オンワードホールディングスは、7日に開いた2019年3~8月期決算会見で、大規模な不採算事業の撤退・縮小を伴う「グローバル事業構造改革」の概要を発表した。当期は252億円の特別損失を計上。韓国、イタリアなど海外事業の整理に注力し、来期(21年2月期)以降は国内事業にもメスを入れる。収益体制を改善し、デジタルやカスタマイズ、ライフスタイルなどの成長に投資を振り向けることで、百貨店依存のビジネスモデルからの脱却を図る。22年2月期を最終年度とする中期経営計画で目標値に掲げた、売上高2800億円(19年2月期は2406億円)、営業利益100億円(同45億円)に向けてアクセルを踏む。
特別損失252億円のうち、海外アパレル関連事業の整理による減損損失が50億円。欧州ではイタリア法人の一部事業から撤退し、アジアでは韓国法人を清算する。国内アパレル関連事業については、当期の減損損失は5億円にとどまるが、来期以降も事業整理は継続する。ブランド別では「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」や「フィールド ドリーム(FIELD DREAM)」を来年2月までに閉店する。地方・郊外の百貨店などの閉店も加速する中、中長期では国内外の店舗(全約3000店舗)の2割程度を閉めることになる見込みだ。
投資を強化するデジタル分野では、「オンワード・クローゼット(ONWARD CLOSET)」など自社ECが8割強を占めるEC売上高が、19年3~8月期に前年同期比34%増と伸びている。通期では350億円(前年比37%増)を、22年2月期は500億円を見込む。企画から物流、販売まで、サプライチェーン全体でIOTやAIを活用したデジタル化を推進し、D2Cブランドの商品開発・販売の強化や他社ECなど販路の拡大により「長い目で見て売上高1000億円を目指す」(保元道宣社長)。
カスタマイズ事業ではオーダースーツの「カシヤマ ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」で22年2月期の売上高150億円を予想する。秋からはテレビCMの放映など宣伝販促を強化し、11月に婦人用パンプス・ヒールのラインを始動。銀座に路面店2店舗を開業する。
ライフスタイル分野では3月に買収したギフト専業の大和とのシナジー強化を進めるほか、さらなる企業の買収なども視野に入れる。「チャコット(CHACOTT)」「ココバイ(KOKOBUY)」など既存事業はビューティーの領域を強化する。
「23区」など主力の百貨店ブランドも、店舗の選択と集中を進める。今期からブランド別の事業本部体制を発足させ、新レーベルや外部クリエーターとの協業、ブランド専用カタログなどにより、ブランドの個性を際立たせる。
保元社長は今回の構造改革を「大きなビジネスモデルの転換」と捉え、「(事業整理は)マイナスではなく、将来性のあるヒト・モノ・カネに資本を選択・集中することで、会社全体の再生を図っていく」と強調する。