ファッション

アマゾンによるインフルエンサーのファッションD2C事業 初の日本人参加者、鈴木えみに聞く製作秘話

 アマゾン(AMAZON)が主催する、世界各国のインフルエンサーが手掛けたコレクションをゲリラ販売するファッションD2Cプロジェクト「ザ・ドロップ(THE DROP)」。同社のファッション分野では初となるグローバル規模の本プロジェクトでは、アイテムは全て受注生産。新アイテム公開後30時間限定で注文を受け付ける。そんな「ザ・ドロップ」から9人目にして初の日本人インフルエンサー、鈴木えみが手掛けたコレクションが10月9日に発売される。自身のブランド「ラウタシー(LAUTASHI)」のデザイナーも務める彼女だが、今回は鈴木えみ個人として手掛けたコレクションだ。彼女が今回のコレクションに込めた思い、そして自身やブランドの今後についてを探るインタビューを行った。

WWD:「ザ・ドロップ」への参加が決まった際、どのような気持ちだった?

鈴木えみ(以下、鈴木):率直に「また面白いことをやるんだな」と思いました。「ザ・ドロップ」はアマゾン本社が主導で行う企画のため、初めてグローバルチームと連絡を取り合って。とても新鮮な気持ちでしたね。

WWD:鈴木さんは「ザ・ドロップ」参加インフルエンサーとしては初の日本人。コレクションで意識したことは?

鈴木:アマゾン側からは「“日本の今”を反映したコレクションにして欲しい」と言われました。私のコレクションを見て、世界各国が「コレが日本のトレンドだ」と捉えると。でも、日本のファッションは、一つのスタイルに集中しているというよりも、さまざまなモノが入り混じって多様化している。だから都会的なアイテムに、「ラウタシー」ではあまり出さないロマンチックな要素を取り入れつつ、知的でエレガントなアイテムを作ろうと考えました。

WWD:発売するアイテムの詳細は?

鈴木:全部で8型を各1万円前後で販売する予定です。ハリ感のある生地を使ったドレスを中心に作りました。個人的にドレスが好きということもありますが、1つのアイテムでコーディネートの主役となるようなモノを作りたかったので。柄やディテールなど、和の要素もありつつ、洋の要素も入っているアイテムになりました。

WWD:今回は「ラウタシー」のデザイナーとしてではなく、鈴木えみ個人として手掛けたコレクションとのことだが、デザインのプロセスも大きく違った?

鈴木:「ラウタシー」では私がデザイン画を描いて進めていくのですが、「ザ・ドロップ」では私はムードボードで作りたいモノのイメージを共有し、それに沿ってミーティングを行いながら、デザインチームがデザイン画を提案してくれるという流れでした。最初に上がってくる60型ほどのデザイン提案の中から、色や丈感の変更などを話し合って20型ほどのサンプルを作り、最終的に8型にまで絞りました。「ザ・ドロップ」に関しては、私の役割はデザイナーというよりも、ディレクターの要素が大きいですね。

WWD:初めての経験も多かった?

鈴木:そうですね。過去にも他社ブランドとのコラボレーションという形で、アイテムの生地や色を変えたりしたことはあったのですが、型数は1型などだったので、今回とは全然違いました。ムードボードだけでデザインチームの方に作りたいモノを伝えるのに最初は苦労もしました。ただ、今回のプロジェクトは私以外にも関わっているたくさんの人のアイデアが入ってくるので、どんなデザイン画が上がってくるのか、カチッとした線で描かれたデザイン画が実際にサンプルとして製作された時に、どのようなシルエットになるのかなど非常に楽しみでした。例えば今回販売するアイテムのパフスリーブのパフの大きさやフリルの大きさなど、すごい大胆なんですよ。そういった点にグローバル感を感じていて、個人的には気に入っています。

WWD:「ザ・ドロップ」はモバイル端末のみで、30時間限定の完全受注生産方式で販売するというユニークな手法を取っている。こういった売り方についてどのように思っている?

鈴木:素直に上手だな、と。事前にどういったインフルエンサーが参加するのかや、アイテムの情報などを小出しにしてファンの気持ちを高めながら登録をしてもらい、注文の受付は30時間のみ、となったら多くの人が買いますよね。作り手側から見れば、使える生地や作れるアイテムなどに制約はありますが、注文したモノが2週間ほどで届くというのもアマゾンならでは。こういった販売方法は「ラウタシー」ではできないので、すごいことだなと思います。

WWD:「ラウタシー」でも取り入れられるような販売方法で、注目している売り方などはある?

鈴木:うーん……手売りとかですかね(笑)。「ラウタシー」は小規模で運営しているので、お客さまとの距離を密にしていきたいと考えています。そのために、アポイント制で私自身が接客をする販売会などの機会も毎シーズン設けています。個人的にはお買い物自体を一つの思い出にして欲しいと思っていて。せっかくお金を出して買ってださっているので、買い物自体に思い出が残り、買ったモノを大切に着ていただけたら作り手としても非常にうれしい。そういった思い出づくりを今後もずっと続けていくつもりです。

WWD:最後に鈴木えみ個人として、そして「ラウタシー」のデザイナーとしての今後の目標は?

鈴木:個人としてはこれ以上できないくらい、いろいろなことをやらせていただいているので、それぞれの分野をしっかりと深めていきたいですね。ほかには、今マネジャーに提案しているのですが、私の親戚や妹などの設定で、ヴァーチャルモデルとかも出したら面白いかなと思っています。

「ラウタシー」としては良いモノを作り、それを喜んで着ていただくことでビジネスが成り立てばいいなと思っているので、今後も良いモノが作れるように、自分自身も成長したいです。さらに先ほども言ったようなお客さまとの関係性を密にするという点で、一緒に工場見学に行くなど、服作りの工程をみんなに見せたいですね。生産背景を知ることで、服を選ぶ基準が変わったり、大事にしたいモノが見えてきたりするのではないかと考えています。そういったことを実践し、コミュニティーを作っていければいいなと思っています。

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