できるかもしれません。
情報流通とリセール市場が発達した今は、地域限定で企画・生産した方が、販売店や物流の事情、国の状況、法制度、時代の空気感の面から、合理的と言えるのではないでしょうか。たとえ企画・生産を地域限定にしても、ネットを通じて、世界中どこからでも買うことのできる時代です。また実際、その地域に行って実物を目にしたときは、リアルらしい楽しい体験にもつながります。
バンクシーのショップは、そのあたりを体現した、一歩先の仕掛けなのかもしれませんね。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中